第五節 爆弾

「なっ、何を言うか、パトリツィアとやら!?」


 真っ先に動揺したのは、ララであった。


「そ、そもそも、何を根拠に……」

「根拠?

 そんなもの無いけどさー、ボクとシュランメルトは結ばれるの。そーいう事になってるの」


 何の誇張も無く、淡々と、パトリツィアと呼ばれた乙女が話す。


「あ、けどさー……。

 世間一般で言う婚姻はしないかな?

 ボクはシュランメルトの子供を孕んで産めたら、それでいいの」

「「孕む!?」」

「「産む!?」」


 次々と飛び出すパトリツィアの爆弾発言に、全員が驚愕する。


「当たり前じゃん。

 ボクはシュランメルトとの子供を孕んで、産む。

 その使命を果たすために、ボクはここベルグリーズ王国へと生まれたんだから」


 驚愕の声もどこへやら、パトリツィアは平然としている。

 散々振り回されたシュランメルト除く全員は、ヘトヘトになっていた。


「ところでさ。

 ララちゃん、だったよね?」

「あ、ああ、そうだが……」


 突然自らの名前を呼ばれ、うろたえるララ。


(まさかこのセクシーな格好をした女……レズビアンという話では、ないよな?)


 自らの貞操を心配するララだが、それはある意味杞憂に終わる。


「シュランメルトと喧嘩するの?

 だったらボクも、混ぜてもらっていいかな? もちろん、シュランメルトの味方として」

「え? か、構わないが……」

「やったー!

 それじゃ、明日一緒にAsrionアズリオンに乗ろうね、シュランメルト!」

「承知した」

「「いいのかよ!」」


 驚愕する一同をよそに、シュランメルトとパトリツィアはベッドへ向かったのである。


「一つだけ言っておくぞ。

 おれが寝ている間は手を出すなよ」

「出さないよー。

 あくまでキミとの“合意の上”で、ボクは子供を孕みたいんだもん」


 さらなる爆弾を放り込みつつ、二人は自室へ向かったのであった。

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