第31話 タバコと時間

 私は喫煙者10年後、非喫煙者として11年経ちました。

 非喫煙者になり、私の周りの時間の流れが変わりました。

 時間の流れが変わったというか、正確には私の時間の使い方が変わったという表現の方が近いかもしれません。

 タバコのメリットとして挙げられるのは、時間のコントロールが出来る事です。タバコミュニケーションに代表されるように、タバコはコミュニケーションを円滑に出来る魔力があります。

 私はあまり頭の回転が速く無い方です。

 交渉の場で、うまく返せなかった事とか日常茶飯事です。営業には向いていないでしょう。しかし、こんな私も準備していった事に関してはスムーズにお話出来ます。誰でもそうですね。なので、面接などでは意外とうまくいったりします。

 それでも予定外の事を聞かれた場合には、パニックになります。そして口数が多くなり、失言・・・最近は、そんな悪循環に陥る事がたまにあります。年と共にさらに頭の回転が鈍くなっていっているのでしょうか?


 そんな私も喫煙室では、失言はあまりありませんでした。喫煙室には、時間に関してはなぜか暗黙のルールがあります。

・火をつける瞬間は話を待っていただける

・吸う時間は一呼吸待ってくれる

また、灰皿でタバコを消す時もその場を離れる事が出来るタイミングがあります。

さらに、飲み会とかの場合、非喫煙者に気を使う振りをして別の席や、外に移動できる。飲み会で喫煙者はタバコの魔力を使い、逃げる事が出来ます。

 これも嫌な時間から逃れる事が出来るタバコのメリットの一つです。

 要は、タバコを吸っている時は、話の中で答えにくい質問が来た場合に、一呼吸の考える間を取る事が不自然ではありません。一呼吸で?と思うかも知れませんが、この一呼吸でだいぶ変わります。痛い質問をされた場合も、吸う動作をすれば動揺を煙に撒けますし、吸って、灰皿に消しに行く方法を使えば数秒時間が稼げます。

 タバコはギリギリまで吸わないことは不自然ではありませんので、自分のタイミングで消す時間へ移行できます。

 昔、机の上でタバコが吸えた時は、この時間に甘えていました。

 私は、10年間このタバコの魔力に甘えていたので、この一呼吸の時間の使い方に関しては非常に下手です。非喫煙者になってこの間の取り方がまだ分かりません。タバコの魔力から逃れれない苦しみが続いています。

 

 最近、飲み会で嫌な席になりました。こんなことは社会人ならば当然あるでしょう。しかし、喫煙者は魔法が使えるので、その難から逃れる事が出来るのです。

 実際、私もこの手を使った事が多々あります。

 最近は特に、外に灰皿があるパターンがあるので、ある程度嫌な席に居たらタバコを吸うために外に退避出来るのです。そして、非喫煙者に気を使う振りして、席を変われるのです。その場の雰囲気が重くなると、喫煙者は、

 「私はタバコを吸うので端っこで」

 「喫煙者席に行ってきます」

 「飲むとヘビースモーカーになるんです」

これらの呪文を唱え、どこかへ行ってしまします。

非喫煙者の私は、トイレに行くぐらいしかその場を離れる事は出来ません。しかも、トイレに行って別の席に移るのはイメージが良くないという事もあります。

 喫煙者の様に、席を移る理由が無いのです。30分に一度タバコを吸いに席を離れるのは自然ですが、30分に一度トイレに行くのは不自然に思われます。

 この場に居ずらいのかな?っと変に思われます。

 最近の受動喫煙に関する風潮は、喫煙者にとっては都合がいいのでは?と思った、最近の飲み会でした。

 

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