第2話 それはそうと彼女はメイド

第二話  それはそうと、彼女はメイド



「それはそうと、もうすぐ来るわ。」


 扉はガチャっと開いて、金髪のメイドが入ってきて、封筒をお嬢様に手渡した。


「紹介するわ。メイドの二条 アリスよ。」


 その金髪のメイドは初めましてという風に、スカートを広げて、挨拶をする。


「これから、あなたの同僚になる子よ。」

「いや、その、知ってるんですけど。」


 二人は不思議そうな顔をしてこちらを見る。


「私が知らないというのに、この男だけが私を知っているということですか。つまり、これは。」

「間違いないわ。ストーカーね。アリスは可愛いから。私ほどじゃないけど。」

「あははは、そんなお言葉、私には勿体無いですよ。久し振りですね。ツバサ君。」


 髪の毛をかき上げるそいつはどっからどう見ても幼馴染の一人で、全然久しぶりではない。昨日会ったし、なんなら昨晩に、「明日はあなたはどこで朝を迎えるんでしょうね」とか言う、怖いラインを受け取ったばかりだ。こいつ、絶対事情を知っていやがったな。


「昨日会ったけどな。ていうか、お前もいるに決まってるのか。」

「そりゃ、私たちは幼馴染ですし、私は麗華様の腹心ですし。」


 二条 アリスは幼馴染だ。と言っても、俺と麗華が幼馴染なのは偶然だが、アリスは違う。アリスは近衛グループの幹部である二条家の娘ということで、小さい頃から麗華の元に送られてきた。要するに、麗華の腹心となるべく育ってきた。だから、もちろん結構なお嬢様だし、メイド服もただの趣味で着ているだけらしい。まとめると、俺と麗華とアリスは3人とも小さい頃から一緒だ。


「まあ、自己紹介は終えたところで、本題に入ろうと思うわ。」


 お嬢様はアリスの為に椅子をもう一つ持ってきて、自分の座っていた椅子の横に並べた。なんだよ。仲良しかよ。あ、俺?俺は、もちろん椅子なんて用意されてなくて、床に座っています。


「あなたが売りに出されてると知って、買おうとした時に、私は考えたの。」

「まず、売りに出されてないし、人を買おうとかやばいことは考えないようにしようぜ。ていうか、いつの時代も権力者はやばいって本当なんだな。」


 アリスが床に座っている俺を見かねて、麗華の部屋のどこかにあった可愛いらしいクッションを俺に渡す。もし、俺が少女漫画の主人公とかだったら惚れるシーンだと思う。少女漫画を読んだことはないけれど。

「あなたの身分調査をしようって。」

「ほお。聞こうじゃないか。」


 俺は身を乗り出した。



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