第25話 帝都へ向かう馬車

眠い 眠たくなるほどに静かだ

ここは馬車の客車

馬車という乗り物はもっと揺れるものだと思っていた

だがさすがはフィルが皇族が乗る馬車である

振動とかは車よりも少ない

今 俺が眠たい理由は馬車ともう一つある


「哲人 アルフのしごきがあそこまでとは

・・・さすがにやりすぎと言っておくのじゃ

今は休め」


騎士になったのはいい

フィルの一の騎士だ ということで連日特訓に次ぐ特訓だ 残念ながら蒼眼ブルーアイズを持とうとも一般人なのは変わりなく

まして青龍もなぜか黙りこくってしまった


だが


「ほんとに能力は上がったんだよな」


蒼眼ブルーアイズの消す能力の応用の範囲が遥かに上あがったのだ

城塞都市トルガルドの壁上からバンジーさせられたり 起きたらどこか遠くの山だったり

挙げ句の果てには切り掛かってきたり


正直 なんで生きてるの不思議で仕方ない


でもまるでこの能力の上げ方をわかっているような鍛え方だ

アルフさんもかつてこの眼と同じような力を持っていたのだろうか


「とは いえアルフは元九軍神ナインマルス 哲人を鍛えるにはおおよそぴったりななじゃ」


「え? そうなの? じゃあ なんで 今はフィルのもとで執事を」


「すまんが それは言えないのじゃ

もし 知りたければアルフに直接聞いてほしいのじゃ」


アルフさんは今 馬車の手綱を握っている

オーゲンも同様で御者席にいる

クズノハも客車で本を読んでいる


「黒鉄さん 調子はどうですか?」


オーゲンが御者席の手前のドアを開け入ってきた その間も風もこないのだから

本当にできた馬車だ

元の世界の車よりも便利ではなかろうか


「オーゲン アルフは?」


「はい 御者席は変わるので客席でやすんでおけと あと黒鉄さんの調子も見てこいと」


「哲人は まぁ大丈夫じゃ ではこれから帝都で行われる 龍神祭 その確認といこうか

クズノハも聞いておくのじゃ」


「はいっ」


龍神祭 おおよそ30年に一度の帝国の祭りで

龍の恩恵に感謝しようという趣旨 そして

皇帝の代替わりの時に開かれる祭りでもある

つまりこの龍神祭が終わり次第 皇帝選が始まる


「龍神祭とはいってもわらわたちがなにかしようというわけではないな

初めは単純に祭りを楽しんでくれ

なにせ9日間もあるからな」


「その9日間が終わったら・・・」


「皇帝選が始まるのじゃ 」


フィルが皇帝選に立候補する

恐らくは批判が殺到するだろう

それでもやらなけれぼならない


「ああ 哲人は帝都についたら

まず 向かうところがあるのじゃ」


「どこに行けばいいの?」


「現皇帝の御前 非公式の会談を設けてあるのじゃ 哲人のことはそこで紹介するのじゃ」


現皇帝 つまりフィルの親父だ

どう接すればいいのだろうか

フィルからしたら複雑な思いだろう

各々の不安 戸惑い そして願いを乗せ馬車は走る

これから魔窟とかす帝都へと






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