第32話

 冬期講習も最後の模試を受けた。

「あ、小夜。どうだった?」

「全然ダメ……めちゃくちゃ難しかったけど、なんとか解答欄に全部書けたから」

 母さんに愚痴をこぼしている。

 一週間後、その模試の結果が郵便で送られてきた。

 いままでのなかでも結果はあまり変わらず、第一志望の都立神村北高校は合格圏スレスレの場所にいる。

「でも、全体的に良くなってるね、大丈夫だよ。もう少しだからね」

 家庭教師をしてくれている永莉ちゃんが言ってくれた。



 学校も三学期が始まり、クラスはピリピリとしている。

 あと二週間で私立専願で推薦を受ける人が入試に向かう。

 みゃーちゃんは聖愛女学院、華乃かのともは藤池大学附属高校を受験する。

「めちゃくちゃ倍率が高そうだけど、がんばってくるよ!」

「うん。行ってらっしゃい! みゃーちゃん、華乃、朋。もう大丈夫だからね」

 三人とも、私立高の入試で、学校を休んでいた。

 わたしは少しだけ寂しかったけど、みゃーちゃんたちから報告をされたのは、翌週の週末だった。

「三人とも、どうしたの?」

「高校に受かったよ! みんな」

 それを聞いた瞬間はびっくりしたのと、うれしいので感情がごちゃ混ぜになっていた。

 そして、もう少しで二月になる。

 二月の連休で併願先の佐久間女子高を一般入試を受験する。

 たぶん、二中から受験するのは、うちだけだと思う。





小夜さよ

「え? あ……悠里ゆうり。どうしたの?」

 悠里が一緒に帰るらしい。

「そっちは高校、併願はどうするの?」

「え? 桜木学院だよ?」

 さらっと言うけど、都内でも有名な進学校で、都内の私立で最難関とも言われてるんだよね。

 わたしは悠里の方を見る。冬休みの間はずっと会ってなかったけど、背も伸びて大人っぽくなっている。

「小夜は佐久間女子? 併願は」

「うん。でも、まだ行きたくないな~って思ってる」

 すると、悠里はいきなりこっちを見ていた。

 視線が重なるけど、心臓がドキドキしているんだ。

「絶対に都立に受かれよ、俺もがんばるからね!」

 再び悠里が歩き出すと、そのまま別れて家についた。

「あ、小夜、おかえりなさい。ちょうど良かった! 味噌を買ってきてくれない?」

「うん。いまから行くよ。お金、ちょうだい、いつものでいいね?」

 わたしは制服から私服に着替えて、いつものスーパーに行く。

 たまに母さんは勉強で行き詰まったら、夕飯の食材をもらいに向かう。

 雪華ゆきかは部活で遅くなるらしい。

 まだ部活で練習はしてないから、ずっと前からリハビリをしているけど……めちゃくちゃ回復力が高いためか、もう松葉づえ無しで歩いている。

 あと少しで私立高の一般入試が始まる。

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