第27話 私の誘惑

「どうかしたのかい?

僕の顔に何か付いてるのかな?」

そう聞かれた私は慌てて誤魔化したのですが、内心ではかなり動揺していました。

というのも、彼があまりにもかっこよかったからです。

(うぅ、こんなの反則だよぉ~!)

心の中で叫びながら悶えていると、その様子を不審に思ったのか、彼が声をかけてきた。

「大丈夫かい?

具合でも悪いんじゃないのか?」

心配そうな表情を浮かべている彼に対して、私は首を横に振って否定したのだが、

それでも不安そうな表情を崩さない彼に申し訳ない気持ちになってしまった私は、意を決して打ち明けることにした。

「いえ、大丈夫です。ちょっと緊張してるだけですから……」

そう言うと、彼は安心した様子で微笑んでくれた。

その笑顔を見た瞬間、胸がキュンとなった私はますます恥ずかしくなってしまい、思わず顔を背けてしまった。

そうすると、今度は逆に彼が私のことを見つめてくるものだから、余計に恥ずかしくなってしまった私は、

思わず顔を逸らしてしまったのだった。

(うぅ、どうしよう……)

「大丈夫、朋絵は可愛いよ」

そういって頭を撫でてくれた彼のおかげで落ち着きを取り戻した私は、そのまま手を繋いで歩き出した。

道中、色々な話をしたのだが、正直あまり覚えていない。

それほどまでに緊張していたのだ。

ただ一つだけ覚えていることがあるとすれば、それは、 繋いだ彼の手の感触だけだ。

(大きくて暖かい手だなぁ)

そんなことを思いながら、私は幸せを感じていた。

それからしばらく歩いたところで、不意に声をかけられたことで現実に戻された私は、

ハッと我に返ると、慌てて返事をした。

そうすると、彼は笑顔で頷いてくれたのでホッとしたのだが、

その直後、突然腕を引っ張られたことでバランスを崩してしまった私は、そのまま倒れ込んでしまったのだ。

(えっ!?)

何が起こったのか理解できなかった私は、しばらく呆然としていたが、やがて状況を理解することができた。

どうやら、私が転びそうになったところを彼が助けてくれたみたいだ。

(うぅ、恥ずかしいよぉ~)

恥ずかしさのあまり顔を真っ赤に染め上げていると、彼は私を立ち上がらせてくれた後で、

もう一度手を差し伸べてくれた。

その手を取って立ち上がった後、彼にお礼を言ったところで、ようやく目的地に到着したようだ。

そこは遊園地なのだが、私達が訪れた場所は、その中でも一際大きな施設だった。

中でも一番目立つ場所にある観覧車を目指して歩いている最中、

周囲からの視線を感じて恥ずかしくなった私は、俯き加減になりながら歩いていたのだが、

そんな様子を見かねたのか、彼が声をかけてきた。

その言葉にハッとした私は、慌てて顔を上げると、ニッコリと微笑みながらこう言った。

ありがとうございます! そう言ってもらえたことでホッとした僕は、彼女の手を握り締めたまま歩き始めた。

最初は戸惑っていた彼女だったが、しばらくすると慣れてきたようで、笑顔を見せてくれるようになった。

そんな様子を眺めながら歩いているうちに、いつの間にか目的の場所に到着していたようだ。

そこでまず最初に目についたのは、ジェットコースターだった。

(うわぁ、大きいなぁ)

そう思った直後、いきなり動き出したジェットコースターを見て驚いた私は、悲鳴を上げてしまった。

しかし、それも無理はないことだろう。

なにせ、いきなり動き出したのだから無理もない話だ。

恐怖のあまり目を瞑っていると、あっという間に頂上付近まで来てしまったようだ。

そこから一気に落下していき、凄まじい速さで駆け抜けていく感覚が伝わってきた。

(ひぃ~!)

