懺悔其の終 シスターレナに叱られたい!

 

 さて、本日が最終日だ。

 いよいよもって、アタシはこの懺悔室担当から外れることになるな。

 今日はどんな迷える子羊が来るかな? 最後は平穏に終わりたいところだ。


 そしていきなりバタバタ足音が聞こえてきた、走ってくるヤツにマトモなヤツはいないんだよねぇ……

 バターン! と大きな音共に誰かが入ってきた。

 しかし来たのは雅代だった。雅代が何故か泣きそうな顔でこっちに来るとアタシの手を取る。


「レナさん! ここの教会を本日いっぱいで辞めるって本当なんですか!」

「は? 何でアタシが此処辞めることになってるの?」

「違うんですか?」

「違うよ、本日いっぱいで懺悔室の担当期間が終わるってだけだよ」


 泣きそうな顔してた雅代は、ほっと胸をなでおろす。


「なーんだ、良かったです。レナさんは私と下り坂でセンター取るんですもんね」

「やらねーよ、アタシがアタシがイドルとかないわー。しかもアイドルやるなら教会辞める方が都合いいだろうが」

「あ、それもそうか。あとレナさんなら絶対にいけますよ」

「ないない」


 アタシがアイドルとか、雅代は時々変な事を言うな。


「ところでアタシが教会辞めるって誰から聞いた?」

「江浦さんが言ってたのを聞いたんだけど……」

「ほう」


 やはりあのバカリアか……まったくロクなことしねぇな。

 するとまた誰かが入ってきた。今度は奥田とか言うオタクとその友人だった


「お、お姉さん、ここを辞めるんでつか?」

「ここを辞めてアイドル転向でござるか? それとも声優でござるか?」

「まてまて、何でお前等がその情報を知ってるんだ?」

「と、言うことは本当なんでつか?」


 奥田も知ってるとなると、どれだけの範囲でこうなってるんだ?


「奥田さん、大丈夫ですよレナさん辞めるわけじゃないそうですから」

「おお、同士雅代ちゃん、それは本当でつか!」

「そうでござるか」


 まて、お前等いつの間に同士になった? ハロウィンの時か?


「同士ってなんだ? あとアタシがアイドルは無いから」

「お姉さんファンクラブの同士でつよ」

「そこそこ人数が集まってるでござるぞ」

「私が会員ナンバー1なんですよ」

「ぇー、何勝手に作ってるんだよ」


 なんだよファンクラブって……しかも人数集まってるとか、何してるの君たち?


「奥田さん、安達さん、レナさんをきっと下り坂のセンターに立たせて見せますから安心してください」

「楽しみでござるな!」


 変な話がどんどん進んでいくぞ? 現役アイドルも何言ってんだ?

 あと奥田の友人は安達っていうのな?


「お姉さんの賛美歌ライブ鑑賞会も、人が増えだしていまつからね」

「なんだその鑑賞会って? どこでそんな映像出回ってるんだよ」

「会員ナンバー零の栄誉会員のリナさんから譲り受けたでござるよ」

「あ、安達さんのバカ」

「しまったでござる……」


 犯人は身内にいたか……覚えてろよアイツ。


「おー、にゃーんか今日は騒がしいでやよぉ」


 うは、コイツまで来たよ今日はなんなんだ?


「レナー、ここを辞めるゆうとるでやよ、ついにワシと天下とりゃあせ気分になっとるがや?」

「天下! お姉さんなら芸能界で天下とれまつね!」

「余裕でござるよ」

「なんじゃあ、おみゃあら?」


 ブリジットはオタク二人を睨んでいた。

 あぁ、もうなんか収集つかないし。


「ブリジットもお前等も、アタシは天下もアイドルもしないから」


 雅代もブリジットも奥田と安達も残念そうな顔をしている。


「えー、勿体ないなぁ」

「だぎゃ」

「でつね」

「でござるな」


 しかし、今日は何故次々に人が集まってくるんだ?

 すると次にホナミさんが走ってきた。


「レレレナさん!」


 えらく慌ててるようだ、レレレのレナさんっぽく言うのやめてほしいなぁ。


「ホナミさん落ち着いて。それ、なんかレレレの人っぽく聞こえるからやめて」

「はい、すいません。それよりリアさんがレナさんが教会を辞めるような事を言いふらしてるそうなんですよ」


 リアが犯人確定だな。


「はぁ……あのバカ何してんだよ。リナといいリアと言いロクな事してないなアイツ等」

「しかし、リアさんは何がしたいのでしょう?」

「さあ? 何がしたいんだろうな」


 しかし、リアのヤツのせいでゾロゾロと色んな奴が来てるのか。

 次は男女で誰か来たな、北岡とあの根暗娘か。


「レナさん、ここ辞めちゃうんですね。最後に写真撮っていいですか?」


 北岡は懲りずに写真を撮らせてほしいというが、最近は彼女になった根暗娘が止めてるとの事だったので止めてくれるのを期待してみると……


「く、シスターのお陰で北岡君と付き合う事が出来るようになったんだし……一枚ならシスターを撮ってもいいわよ」


 あっさりと期待を裏切られた。


「おい、そこは止めろよ!」

「でも、シスターは私と北岡君の恩人だし、一枚くらいなら私も欲しいかなって」

「やめてやめて! お前に写真渡すと何されるか分からんから怖いわ!」

「何もしないですよ……うふふ」


 藁人形に貼りそうで怖いんだよ!

