第31話 彼との過ごす時間
「どうしよう、このままだと死んじゃうよぉ……!」
恐怖のあまり泣きそうになっている私に対して、彼は冷静な態度でこう言った。
「大丈夫だよ、絶対に助かるから心配しないで」
その言葉を聞いた私は安心感を覚え、落ち着きを取り戻すことができたのだが、
その直後、不意に大きな揺れが発生したことでバランスを崩してしまった私は倒れそうになってしまった。
そうすると、咄嗟に彼が抱きしめてくれたお陰で転倒を免れた私は、安堵の溜息を漏らしたのだが、
それと同時に胸の中に飛び込みたい衝動に駆られていた。
そのことに気づいたのか、彼は優しく頭を撫でてくれたあと、額にキスを落としてくれたため、
それだけで幸せな気分に浸ることが出来た。
(ああ、もうこのまま死んでも良いかも)
「そろそろ地上に着きそうだね」
そう言って微笑む彼の姿を見て、
(やっぱり好きだなぁ)
と思いながら見つめていた時だった。
突如として急ブレーキがかかったかと思うと次の瞬間、大きく揺れて止まってしまった。
それによりゴンドラ内が大きく揺れたことによって体勢を崩した私は
その場に座り込んでしまった状態でパニックに陥っていたところを、
彼が駆け寄ってきて支えてくれたおかげで難を逃れることができたのだが、
その後も一向に動く気配はなく途方に暮れてしまうこととなったのだ。
そんな中でも彼は冷静に周囲を見回したり電話をかけたりして救助の要請を行ってくれたため、
安心して待つことが出来たのだが、それでもいつになるか分からない状況が続いている中で次第に疲労感が増していき、
眠気に襲われた事で意識が朦朧としてきてしまっていたその時、何かが口の中に入ってきた感触がしたため目を覚ますことになった。
目を開けるとそこには心配そうに見つめてくる彼の姿があったので、安心させる為に微笑んで見せたのだが、
次の瞬間とんでもない事をされてしまったことで頭が真っ白になった挙句、混乱状態に陥ってしまった。
というのも、あろうことか彼は私にキスをしてきただけではなく、舌を入れてきた上に胸を触ってきたのである。
これには流石に抗議しようとしたのだが口が塞がれているため喋れず、代わりに目で訴えかけることしか出来なかったのだ。
そうするとその視線に気づいた彼が申し訳なさそうに謝ってきたのだが、直後にまた同じことを繰り返してきてしまったことで
私の怒りゲージは完全に振り切れてしまったのだった。
それからはもう止まらなかったと言っていいだろう。
「おい、やめろって!」
私は大声で怒鳴りつけながら彼の頬を叩いていた。
そうすると彼は驚いた表情で固まってしまったので、ようやく冷静さを取り戻した私は、
自分がとんでもないことをしてしまったことに気づいて慌てて謝罪した。
「ご、ごめんなさい! ついカッとなってしまって……」
しかしそれでもなお怒りが収まらなかった私は、思わず彼を睨みつけてしまったことで更に怒らせてしまったらしく、
黙り込んでしまう彼に対して今度は優しく声をかけることにしたのだ。
「本当にごめんね」
そう言って頭を撫でながら謝ると、彼も許してくれたようで笑顔を見せてくれたためホッとしたのだが、
その直後、再びキスをされてしまったことで動揺してしまい何も言えなくなってしまった私に
対し彼が耳元で囁いた一言によって完全に理性を失ってしまった結果、そのまま愛し合う事になってしまったのであった。
「また一緒に行こうね」
そう言われ、嬉しさに顔が熱くなってしまった私は照れてしまい、思わず俯いてしまうことになった。
(やばい、超嬉しいんだけど……!)
そう思いながらもなんとか心を落ち着かせようとしていたのだが、そんな時、突然彼が私に抱きついてきたのだ。
その衝撃によって悲鳴を上げてしまった私だったが、すぐに離れてくれたので安心していたのも束の間、
今度は腕を摑まれて引き寄せられたところ、そのまま抱きしめられてしまったことで恥ずかしさが限界に達した私は、
黙り込んでしまったのだが、それでも彼は尚も強く抱きしめてくるものだから息苦しさから
解放されたい気持ちから必死に藻搔く羽目になってしまったのだが、結局逃れることは出来なかったため諦めることにしたのである。
それから暫くの間、ひたすら抱擁を受けていたものの段々慣れてきたこともあってか少しずつ慣れていくようになりつつあったのだが、
その間もずっと彼の方から好意を示してきてくれているため、だんだん愛おしく感じてしまうようになっていたため、
自分からも抱きしめ返していたのだ。
その後は自然とキスをする流れになり、互いに求め合うような濃厚な口付けを交わし合っていったのである。
時間を忘れて夢中になっていた事もあり、周りの事が目に入らなくなっていたが、
ふと我に返った瞬間、私達は慌てて離れたのだ。
そして改めて自分達の行為を振り返ると恥ずかしくなったものの、それ以上に幸せを感じていた為、後悔はなかったと言えるだろう。
むしろもっとして欲しいという気持ちの方が大きかったため、今後は二人きりで出かけたいと思ってしまうほどであった。
それからまたしばらく経ったある日の晩のこと、いつものように帰宅したところ部屋に明かりがついていることに
気付いた私は不思議に思いながらドアを開けると同時に笑顔で出迎えてくれた彼に驚きつつも内心嬉しく感じてしまったのだ。
その理由は先日の一件以来お互いを意識するようになっていたからだと思われるが、
まさかこんなにも早く会えるとは思っていなかったため、緊張してしまうのは当然のことであると言えるだろう。
何故なら相手は私の大好きな人でもあるのだから尚更だ。
そんなことを考えながら固まってしまっていた私に対して、彼が話しかけてきたことで我に帰った私は慌てて返事をすると、
テーブルへと向かいながらコートを脱いで部屋着に着替えることにした。
そうすると、その様子を隣で見ていた彼に指摘されてしまったものだから恥ずかしくなったものの、思い切ってその事を打ち明けることにしたのである。
その後、二人で食事をすることになり、普段では味わえない幸福感に包まれていたのだが、
途中で彼は何かを思い出したかのような反応を示しそのまま立ち上がったと思ったらすぐに
どこかへ行ってしまったのでどうしたのかと思っていると、そこで何かが入った紙袋を持って部屋に戻ってきたのだ。
それはどうやらプレゼントのようで、それを手渡された私は思わず目を丸くしてしまったのだった。
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