絶叫マシン系はあまり得意ではない私だが、それでもなんとか耐えることが出来たようだ。

そして、いよいよラストスパートに差し掛かろうとしたその時、

急にスピードが上がったことで更に恐怖心が増した私は、必死になって耐えようとした結果、

無事生還することができたようだった。

(ふぅ、怖かったぁ……)

安堵している私を他所に、次のアトラクションに向かったようだ。

次はメリーゴーランドに乗ったのだが、ここでもちょっとした事件が起こってしまったようだ。

なんと、馬に乗る際に私がバランスを崩してしまい、そのまま落っこちてしまったのだ。

幸いにも怪我は無かったものの、恥ずかしさのあまり顔を覆い隠していると、心配した彼が駆け寄ってきた。

「大丈夫かい? どこか痛いところはあるかい?」

心配そうに問いかけてくる彼に、私は首を横に振った後でこう答えた。

いいえ、大丈夫ですよ。心配してくれてありがとうございます。

そう言って微笑みかける私だったが、内心はドキドキしていた。

何故なら、今現在、私は彼と一緒に乗っているからだ。

しかも、後ろから抱きしめられる形で密着しているので尚更緊張してしまうのも無理はないだろう。

その上、耳元で囁かれたりするものだから余計に意識してしまうわけで、その度にドキドキしてしまうのだ。

(うぅ、恥ずかしいよぉ~)

そんなことを考えている間にも時間は過ぎていき、気づけば終了の時間になっていたようだ。

最後に記念撮影を済ませた後、私達は帰路につくことにした。

帰り際、駅まで送っていく途中、不意に声をかけられたことで現実に引き戻された私は、

慌てて返事をすると、声の主である彼に向かって微笑みかけた。

そうすると、彼もまた笑顔を返してくれたので嬉しくなった私は、自然と笑みが溢れていた。

(えへへっ、幸せだなぁ~)

そんなことを考えながら歩いているうちに駅に着いたので、ここでお別れすることになった。

「今日は本当に楽しかったです! ありがとうございました!」

そう言ってお辞儀をすると、彼は照れ臭そうに笑いながら手を振ってくれたので、

私も手を振り返すと、踵を返して歩き始めた。

それから数日後、彼から電話がかかってきた。

内容は、今週末にデートに行こうというものだった。

もちろん、断る理由などないので快諾することにした。

そして、当日になったわけだが、待ち合わせ場所に来た私の服装を見た彼は驚いていた様子だった。

それもそうだろう。

なぜなら、私が着てきた服というのが、露出度の高いワンピースだったからだ。

普段はスカートなんて滅多に履かない私だったが、この日に限っては違った。

というのも、この前買った雑誌に掲載されていた特集記事を読んだことが原因だったのだが、

その内容というのが、女性が彼氏を誘惑するためのテクニックについて書かれたものだったのだ。

それを見ているうちに、段々と興味が出てきた私は、思い切って実行に移すことに決めたのである。

というわけで、待ち合わせ場所にやってきた私は、早速行動に移すことにした。

まずは、彼に向かって手を振ることで挨拶をした後で、そのまま近づいて行くと、

腕に抱きついて上目遣いで見つめてみたり、身体を寄せてみたりと、色々と試してみることにした。

その結果、効果は抜群だったようだ。

その証拠に、彼の顔が赤くなっていることに気づいた私は、内心でガッツポーズを決めながら、

更に攻めていくことにした。

すると、今度は彼の方からキスをしてきてくれたので、

嬉しさのあまり蕩けてしまいそうになったが、それでも必死に耐えながらそれに応えることに成功した私は、

名残惜しそうにしながらも唇を離すと、今度は耳元で囁いてあげた。

彼の息遣いが荒くなったような気がしたので、内心でニヤリと笑みを浮かべると、

追い討ちをかけるように囁き続けた。

(ふふっ、効いてるみたいですね)

そう確信を得た私は、ここぞとばかりに攻勢に出ることにした。

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