 カメラを構える北岡とアタシの間に雅代が割り込んできた。


「北岡先輩! レナさんの写真は私を通してからにしてください!」

「坂下さん、何で君の許可がいるんだい?」

「私がレナさんの親友だからです!」


 雅代がどんどん変な方向に進んでいく……誰かとめてー


「修羅場だなも」

「ある意味な」

「はぁー、人類はくだらない事ばかりしてるわねー」

「くだらないって言ってやる……な……」


 そのギャルっぽい口調は!

 そこには歩くギンブナがいた。


「まて、お前は人前に出てきちゃいかんだろ!」


 アタシはステファンを掴む。地味に前回と水着の色が違うのが何かイラとする。


「ちょっとー、いいじゃないのー、人魚差別ですけどー」

「だってお前はどう見ても未確認生物だろうが」

「それ言ったらアレー、アレはなんですかー?」


 ステファンが指もといエラでエラ指すと、天井にブリッジした白い服の女がいた。


「ヨシコのヤツ、まだこの世にいたのか!」


 アタシがそう言うとブリッジしたまま高速でどこかに消えていった。

 駆除しそこなった固体かよ、そもそもアイツ何体いるんだよ? 今度ダニー神父に祓ってもらおう……


「そうそうー、安西さんとこにまた空き巣が入ったってー、それでーおばちゃん二人が逮捕されたんですってー、物騒よねー。パチンコで出来た借金がどうとかーって話してたみたいよー」

「……何となく誰かわかったよ」


 あのオバちゃん達は今頃塀の仲か。まあ、仕方ないね。


「さて、これ以上人が増える前に何とかしたいが……犯人はどこにいやがるかな?」


 アタシがそう呟くとまたまたウルサイのが来たようだ。

 最終日がから平穏に終わらせたいのに。


「「レナさん!」」

「まくだー!」


 バカ三人組まで来ちゃったし……


「レナさん、マジですカ?」

「シスター辞めて、またヤンキーに戻るって」

「私が卒業するまで待てなかったのか?」


 話にどんどん尾ひれが付いていく……


「アホか誰がヤンキーなんぞに戻るか。バカ言ってないでお前等リア探してこい」

「「わかりましたー」」


 シホとミサキにそう言うと二人は探しに出て行った。


「キョウコ、テメーは勉強だ。ホナミさんなら今ここにいるからな」

「マジかよ! 丁度ワカンネーとこがあったんだよ」


 そう言うとキョウコも出て行った。

 何だかんだであいつ等真面目だよな。


「ハハハ、ここの懺悔室は賑やかだね!」


 ダニー神父が相変わらず上半身裸にマントという井出立ちで来る。

 そしてリアの首根っこを掴んでいた。


「ふええ、リアさんだから言ったじゃないですかー。情報はちゃんと伝えないとー」


 マティアにリナも一緒について来た。


「リアちゃん嘘はついてないもーん」

「嘘は言ってないけどリア君の伝え方が良くないな『マクダあそこ辞めるってよ!』って」

「ちょっと大げさにいっただけだもーん」

「ハハハ! その説明じゃあ、懺悔室の担当を外れるなんて伝わり方はしないだろうね」


 勝手に真相へと近づいていったな。

 アタシはリアの所に近付く。


「つーか、アタシが懺悔室の担当じゃなくなるのを、何で言いふらしてるんだよ?」

「それはねー、次から『シスターリアが愛らしい!』計画を始めるためなんだよー」


 何言ってるんだコイツ?


「マティア、こいつの首に鎖付けとけって言っただろうが」

「そんなことしたらボク叩かれちゃうよ……ふぅ」

「……」


 バタバタとまたまた足音がする!


「きゃんきゃん!」

「ちょっとー、リアちゃんでしょ! おねーさんのタンフォリオに眉毛書いてアフロのカツラかぶせたの!」


 マリアさんが銃を構えながら走ってきた。

 どんどん収集が付かなくなっていくぞ……

 ああ、もう!


「リア! そこに正座しろ!」

「えー」

「えーじゃねぇ!」


 リアを正座させる。


「マリアさんもすぐに銃を出すな! 正座!」

「え? なんで私もなの?」

「マティア、お前もだ」

「ふええ? なんでー?」


 マリアさんもマティアも正座させる、この二人も問題をすぐに起こす。


「雅代たちも全員正座!」


 アタシは雅代たちも正座させる。どいつもこいつも、もっと落ち着けよと言いたい。


「ハハハ、彼女は本当に人気者なんだね」

「でしょ、私の女神さまは無自覚だけど、人たらしなんだよ」

「私がレナちゃんを懺悔室担当にしたのはこれが理由なのよ、彼女はぶっきらぼうでガサツな部分もあるけど人を惹きつけるモノを持ってるのよ」

「ハハハ、シスターケイトいつの間にここに?」

「騒がしいから見に来たのよ」


 何時の間にかシスターケイトも増えてるし、そして何故か傍観者を決め込む三人だが。

 リナ、テメーはダメだ。


「リナー! お前もこっちきて正座だ! アタシの賛美歌の映像流出罪だコノヤロウ!」


 リナは横を向いて舌打ちした。


「奥田か安達のどちらかが喋ったな……」

「ぶつぶつ言ってないでさっさとこい!」


 アタシはリナも呼んで正座させる。


「よし、お前等! ここは懺悔室で説教する場所だからな。お前らは色々と問題起こしすぎなんだよ!」


 アタシは正座した全員を見回すと……


「さあ、シスターレナ最後のお説教だ! 覚悟しろ!」


 こうして、アタシの懺悔室担当最終日は騒がしく終わりを告げたのだった。

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