第41話 私の心

そうすると、彼女はとても嬉しそうな表情を浮かべながら、

感謝の言葉を述べてくれたんです。

それからというもの、私は毎日のように彼女の元へ通い詰めるようになりました。

そして、ある日のこと、いつものように絵を描いていると、

不意に声を掛けられましたので振り返ると、そこには館長さんが立っていました。

どうやら休憩がてら私の様子を見に来たようです。

そんな彼女に対して笑顔を返しながら挨拶を返した後で早速作業を始めようとした私だったのですが、

そこでふとある疑問が浮かんだので尋ねてみることにしました。

それは、彼女のことについてです。

何故ならば彼女は謎が多すぎる人物であり、その素性を知る者はほとんどいないと言われているからです。

そこで思い切って質問してみたところ、意外な答えが返ってきました。

なんと、彼女もまた私と同じ境遇にあったというのです。

それを聞いた瞬間、驚きのあまり言葉を失ってしまいましたが、それと同時に納得もしていました。

何故なら私自身もまた同じような経験をしていたからです。

だからこそ、彼女の気持ちがよく分かったし、共感できたのだと思います。

その後、私達はお互いの身の上話をすることになり、

その結果、私達は更に親しくなっていったんです。

そうして暫く過ごした後、私が描いた絵を見て感動している彼女に、

私はある提案をすることにした。

それは、私が描いた絵にモデルになってほしいという依頼だったのだが、

最初は戸惑っていた彼女も最後には承諾してくれた。

そうして始まった彼女との関係は、私にとって大きな励みになったことは言うまでもないだろう。

何故なら、彼女を知る度に彼女が描く絵画の完成度は上がっていく一方だったからだ。

そんな彼女の姿を見ているうちに、いつしか私は彼女に恋をしていたことに気付いたが、

それを打ち明けることはしなかった。

何故ならば、彼女には既に恋人がいるという噂を耳にしたことがあったからだし、

そもそも私なんかでは到底釣り合わないと思っていたからなのだが、

それでも諦めきれなかった私は密かに彼女のことを想い続けることにした。

そして、いつかこの想いを伝えられる日が来たら良いなと思いながら日々を過ごしていたのだが、

そんなある日のこと、突然彼女が私の元を訪れてきたのだ。

一体何の用なのかと思っていると、彼女は真剣な表情のまま私にこう告げたのである。

私がモデルになっている絵がとても高い評価を受けたらしく、

そのことについてお礼を言いに来たというのだ。

それを聞いて嬉しかった反面、照れ臭かったため素直に喜ぶことができなかった私だが、

彼女はそんな私に対して 微笑みながらこう言ってくれたのだ。

「貴女のおかげで、私は自分に自信を持つことができたんだよ」

その言葉を聞いた瞬間、私の心は大きく揺れ動いた。

何故なら、彼女が私のことをそんな風に思ってくれていたという事実を知ったからに他ならない。

そして、それと同時に彼女への想いが溢れ出した私は、

思わず涙を流しながら彼女に抱きついてしまったが、

それでも彼女は優しく受け止めてくれた上に頭を撫でてくれたことで更に泣いてしまったことは言うまでもない。

それから暫くの間泣き続けていた私だったが、その間ずっと側に居続けてくれた彼女の

存在に心の底から救われたような気がしたのだった。

それからというもの、彼女と過ごす時間が増えただけでなく、

彼女の方からも積極的に関わってくれるようになったことが何よりも嬉しかったし、幸せを感じる瞬間でもあったのだ。

そんなある日のこと、私は思い切って告白することにしたのだが、

結果は玉砕に終わったものの、それでも後悔はなかった。

何故なら、彼女の笑顔を見た瞬間、私の胸に飛来した感情は、”喜び”だったからである。

その後、彼女は私に何かを言いたげな顔をしていたのだが、

結局何も言わずに行ってしまったことで、不安と寂しさが入り混じったような感情に

支配されてしまった私だったが、数日後になって再び姿を見せた彼女の様子に変化が見られたことから、

私は思わず息を呑んだ。

何故なら、彼女が今まで以上に美しくなっていたからだ。

一体何があったのか気になった私は思い切って尋ねようとしたのだが、

それよりも先に口を開いたのは彼女の方だった。

そして、彼女は微笑みながらこう言ったのだ。

「実はね、私好きな人ができたんだよ」

それを聞いた瞬間、目の前が真っ暗になるような感覚に陥ったが、

それでも必死に堪えて平静を装うことに成功した私は、彼女にどんな人なのかを尋ねたところ、

返ってきた答えを聞いて愕然としたと同時に怒りが込み上げてきた。

何故なら、それは私の知らない男だったからである。

しかも、その男は彼女に対してしつこく付きまとっていたようで、

