第42話 私と彼女の距離

そんな彼の様子に圧倒されてしまった私ですが、

同時に彼からライバル視されたことに対する嬉しさも感じていたんです。

何故なら、彼とはいずれ決着をつけなければならない運命に

あるということは薄々気付いていましたから……。

だからこそ、彼との対決に向けて決意を固めると同時に、

より一層気合いを入れて頑張ることにしたんです。

そんな私達の様子を黙って見ていた彼女は、何やら複雑な表情を浮かべていましたが、

すぐに笑顔を浮かべると私に対してこう言ってくれたんです。

「頑張ってね! 応援してるよ!」

その言葉を聞いた瞬間、胸が熱くなるのを感じた私は力強く頷くと、

改めて覚悟を決めたんです。

いつか必ず決着を付けるんだという思いを強くしながらね……!

そんな決意を胸に秘めながら彼女と別れた後、

家路についた私は自室でゆっくりと休むことに決めました。

ベッドに横になり目を閉じて深呼吸を繰り返しているうちに段々と落ち着いてきましたので、

そのまま眠りにつくことが出来たんです。

翌朝目覚めた時にはいつも通りの日常に戻ったつもりでいたんですけど、

帰宅してからしばらくの間は何だか落ち着かない感じがしていました。

その理由を考えてみると、恐らくは昨日のことが原因なんだろうと思いましたけど、

いくら考えても答えは見つかりませんでした。

なので、これ以上悩んでいても仕方がないと思った私は、

気分を変えるために外に出ることにしたんです。

そこで目に付いたお店に入った私は、商品を見て回ることにしたんですが、

そこである品物を見つけたことで私の意識はそちらに釘付けになりました。

何故ならそれは、彼女が身に付けているペンダントと同じデザインだったからです。

それを見た瞬間に、これを身に着けたらもっと可愛くなれるんじゃないかと思った私は、

迷うことなく購入することに決めました。

そうして手に入れたアクセサリーを身につけた結果、

自分でも驚くほど印象が変わったように感じた私は、

鏡に映った自分の姿を見ながら思わず笑みを浮かべてしまうほどでした。

きっと今の私なら自信を持って彼女に会えるはず!

そう思った私は早速彼女の元へと向かうことにしたのです。

そうするとそこに居たのはまるで別人のように変貌を遂げた彼女だったんです。

その姿を見た瞬間、驚きのあまり言葉を失ってしまいましたが、

次第に冷静になってきた頭で考えた結果、これが本来の彼女なんだと気付きました。

そんな姿に見とれていた私に気付くこともなく去っていく彼女の後ろ姿を

眺めているだけでは何も進展しないことを悟った私は、

思い切って声を掛けることにしたんですけれども、

緊張してしまって上手く話すことが出来ずにいると、

不意に彼女が振り返りこちらを見てくれたことで

ドキッとした反面嬉しくなって思わず舞い上がってしまったんです。

「あ、あの……!」

と切り出したまでは良かったものの、それ以上言葉が続かなかった私を

不審に思ったのか首を傾げられてしまったことで更に焦りを

感じた私は慌てて次の言葉を探す羽目になったものの一向に思いつかず途方に暮れていると、

その様子を見た彼女が優しく微笑みながら話しかけてくれました。

おかげでホッと一安心したところで本題を切り出すことに成功致しました。

それからというもの私たちはお互いのことについて話し始めていき、

お互いに知らない過去の出来事などを語り合うことができたことで絆を深めることができました。

その日から私達は毎日会うようになっただけでなく、

互いの趣味や嗜好についても詳しく知ることができるようになっていったことで、

少しずつではありますが距離を縮めていくことができたんです。

「ねえ、君は好きな人とかいる?」

ふと会話が途切れたタイミングでそう尋ねられた時、

心臓が止まりそうなほどの衝撃を受けた私が咄嗟に思い浮かべてしまった人物は、

紛れもなく目の前にいる人だったわけでして、一瞬言葉に詰まってしまった私に対し、

彼女は少し不安そうな表情を浮かべたものの、優しく微笑み掛けてきてくれました。

その瞬間、私の心は大きく揺れ動いた気がしてなりませんでしたが、

それと同時に安心感を覚え始めた自分に気付いた時、

初めて自分が抱いていた想いを自覚した瞬間でもありました。

それから数日後のこと、勇気を出して告白してみたところあっさりと拒否されました。

「ごめんね、私は君のことそういう風に見れないんだ。

それに、私には他に好きな人がいるから……。」

悲しげな表情でそう告げられたことでショックを受けた私でしたが、

それでも諦めることはできませんでした。

その後も何度かアプローチをしてみましたが、結果は同じでしたので、

次第に諦めの感情を抱くようになっていったんですけれど、

それでもなお彼女への想いを捨てきれない私が取った行動は、

彼女のことを徹底的に調べ上げることだったのです。

その過程で判明したことがいくつかありまして、

その中でも特に重要な情報としては彼女が今お付き合いしている男性の存在がありましたので、

早速調査を開始してみましたところ、彼が既婚者であることが判明しただけでなく、

他にも多くの女性達と関係を持っているという衝撃的な事実が発覚しましたので、

それを彼女に伝えることにしたのです。

その結果、彼女は驚きを隠せない様子でしたが、同時に怒りを覚えたようでした。

そして、彼女は私にこう言ってくれたのです。

「ありがとう! 教えてくれなかったらきっと大変なことになっていたかもしれないわ!」

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