七台

 大事に車を乗り続け、僕は五台目の車に乗っている。

 僕の車の運転席の斜め後ろ、つまり助手席の後ろにもう気配は無かった。

 それまでの間に結婚し、子供ができ、家を買った。

「二階に上がるときにさー。玄関に何か見える気がするんだよねー」

 ある時に子供が言った。

 新築のこの家に引っ越してきた時から、僕も気付いていた。

 ずっと車にいた気配が引っ越しと共に消えたと感じたのだ。

 それから玄関に気配を感じるようになった。

 今度は、僕を、家族を守るために玄関に移り住んでくれたのだろうと思っている。

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斜め後ろにいるものは 紫光なる輝きの幸せを @violet-of-purpure

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