私が目撃した時もそうだったようだ。

だから、私は彼女の手を取ってその場から離れようとしたのだが、

その時に彼女が見せた表情が忘れられない。

何故なら、その時の彼女の顔はこれまでに見たことがないほど嬉しそうに微笑んでいたからである。

そんな彼女の顔を見たことで動揺してしまった私だが、

何とか自分の気持ちを抑えてこの場を離れることができたのであった。

その後、暫くの間は彼女に会うことができなかったものの、

その間も私はずっと彼女のことを考えていたせいか、

彼女のことを想い続けていたせいで心臓が高鳴る日々を送っていた。

そしてある日のこと、とうとう彼女と再会することができたのである。

彼女は以前と変わらない様子で私に声を掛けてくれたので、

私もまた笑顔で応えることができたのだが、

それでも私の心の中には複雑な感情が渦巻いていた。

何故なら、彼女が他の男と一緒にいる姿を見たからだった。

しかもその男は私の知らない人物であり、しかも親しそうに話している様子から察するに、

かなり親しい間柄であることは間違いないようだ。

それを知った瞬間、私の胸中には激しい嫉妬心が込み上げてきたのだが、

それを悟られないように振る舞うことで精一杯だったのだ。

しかし、そんな私の努力も虚しく、彼女はどんどん先へと進んで行ってしまったため、

私は必死になって追いかけようとしたのだが、そこで思わぬ出来事が起きたのである。

突然彼女が立ち止まったかと思いきや、私の方を振り返った瞬間、

驚いた表情を浮かべた後でいきなり抱きついてきたのである。

これには私もビックリしたし、それ以上に周囲の人々からの視線を

集める結果となったことで恥ずかしくなったりもしたが、

それでも彼女と触れ合えた喜びの方が勝ったせいで

全く気にすることなく抱きつき返した上に私からも抱きしめ返してしまったため、

余計に注目を浴びることになってしまったのだ。

そんな状況に耐え切れなくなった私が慌てて離れようとすると、

今度は逆に彼女が離してくれなかったばかりか、更に強く抱き締められてしまったので、

再び周囲からの注目を集めてしまったのだが、不思議と嫌な気持ちには

ならなかったばかりか幸福感に包まれていた私であった。

そうして暫くの間抱き合ったままの状態でいたのだが、

やがて満足した様子の彼女が離れて行ったことでようやく解放された私はホッとした反面、

物足りなさを感じていたりもしたけれど、それでも彼女との触れ合いを

堪能することができたことで、満足感を得ることができました。

その後、彼女は私に別れを告げて去っていきましたが、

私は彼女の姿が見えなくなるまで見送り続け、完全に見えなくなったところで帰路につき、自宅へと戻りました。

それからというもの、私は毎日のように彼女に会いに行くようになり、

その度に色々な話を聞かせてもらったり、一緒に遊んだりするようになりました。

そしてある日のこと、いつものように彼女に会いに行くと、そこで思わぬ出来事が起こったのです。

なんと、彼女の恋人を名乗る人物が現れたのです。

しかも、その人は私の知らない男性であり、しかもかなりのイケメンでした。

その姿を見た途端、私の心はズキンッと痛みを覚えたのですが、

それでも何とか平静を装っていると、彼は私に声を掛けてきたのです。

どうやら彼は私のことを彼女に尋ねに来たようなのですが、

それに対して私が答える前に彼女が口を挟んできたことで、

その場の空気が一変しました。

というのも、彼が私に対して好意を抱いていることを告白してきたからなのです。

それを聞いた瞬間、私の心臓が大きく跳ね上がり、

顔まで熱くなってくるのを感じましたが、

それでも何とか冷静さを保つことで その場をやり過ごすことに成功しました。

その後、彼女に助けを求めようと視線を向けてみると、

そこには悲しそうな表情を浮かべた彼女の姿があったことで私は更に動揺してしまいました。

しかし、それでも尚私が取り乱したままでいると、それを心配した彼女が声を掛けてきたので、

私は慌てて返事を返しつつ取り繕うことに集中しました。

そうして暫くの間彼女と会話をしていると、 今度は彼が私に話しかけてきたので、

それに答えることにしました。

そうすると彼は、私に対して自分の想いを打ち明けてきただけでなく、

自分がどれだけ彼女を愛して止まないのかということを力説し始めたのです。

その勢いに圧倒されてしまった私は何も言えずに黙り込んでしまったのですが、

その間も彼の話は続いていきました。

そして最後に彼は、

「お前には負けないからな!」

と言って去っていったのですが、その時の彼の目は本気そのものでした。

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