第四節 挑戦

 それからしばらくして、夕食が終わった。

 と、先ほどまでの和やかな雰囲気はどこへやら、ピリピリした空気が張り詰め始める。


「そう言えば、ララ」

「何だ?」


 シュランメルトが、ララへと話しかける。


「まだ決着は付いていなかったな」

「そう言えば、その通りだな。

 一応はリラの仲介により、私が勝った事にはなっているが……どうにも、気分がスッキリしない」


 ララは表情に凶悪さを交え、拳をボキボキ鳴らしている。

 と、雰囲気を察していたリラが介入した。


「確かに、あの時はそのような裁定を下しましたが……。

 やはり、穏便には終わらないのですね」

「当たり前だ。

 私を挑発しておいて何も無しとは、肩すかしもいいとこだ。

 悪いが、私はシュランメルトと戦わせてもらう」

「それは構いませんが……」

「酒類は飲ませるなよ。

 また泥酔されて戦えませんでした、では困るからな」


 ララが厳しい口調で、リラに告げる。

 と、黒猫が突如として走り出した。


「ニャー!」


 黒猫は高く跳躍すると、空中でクルクルと回る。

 そして、


「それならボクに任せて!

 ボクがキッチリ、シュランメルトを見張ってるからさ!」


 黒猫――否、黒髪黒目の巨乳の乙女が、ララに自信満々に宣言した。


「だ……誰、だ?」


 あまりの事に、理解が追い付かないララ。

 他の全員もまた、驚愕の目で乙女を見ていた。シュランメルトを除いて。


「ん、ボクー?

 ボクの名前はー、Patricia Asreiaパトリツィア・アズレイア

 シュランメルトのお嫁さんの一人だよー」

「「は」」


 パトリツィアとシュランメルトを除いた全員が、同時に叫ぶ。




「「ハァアアアアアアアアアーーーーーッ!?」」




 叫び声はリラ工房はもちろんの事、近くにある森にまで響き渡ったのであった……。

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