第5話 職業、その名は……

「ふわぁぁぁ〜。あれ?ここ、どこ?」


「おはようサンテちゃん、ここは冒険者ギルドのカナイ町支店よ。私は受付けのヘレン。ヘレンさんって呼んでね」


 サンシターとの会話後、受付けカウンターから表に出てきたヘレン。


「ヘレンさん? ……こんにちは!」

「はい、こんにちは」


「俺っちは門番のサンシターっす。サンテちゃん、こんにちは」


「サンシターさん、こんにちは」


 ヘレンとサンシターはサンテに圧迫感を与えぬよう、少し離れて会話を始める。


「それでね。サンテちゃんにはこれから、サンテちゃんがどんな職業に着いているかを調べさせてもらうわ」


「職業って、なんですか?」


「職業っていうのはね、村で言う木こりや村長とは違って。サンテちゃんがどんな事が得意なのか、それが分かるの」


 職業とは。

 個人が生まれつき持っている素質や、これまでに得てきた知識や経験から算出される。

 それを職業という分かりやすい形で、人々に与えられた神からの恩恵と言われている。


「私は弟と妹の面倒を見るのが得意です!」

「あら、そうなの? 偉いわねー」

「えへへー」


 ヘレンに頭を撫でられて、はにかむサンテ。


「じゃあサンテちゃん。この水晶玉に手を乗せてくれる?」


「はーい!」


 そして専用の道具を使い、媒体となった水晶や金属に映し出す。

 映し出されたサンテの職業の名は……




【イモ】




「なんて書いてあるの?私、字読めなーい」

「イモって書いてあるっす」

「あっこら、おバカ!」

「あっ、ヤベッ……」


 幸いな事にサンシターの声は、水晶玉に集中したサンテには届かなかったらしい。

 ヘレンは急いで水晶玉のスイッチを切ると、サンテに話しかけて文字から意識を反らした。


「サンテちゃんの職業は多分テイマーねー。こっちのリビングアーマーと仲が良いから、多分そうよー?」


「テイマーってなんですか?」


 サンテの意識が上手くイモから外れ、ヘレンは心の中でガッツポーズをしていた。


「テイマーっていうのはね、人間以外の生き物と仲良くなりやすい人の事を言うのよ。だからサンテちゃんは、このリビングアーマーやスライムと一緒に居られるの。分かったかな?」


「はーい」


「サンテちゃんの職業はテイマーだけど、こっちの2人の名前も教えてくれるかな?」


「2人共お話し出来ないから、鎧さんと水玉さんって呼んでるんだけど……」


「だったらサンテちゃんが、この2人に名前をあげれば良いのよ。サンテちゃんだって名前がないまま、変な風に呼ばれたら嫌でしょ?」


「うん」




「じゃあ、鎧さんはガイ。ガイさん。水玉さんは、ラム。ラムちゃん」


 少し考えたあと、サンテはリビングアーマーとスライムの名前を決めた。


「あれ?なんだろう?2人の気持ちとか言いたい事とかが、なんとなく分かる様になったの」


「それは契約よ」

「契約?」


「そっ、契約。テイマーは仲良くなった相手に名前をつけるの。元々あった名前をそのまま使っても良いし。名無しの子とか新しい気持ちになりたい子には、別の名前をつけるのよ。そうすると二人の心が繋がって、相手の気持ちとか言いたい事とかがなんとなく理解出来る様になるんだって」


「ふーん、そうなんだー。ガイさん、ラムちゃん。これからよろしくね」


 リビングアーマーのガイはサムズアップし。

 スライムのラムはガイの鎧の隙間から、体の一部を出して丸印を作っていた。

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