二台
それから斜め後ろの席に気配を感じ始めた。
やっぱり偶然とはいえ心霊スポットに行ったのがまずかったのだろうか、と思いながらも特に問題は無かったから気にしていなかった。
そんなある日、赤信号で止まっていると、ふと横断歩道を渡っている背の小さいブレザーを着た女の子が目に入った。
この辺で見たことの無いブレザーに修学旅行かなんかの中学生――身長的には小学生かと思ったけれど旅行はないよなぁ――じゃないかと思う。
「ちっさいなぁ」
思わず口から漏れた声が聞こえたかのように小さい女の子が横断歩道で立ち止まって、こっちを見た。
にっこりと微笑むと嬉しそうに足取り軽く横断歩道を渡っていった。
一体何を見て微笑んだのだろう。
ふと斜め後ろの気配が強くなったような気がして、思わず斜め後ろを見てしまう。
やっぱり、そこには何もいなかった。
けれど、その日から危ないことが起きるようになった――気がする。
例えば、道路を走っていると赤信号を無視して、いきなりおっさんに飛び出された。
それまで普通に歩行者用の信号が青になるのを待っていたはずなのに僕の車が通りかかったら、急に道路に飛び出して来たのだ。
幸い反対車線に車がいなかったこともあって、とっさにかわすことで事故にはならなかった。
他にも猫を引きかけたり、ぶつけられそうになったりと散々だった。
「お祓いしてもらったらどうだ?」
最初のうちは、斜め後ろの気配や事故られそうになった話を笑っていたじいちゃんたちも危うく友人四人を巻き込んで事故を起しそうになった僕にそう言った。
さすがに斜め後ろの気配も度々起きる危険な状況に嫌気が差していた僕はその話に乗ることにした。
そうして神社でお祓いをして車から、斜め後ろに感じていた気配は綺麗さっぱり消えてなくなった。
現金なもので気配がなくなると、それはそれで寂しい気もした。
合わせたように危ないことも減った――代わりにと言ったら変かもしれないが、バックした時に電柱にこすって傷を付けてしまったり、ショッピングセンターの駐車場に止めておいたらフロントガラスにヒビが入ったりと、命に関わるようなことは無くても車に問題が起きるようになっていた。
そんなことを繰り返しているうちに、僕は転勤することになって住み慣れた場所から都会に引っ越した。
幸いなことに会社の補助があったから駐車場のあるアパートを借りて車ごと転勤した。
新しい場所でも、やっぱりちょっとした問題が車に起きていたけれど、この程度ならまあいいかと気にもしていなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます