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それからは自分を傷つける人生だ。
時が経つに連れて桜子の心と身体の二つを傷つけた自分が許せなかったからだ。
様々なことをしてきた。
誰かを助けるために他の人を傷つけ、殺しもした。
そんな生活だったから恋人も作らず結婚もしなかった。
何度も危ない目にもあったが、死ぬことは無かった。
僕は濃厚接触によって、力をもらっていたからだ。
そうやって当たり前の人生から闇に潜って近づいて、僕は“神崎”を知った。
人の世に出てはいけないような事象を防ぎ、日本の裏側に関わる隠された一族。
現在の当主は、先代を遥かに超えた力を持つ神崎桜子という名だった。
老いて死向臭で死期を悟った僕は、自分が使える
唯一の心残り――桜子に一言謝りたかったのだ。
「そうして…君が来た」
綺麗になった花瓶に花を生けてくれた小さな女の子に僕は言った。
何だろう。彼女からも、その近くからも良い匂いがする。
「君は良い匂いがするね。お隣からも」
自然な動作で右斜め上を見上げた小さな女の子は、ゆっくりと僕に向き直った。
「お婆様からの伝言をお伝え致します。
『あんな事をして、しかも駅にもいなくてあたしを袖にしたんだ。死ぬまで許さない』
とのことです」
小さな女の子はお辞儀をした。
顔をあげると、もう僕のことなど忘れてしまったような顔で病室の入り口に歩き出した。
年は取りたくないものだ。
あの小さな女の子は、何度ああやって感情を殺して何も無かったようなふりをしてきたのだろう。泣きそうになっているのが僕には分かってしまう。
「今日は…来てくれてありがとう」
僕の言葉から逃げるように少し早足になって小さな女の子は、病室から出て行った。
死ぬまで許さないか…桜子らしい。
うん、桜子らしくて良いな……
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