第六節 確認

 翌朝。

 食卓は、“さんざんパトリツィアに爆弾を投下され、クタクタになるまで議論した者達”と、“さっさと切り上げて眠った者達”とで二分されていた。

 もちろんシュランメルト、パトリツィアは後者であるし、ララもララで戦いに備え、早めに切り上げたのでやはり後者である。


 それ以外の者達はリラを除き、一人残らず前者であった。

 パトリツィアの正体とか、そもそもシュランメルトの力になるとかならないとかなど、夜を徹して議論に明け暮れていたのである。

 結果として、全員の目にはうっすらと隈が出来ていた。


 そんな視線にも構わず、パトリツィアはのんきに朝食を取っていたのである。

 元々肝の据わったララは別として、シュランメルトは少々食が細くなったのであった。


     *


 朝食、そして歯磨きが終わった後。

 シュランメルトとパトリツィア、そしてララは、玄関先で向かい合っていた。


「さて、集まったな。

 そういうわけでララ、本日は尋常に勝負願うぞ」

「当たり前だ。誰が相手でも手は抜かん。

 しかし……」


 ララの視線の先には、パトリツィアがいた。


「彼女……パトリツィアは、参加する必要があるのか?

 本人が参加したいと言っているのは承知しているのだが……」

「ん、ボクー?

 そうだねー、かなー」


 昨日と同じく、軽い調子でパトリツィアが話す。


「ボクがいればー、Asrionアズリオンは全力で動けるかなー。

 反対にー、ボクがいなかったらー、ちょっとばかりシュランメルトに苦労させちゃうかもー?」

「なるほどな。

 そういう事であるならば、遠慮はいらん。

 貴様らが2人搭乗しようが、戦う魔導騎士ベルムバンツェは1台だからな」

「そういうことー。

 それにボクとしてもー、シュランメルトの傍にはいたいしー?」

「それはもういい」


 ララは呆れたように言うと、“ある人物”を呼んだ。


「黒猫、来い!」

「はっ!」


 呼び声が響くや否や、黒猫――コウ・エクリプスが現れる。


「お前の鋼鉄人形を借りるぞ」

「ッ……。

 承知、致しました」


 コウは一瞬苦い表情をするも、しかしすぐに承諾する。

 元より帝国皇女と一軍人とでは、どちらが上の立場かは火を見るよりも明らかであった。


「よし、では今から15分後に始める!

 覚悟は良いな、シュランメルト、そしてパトリツィア!」

「受けて立とう、ララ!」

「もちろんだよ」


 3人は待ち受ける決闘を前に、胸中で闘志を燃やし始めたのであった。

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