冬休み

1月

第31話

 一月一日。

「明けましておめでとうございます!」

「小夜、雪華。明けましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします」

 年が明け、わたしは私立の受験が二月に迫っていた。


 いまは軽井沢の母方の実家に帰省中。

 おばあちゃんと絢子あやこちゃん(母さんのお姉ちゃんだから、伯母さん)一家と隼人伯父さん一家もいた。

絵梨花エリカちゃん、杏奈アンナちゃん、亜琉アルくん! 明けましておめでとう!」

 雪華は松葉づえを片方に持っていたけど、歩行を助ける以外はもうほぼ自力で歩いている。

「雪華ちゃ~ん! 明けましておめでとうございます!」


 すると、永莉ちゃんがやって来た。

 年末のときは勉強時間を少しだけ取ってくれたのは、ありがたかった。

 おばあちゃんがお年玉をくれた。

「ありがとう。おばあちゃん!」

「小夜ちゃんは高校受験がもうすぐだね?」

「おばあちゃん。小夜ちゃん、とても成績が伸びてきているの」








 トイレから戻ってきたとき。

 廊下でおばあちゃんの部屋から……話し声が聞こえた。

 ボソボソと話しているけど、おばあちゃんが母さんと話しているらしい。

 とても大人の話し合いで、内容はあまりわからなかったけど、聞いてしまった。

絢野あやの、結婚はしないの? 隼人も絢子も心配してるのよ?」

「わかってるけど、あの子たちの父親は」

「えぇ、わかっているわ。あの子たちの父親は……はとこの大樹だいきだということも」

 親戚との間に生まれた子どもだということを聞いてしまった。

「ほんとに知らなかったのよ。大樹が同じ美容の専門学校にいたなんて……、年上だったけど、本気で愛してたのよ?」


 一番上のはとこの大樹――それはわたしから見ればほとんど知らない親戚の人で、会ったこともないんだ。

 少しだけ、びっくりしてしまった。

「絢野。結婚は……」

「いまさら結婚しても、小夜と雪華に被害が及ぶかもしれない」

「そうね……近ごろはよく起こってるものね」

 わたしは自分が泊まっている部屋にダッシュで戻って、ベッドにた寝ころんだの。

 ほんとならば、父さんに会いたいと思っていたのに……さっきのことで、言いづらくなってしまった。

 年賀状の住所を見ればわかるけど、東京にあるんだよね。

 でも、もう関係ないと感じてきた。

「あれ? 小夜?」

「母さん……さっきの話って?」

 母さんの表情がとても険しくなったのがわかった。

「そうね。受験が終わってからでも、大丈夫だと思ったけど。話すよ」

 そして、わたしと雪華を呼び、本当のことを明らかにしてくれた。

 雪華は少し考えてたけど、もう理解してくれた。

「うん! わかったよ。母さん」

「雪華……小夜。ありがとう」

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