懺悔其の三十五 シスターマリアに睨まれたい!

 さて、今日は私が懺悔室の担当ね。レナちゃんはどうしたって? 私用みたいよ?

 そういう訳で今日は、教会のお姉さん事この私、アンナマリアがパパっとお悩み解決するわよ。


「さあ、最初の迷える子羊は誰かしら?」


 すると扉から小太りでよれたスーツの男が入って来たわね。

 ジャポネーゼのビジネスマンかしら?

 まあ何だっていいけど、相手をしないといけないわね。


「ここは懺悔室よ?」

「あ、はいはい。どーも、こんにちは」

「ええ、こんにちは」


 男は持っていたアタッシュケースを自分の横に置き、手もみしながら挨拶をしてきたわ。


「本日はですね、お買い得な良い品を持って来たんですよ」

「懺悔ではないの?」

「いえいえ、私は懺悔するようなやましいことはしていませんので」


 胡散臭さ大爆発ね、訪問販売の詐欺ってところねコイツ、私相手に詐欺ろうなんて後悔させてやろうかしら?

 というか、こんな時代遅れの詐欺いまだにいたのね。


「何を持って来たの? 見せてみなさい」


 私が話に乗ってきたのを見ると、男は嬉しそうな顔をしていた。


「はいはい、こちらなんですがね」


 男はアタッシュケースを開けようとしたが、私は声をかけて男の行動を遮る。


「あ、そうそう。ただしツマラナイものだったら承知しないわよ?」


 私は片目だけ開いて男を睨む、男のすぐ後ろに黒服が二人仁王立ちしている。

 男は気配を感じたのか後ろを見る。

 厳つい男が二人、男を見ている。


「あ、あのー、こ、これは?」

「貴方がツマラナイ物を私に見せたら、お仕置きをしようと思ってね」


 男は焦りだす、冷や汗をかきながら私の方を見ているわね。


「具体的にお仕置きってなんでしょうか?」

「お仕置き? コンクリートを抱いての海水浴か、谷底へ紐無しバンジーのどっちかにきまってるじゃないの」


 男は蓋を開けようとしていた手を蓋から放し、アタッシュケースを抱えると愛想笑いをする。


「へへ、すいませんね今日はお釣りの準備を忘れちゃいましてね。アハ、アハハ……失礼しました!」


 男は脱兎のごとく走って扉から逃げて行った。


「まったく、迷惑なヤツね」


 私は気を取り直して次の人を呼ぶ。


「さあ、お次の方どうぞ」


 私がそう言うと黒服の一人が扉を開く、するとセーラー服を着た女の子が入って来たわね。

 暗い顔をしてるわね、どうやら切羽詰まってるって雰囲気ね。


「ハァーイ、お姉さんに何かようかしら?」


 入ってきた女学生は泣きそうな顔をしてるじゃないの。あ、そういう事かな?


「アンタ達隠れてなさい、怖がってるじゃない」


 私に声をかけられた黒服二名が姿を隠す。


「ごめんなさいね、あの人達顔が怖い物ね。全く懺悔室なんて私一人で大丈夫って言ってるのに付いてくるのよね、困っちゃうわよね」


 私は女学生を怖がらせないように、黒服を下がらせ笑顔で対応する。


「懺悔かしら? それとも相談?」


 私がそう言うと女学生は絞り出すような声で。


「そ、相談です」

「分かったわ、お姉さんに話してみなさい」

「こちらにイジメ問題専門の方がおられると聞いたのですが」

「え? そんな人いたかしら、ホナミさんかしら?」

「私も学校でイジメられてるので、どうしたらいいかと相談に来ました」


 ホナミさん案件ね。でも問題無いわね私がスパっと解決してあげるわよ。


「イジメね、それは深刻な問題ね」

「は、はい」

「まず難しいかもしれないけど自分の意思表示をしなさい。どうせ黙っていてもエスカレートするだけよ」


 この意思表示はとても重要な事なのよ。


「は、はい」

「私の元いた世界は舐められたら終わりなのよ、断固たる意思表示はしないとダメ、黙っていても相手は調子に乗るだけよ」

「た、確かにそうですけど……」


 日本の女学生には厳しいかもね。レナちゃんなら全員ボコりにいくでしょうけどね、あの子は特別だから例にはならないわね。

 そうだ、お守りをあげれば勇気百倍ね? お姉さん優しいわね。


「なら、勇気の出るお守りをあげるわ」

「お守りですか?」

「そうよ、えーと鞄に入れてあったはずよ」


 私は鞄からお守りになるものを探す、少ししたら目的の物を見つける事が出来たわ。

 そうそう、これも必要ね。

 私はお守りを取り出し女学生に渡すわ。


「これよ受け取って、ベレッタ92のコンパクトよ使い方は分かるかしら?」


 私はベレッタ92コンパクトと予備マガジンを取り出し女学生に渡す。


「え、これ? ほ、本物ですか?」


 おかしなことを聞く子ね、モデルガンなんて渡してどうするのよ?


「当然じゃないの、玩具じゃお守りにならないじゃない」

「あー、あのえっと……」

「あ、そうそう。撃つ時は二発づつよ、一発だと生き残る可能性があるからね」


 ドタドタとうるさい足音が聞こえてきたわね。


「ちょ、ちょっとお嬢! それはダメですって!」


 私の御付きの黒服一号と二号が女学生から銃を回収する。

 ちょっとせっかく彼女のお守りを何で取り上げるのよ。


「何で回収するのよ、この子は今からイジメの主犯と戦うのよ! お守りは必要でしょ」

「この国じゃ洒落になりません!」

「お嬢、本国でもこんなお守り渡すのはおかしいですから」

「なによ、いいじゃない」


 まったく、うるさい二人ね。


「ごめんなさいね、この二人空気読めないのよ」

「いや、お嬢が常識無いだけですから!」

「そうですよ!」

「クス! いえ、大丈夫です」


 何故か陰鬱とした顔をしてた女学生は、少し吹っ切れた顔になってるわね。

 女学生は椅子から立つと。


「一度、自分でやめてもらうよう言ってみます」

「ええ、それはとても勇気のある行動よ、あなたに神の御加護が有らんことを」

「ありがとうございます」


 女学生は私に向かってお辞儀をする、礼儀正しい子ね。


「何かあればお姉さんか、この教会の誰かを頼りなさい。でもリアとマティアはダメよあの二人正直あまり役に立たないからね」

「はい、頑張ってみます」


 女学生はこの場を去っていったわね。

 ああいう子は応援したくなっちゃうわね。


 ――

 ――――


 この後も数名人が来たけど可もなく不可もなくその日が過ぎていったわ、女学生の事が気になるけど後はあの子次第。

 今日は私もレナちゃんのように迷える子羊を救う事が出来たわね、たまにはレナちゃんと交替してあげるのもいいかも、そう思う一日だったわ。


「それでは皆さん、アリーヴェデルチさようなら

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