第33話 動揺
「おはよう、君の作ってくれた朝ごはん、最高に美味しいね」
そう言って微笑みかけてくれる彼の顔がとても幸せそうで、
その表情を見ているだけで自然と頬が緩んでしまう私は、きっと今、
だらしない顔をしているのだろうと思うものの、それでも構わず彼に向かって笑顔を浮かべた。
彼は赤面しながらも照れてしまった様子で目を逸らしたので少し寂しく思っていたものの、
すぐこちらに向き直るなり笑顔で手を差し出してきたので握り返しつつ立ち上がると
そのまま手を繫いだ状態で歩き出すのだった。
その際に彼が口を開いたのは、自然な流れであると言えるだろう。
「好き、大好き」
まるで子供のような無邪気な笑顔で告げられると、
不思議と嬉しくなるのだが、それと同時に少し恥ずかしくもあった。
それでも彼を愛しているという気持ちに変わりはなかったし、
寧ろ大きくなっていった事は間違いないだろう。
その証拠に今も尚手を繫いだまま離さないでいる訳だし、
こうして一緒に歩いているだけでも幸せな気持ちになれている自分が
いるのだから当然と言えば当然のことだろうと思う。
そうして今日もまた一日が始まった訳だが、
これからどんな事が起こるのかなんてわからないのが人生というものであると私は考えている。
だからこそ常に前向きに生きていきたいと思っているし、
そんな日々を過ごすことができることに感謝したいという思いもあるのだ。
きっとこれからも色々なことがあるのだろうが、
それを含めて楽しんでいけるように努力していきたいと思っている次第である。
だからという訳ではないのだが、まずは目の前の問題を片付けるべく行動しなければならない為、早速行動に移す事にする。
彼と一緒に過ごす一日、まずは何から始めようかと考えながら歩みを進めていくのだった。
(いつまでも貴方と一緒だから大丈夫だよ)
そんな思いを胸に抱きつつ、今日もまた幸せな時間を過ごせるようにと願ってやまないのだが、
果たしてその願いは叶うのだろうか? などと考えながら私は彼に微笑みかけるのだった。
これからはずっと一緒だよ! という想いを込めて微笑んだ。
それをしっかりと受け止めた彼が同じ様に笑顔を向けてきたので嬉しくなったのと同時に安心したのである。
これからも一緒にいられるんだと思い込む事で不安を消し去ることが
できたのだからそれで十分だろうと考える事にした私は、再び歩き始めたのだが、
その直後、突然腕を引っ張られたかと思えば、彼の腕の中に飛び込んでいたことに
気づくと同時に唇を塞がれてしまったのだった。
突然の事だったので驚いたものの、その反面、嬉しさが込み上げてくるのを感じた私は、
素直に受け入れていくことにした。
そうしてしばらくの間口付けを交わしていた私たちは、
満足するまで続けた後でゆっくりと離れていったが、
それでも互いの存在を感じ合うことができた事で幸福感に包まれることになったので、
結果的には良かったのではないだろうかと思っているところだ。
それから暫くの間は寄り添ったままでいると、
不意に声をかけられたことで我に返りながらも返事をしたところ、
突然抱き締められて頭を撫で回されるという予想外の展開になってしまい驚きを隠せなかったものの、
とても幸せな気分になれたため文句を言う事などできなかった。
そしてそのままの状態で会話を続けていたのだが、
その中で彼は何気なく口にした言葉が引き金となり、
つい言い返してしまった結果口論になる羽目になってしまったのである。
(何よもう!)
と思いながら頬を膨らませて怒った様子を見せた途端、
彼は慌てた様子を見せてから必死に謝ってきたのだが、
それでも許さないぞという意思表示を見せるようにして顔を背け続けることにした私は、
(まったくもう!)
などと思いつつも心の中では嬉しさを感じている自分に呆れつつ苦笑してしまっていた。
何故なら、 その行動こそが彼を困らせることになると知りつつもしてしまう程に彼のことが好きだからである。
(さて、どう出るかな?)
などと考えながら相手の様子を伺っていると、案の定困ってしまっているような表情を
浮かべている彼の顔が見えたので少しだけホッとした気持ちになると共に自然と笑みが溢れ出てきてしまった私であった。
そんな私を怪訝そうに見つめている彼に近付いた上で微笑みながら話しかけることにしたのだ。
そうすると目を見開いて驚いている様子だったので、
慌てて取り繕うようにして誤魔化しにかかったものの上手くいかず、
結局正直に白状することになった結果、どうしてこうなったのかを説明する羽目になってしまったのだが、
途中から恥ずかしくなってきてしまった私は、顔を赤くしながら俯いてしまったのだが、
そこで彼が私の顔を覗き込んでくる素振りを見せたので思わず後退りしてしまい、
そのまま逃げ出したくなったものの、ここで逃げてしまえば 完全に敗北してしまう事になるのでグッと堪えることにした。
だがしかし、彼に腕を掴まれてしまうことで身動きが取れなくなってしまった私は観念するしかなくなり、
抵抗せずに素直に従うことにしたのだが、それでもせめてもの抵抗として顔を背けることで意表を突くことに成功したようで、
(よし!)
内心でガッツポーズをしていたところ、彼の方に向き直った後に頭を下げて謝罪の言葉を口にすることにしたのだ。
それから少しの間沈黙が続いた後でようやく落ち着きを取り戻した私だったが、
その間ずっと手を繋いだままになっていることに気付いたため慌てて離そうとしたのだが、
力強く握りしめられたままでいる事に気付き戸惑いを覚えて固まってしまっている間に
彼の方から話し掛けられてしまった事により更に動揺する事となってしまった。
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