初めての魔法2

「ウィル、ちょっといいかい」

「なんだ?もう授業は終わったのかクラウス」

「それならお茶にしましょうか」

美味しいお菓子を頂いたのよ、と告げる母にお菓子!と反応しかけたが、今はそれどころではない。

いきなり理由も告げず両親の元へ行こうと言われて、先生と共に両親のいるティールームに来たはいいが、私の頭の中は疑問符だらけだ。

ここに来る間、先生はずっと何かを考えている様子で、一言も話してはくれなかった。だから父にと母に今日の勉強は終わったのかい?と問いかけられても答えることもできず、曖昧に笑うしかできない。

だってさっきまで魔力量と属性を判断すると言われて、花に触れただけなのに。

そもそもその結果はどうなったの?と聞きたい。

もしかして魔力量が少ないとか、使える属性がないとか、落ちこぼれの結果が出たのだろうか。

それはそれで凹む・・・・・・。

憧れの魔法の世界なのに、ろくに魔法も使えないなんて意味が無いではないか、と思いながら何を言われるのだろうかと少し不安に思いながら隣に立つ先生を見つめれば、先生は父様の前に立ち大切な話がある、と言う。

大切な話し・・・・・・?それは、やはり、もしかしなくても私の魔力とかについてですよね。

父も先生の真剣な顔に何かを感じたのか、先程までと纏う空気が変わった。

「なんだ?どうした」

「アイリーンのことなんだが」


やっぱりキタ――――ッ!!


これはあれですね、落ちこぼれの烙印ですね。習ったところで、見込みがないくらい才能がないって言いたいんですね!だから今後のことを両親と相談しようってことですね!!

……別にいいんだ私は、自分の出来る範囲で頑張って生きてくって決めてるから。

高望みなんてしませんよ、夢も見ませんよ……。

などと自分へのダメージ削減の為に内心言い聞かせていれば、スッと目の前に先程使った箱を差し出しされた。

え?これどうしたらいいの?

「何だ、月光花がどうかしたのか?」

その言葉に、今更ながらに箱の中身が月光花というのだと知った。

ただそれを差し出されても、どうしたらいいのかわからず先生と箱に視線を行ったり来たりさせていれば、もう一度触ってごらん、と言う。

「え、あの、先生?」

いや、もう一度触らなくても結果は変わらないと思います。

あれか、あれですか、親バカ気味な両親にもきちんと現実を見せようという魂胆ですか?

意外と先生ドSですね……。

なんて思っていれば、さらに目の前に近付けられた。

しかもなんかその顔が怖い気がするのは気の所為でしょうか……?

「さっきと同じように、そっと触れてみてくれるかい?」

「は、はい」

いや、別に嫌だなんて言いませんけど。触れと言われたら触りますけど。

そう内心返しながら、先生の真剣な眼差しに促されるように手を伸ばして言われた通りそっと花に触れる。

そうすれば、やはり先程と同じように花の周りを淡い光が包み込む。

ほら、やっぱり結果は同じだよ……。

「!これは……っ」

「まぁ……っ!」

まるで雪のようにしんしんと、ラメのように輝きながら、それは花の周りに現れる。


ひらひら


ふわふわ


キラキラと輝く粒子は次第に増えていき、私の体全体を纏うかのように舞い落ちて、次第に溶けるように消えていった。

その光景をもっと見ていたかったな、と名残惜しく思いながらも花から手を離し、先程から静かな両親へと視線を向ければ何故かとても驚いた様子で私を見ていた。

「アーシャ……それは……」

「アーシャ、あなたもしかして……」

え?え?なに?なんですか??

才能のなさを嘆いている顔ではなく、ただ驚愕しているその顔に、私の方が混乱してしまう。

てっきり不甲斐ない結果に、残念な顔をさせてしまうと思っていた。それなのにどうしてそんな顔をするのかわからなくて、もしかして何かおかしなことでもしてしまったのかと焦ってしまう。


ど、どうすれば?!


助けを求めるように先生へと顔を向ければ、彼は何故か瞳を潤ませ感動した様子で何度も頷いている。

え?だからなんですか、その反応。

先程との落差が酷い。

あと私にもわかるように教えてほしい。

「あ、の……?」

先生?と問えば、ハッとした様子で彼は私の前に跪き視線を合わせてきた。

それに少し不安に思っていれば、先生はどこか興奮した口調でこう言った。


「アイリーン、君は星の守り人だよ」


・・・・・・はい?なんですかそれは?


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