斜め後ろにいるものは
紫光なる輝きの幸せを
一台
ある日、気が付いた。
車の運転席の斜め後ろ、つまり助手席の後ろに気配を感じる。
振り返ってもバックミラーを見ても何も無い。
僕は、いつからそんな気配を感じ始めたんだっけ。
最初の車は、貯金をはたいて買ったスリードア――左右のドアと荷台のドア――でブルーメタリックの綺麗な車だった。
初めての車が嬉しくて、一月に三千キロ以上走って車のディーラーさんに驚かれたりもした。
洗車だって絶対自分でやった。機械や他人任せで傷なんて付けさせない。
慣れてくると車は色々なことを教えてくれた。
例えば、車は重たいから走っているとタイヤの空気も少しずつ減っていく。
例えば、エンジンを動かすのに使うエンジンオイルと言うのがあって、走ればサラサラだったオイルがドロドロになるから走行距離で交換が必要だった。
普通は、ディーラーさんに点検に行ったりした時にチェックしてもらう。
だけど僕は車に乗っていると自然と分かったのだ。
あれ? なんだか車の走りがグニョグニョしているなぁと思ってガソリンスタンドで調べてもらうと空気が減っている。
あれ? なんだか車の走りがベタベタしているなぁと思ってディーラーさんに行くとエンジンオイルの交換時期だったり。
大事に乗り続けたけれど、じいちゃん、ばあちゃん達を乗せる機会が増えてスリードアは厳しくて――後ろのシートに座るのに前のシートを倒さないといけない――お別れしなければならなくなった。
二台目の車は、フォードアで後ろのドアが自動で開閉できるタイプで色はシルバーになった。
本当は一台目と同じメタリックブルーにしたかったのに、その車種にはカラーバリエーションが無かったのだ。
ちなみに他の車メーカーで新車を買って塗り替えた時の費用を聞くと
「新車を買って、そんな馬鹿なことをする人はいませんよ」
と、鼻で笑われたから、そのメーカーからは絶対に買わないと決めた。
その頃、社会人になっていた僕は、じいちゃん、ばあちゃんを乗せたり、後輩の悩み相談に車を走らせたりした。後輩を乗せて走った先が、偶然心霊スポットだったりした。
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