第34話 覚えてない私

「ねえ、昨日の事覚えてる?

一緒に過ごしていた時に私が話した内容とかさ」

そう言いながら尋ねてきた彼の顔は真剣そのもので、

思わずドキッとしてしまった私は、言葉に詰まってしまい黙り込んでしまったのだが、

それでもどうにか首を縦に振ることで肯定の意思を示す事にした。

そうすると彼は満足そうな表情を浮かべながらこちらを見つめていたのでドキドキしていると、

そこで再び話し始めた彼に意識を向けることにしたのだが、

その内容はとても信じられないようなものだったので尚更戸惑ってしまう事になったのである。

というのも、その内容とは以下のようなものだったからである。

まず最初に彼の口から出た言葉は、今まで聞いたことのない言葉だったため首を

傾げることしか出来なかった私であったが、その後に続けられた言葉によって

理解する事ができたので納得するしかなかったのだが、この時の私にはまだ知る由もなかったのである。

何故ならばその言葉の意味を知る事になるのはまだ先のことだったからだと言えるだろう……。

しかし、実際にはそうはならなかったのだ。

「君のこと、全部知ってるからね」

という一言を聞いた瞬間、頭が真っ白になってしまった私は

何も言えず呆然としてしまうことになったのだが、

それでも何とか立ち直った後で彼の方に目を向けると、

こちらを見つめている視線に気付いたことで余計に緊張してしまい

赤面しながら俯いてしまったのだが、そんな私を余所に

彼は淡々とした口調で話を始めていった。

その内容というのが、私が思い描いていたものとは

全く違った内容だったので驚くと同時に安堵したものの、

その後に続けられた言葉に衝撃を受ける事になったのだ。

というのも、それはあまりにも衝撃的なものだったからである。

(一体どうしちゃったんだろう?)

そんな事を考えながら彼を見ていると目が合いそうになった途端に

逸らす形になりつつ考え込んでしまうことになる私だったが、

結局結論を出すことが出来ないまま時間だけが過ぎていくうちに

痺れを切らしてしまった私は思い切って尋ねてみたところ、

思わぬ言葉が返ってくることになった。

それは、

(へえ、そうなんだ!)

というもので、何のことなのかさっぱりわからなかった私は困惑していると、

それを見越した上で説明してくれた彼の話を真摯に受け止めることにした私だったのだが、

その内容というのが以下のようなものだったのだ。

まず最初に告げられたのは、私が彼に対して

抱く好意や愛情などといった感情についてだった訳なのだが、ここまではまだ理解することができた。

「うん、そうだね」

と答えた私はそのまま話を聞いていくことにした。

「でも、それだけじゃないんだよね?」

と問いかけられ、首を傾げることしかできなかった私に構わず続けていった彼は、次の言葉を紡いでいった。

その言葉というのが、今迄彼に抱いていた感情を別の言葉で表すことができるのかどうかという事であり、

それに対する答えを求めてくるというものだったのである。

正直言って、全く意味がわからなかったこともあり、返答に困っていた私は必死になって考えていたのだが、

それでも答えを見つけることが出来ずにいる内に時間だけが過ぎていってしまったことで焦りを感じ始めたところで、

ふとある疑問が浮かんだ為、それについて聞いてみることにした。

「それって、どういう意味なの?」

と尋ねると、少し考えるような仕草を見せた後で、徐ろに口を開いた彼が発した言葉というのは、

私にとって予想外過ぎるものであったと言えるだろう。

何故なら、

(貴方のこと、愛してるよ)

という一言だったからだ。

それを聞かされた瞬間に思考停止状態に陥ってしまった私は、暫しの間放心状態になっていたのだが、

その間に彼が何やら言っているようだったので耳を傾けてみることにしてみたところ、

聞こえてきた内容は次のようなものだったのだ。

(気持ち、伝わったかな?)

などと、不安げに話す声が聞こえてきたような気がしたものの、

今の私には最早そんな事はどうでも良くなっていた事もあり、ただ黙って頷くだけに留めることにしたのだった。

「そっか、良かったあ!」

そんな嬉しそうな声が聞こえてくると同時に安堵の溜め息を漏らしていた私は、

その後すぐに顔を上げた後、満面の笑みを浮かべながらこう答えたのだ。

「私もだよ!」

そうして私達は、互いに見つめ合った後で唇を重ね合わせていくことになるのだが、

それがとても心地よく感じられた事で幸せな気分に浸ることができた私は、

この時間がいつまでも続いて欲しいと思っていたほどだった。

やがて唇が離れる頃には、お互いに微笑み合っていた私達であったが、

そんな中で不意に抱きしめられてしまったことで驚きつつも身を委ねることにした私は、

そのまま身を任せるようにしてもたれ掛かっていったことで安心感を得ていたことから、

次第に眠くなってきてしまい、ついウトウトと微睡んでしまった結果、

いつの間にか眠ってしまっていたようだ。

次に目を覚ました時には既に朝になっており、隣にいたはずの彼はもう居なくなっていたようだが、

代わりに置き手紙が残されていることに気づいた私は、早速読んでみることにした。

そこには、簡潔ながらも丁寧な文字で綴られた文章があった。

その内容は次の通りである。

(昨日はありがとう、凄く嬉しかったよ!)

という内容を目にした途端、昨夜の出来事を思い出してしまったことで顔が熱くなるのを感じた私は、

恥ずかしさのあまりその場に蹲ってしまうことになったのだが、

同時に幸福感に包まれていることにも気付いていたことで、自然と笑みが溢れ出てきていたのだ。

そんな状態で暫くの間余韻に浸っていたのだが、突然扉がノックされた事で現実へと

引き戻される格好になったことで我に返ったことで我に返ると、

慌てて立ち上がってから扉の方に向かって歩いていくことにした。

そして、鍵を開けてから扉を開けると、そこには彼が立っていたので驚いてしまった私だったが、

それ以上に驚いていたことがあったために何も言えずにいると、

その様子を見ていた彼が微笑みながら話しかけてきたので返事をすることにした。

そうすると、それに対して返ってきた言葉は、意外なものでしかなかった為に思わず聞き返してしまったのだが、

それに対しても同じような答えが返ってきたことによって益々混乱してしまった私が黙り込んでしまうと、

その様子を訝しんだ様子で見つめていた彼が心配そうな表情を浮かべながら声をかけてきたことで正気に戻った私は、

慌てて謝罪の言葉を口にするとともに頭を下げたのだが、

その際に目に入った彼の姿が気になったため視線を向けてみると、

そこで見たものは、何故か素肌になっている彼の姿だったのだが、

それを見て狼狽えていると、その姿を見た彼が恥ずかしそうにしながら俯いてしまうのを見てハッとした私は、

改めて自分の姿を確認してみると、やはり同じように素肌になっている事に気づいて愕然としてしまった。

(一体どうして!?)

そう思いながら戸惑っている間にも彼は近づいて来ており、

徐々に距離を詰められている事に焦っている中で、漸く落ち着きを取り戻した私であったが、

それでも状況を理解出来ないままだったので戸惑うばかりであったのです。

結局その日は、彼と顔を合わせて話をすることが出来なかったまま一日を過ごすことになったのですが、

それでも何とか気を取り直した私は、翌日に備えて準備をすることにしたのです。

ところが、翌朝になって目を覚ましてみると、何故かベッドの上で

寝ている自分がいたので驚いた私が飛び起きると、隣を見ると彼が眠っている姿が

見えたので更に驚愕することになったのでした。

というのも、何故か素肌のまま抱き合って眠っていたようで、

しかも自分も彼と同じように素肌になっていたからです。

(どういうこと?)

と思って頭を抱えながら考えている内に、昨晩の事を思い出したことで記憶が蘇ってきたので、

その事を彼に確認してみることにしたのですが、そうすると、

彼もまた何も覚えていないと答えた上で申し訳なさそうに謝ってきたので、

それ以上は何も言えなくなってしまった私だったのですが、

そこで一つの疑問が生じた事から彼に質問をしてみたところ、

その答えを聞いているうちに、今度は違う意味で頭を悩ませることになってしまったようです。

というのも、その内容というのが、私の記憶に無い出来事についてのものだったからです。

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