⑤チーター

クーデター

僕は飼育員で、あるフレンズを担当していた。

前担当者から、引き継いだ時に、こう言われた。


「結構クセ強いけど、辛抱強くやってね」


当初はどんなものか、想像もつかなかった。

けど...。


「来たわね、愚民」


足を組み、如何にもその喋り方から、女王様みたいな雰囲気だった。

彼女はキングチーター、という動物のフレンズだった。


「えっと...、今日から新しく担当になった...」


「ねぇ、喉乾いたから何か飲み物を頂戴」


初対面から、そんな要求された記憶がある。



僕は彼女の事が大嫌いで仕方が無かった。

何故ならば、僕が小学生の頃に遡る。


僕がいじめられ始めたのは小学3年の頃だ。


クラスの中に、偉そうな態度をとる女子がいた。

性格はまるっきり、キングチーターの様だった。


彼女は、僕の事を奴隷と呼んだ。

気の弱かった僕が真っ先に標的にされたのだ。


どういう事をされたか。

お金を取られたり、パシられたり、ノートを盗られたりされた。


僕は情けないことに、誰にも言えなかった。

第一、女子にそんなことされるなんて、ただでさえ目立ってしまえば、

笑われ者になってしまうと、考えたのだ。


それを良いことに彼女は、僕を...。


思い出すだけでも悔しくて悔しくて堪らない。

アイツに復讐してたまらなかった。

そしてチーターと接触する度、

かつての雪辱を晴らしたいという気持ちが沸々と心底から湧いてきたのだった。



2週間後、俺の我慢は直ぐに限界を迎えた。


「愚民、喉が渇いたわ。早く持って来なさいよ」


彼女は、ありがとうの一言も言わない。


「はい」


僕はその飲み物を手渡した。

この後、地獄が始まるとも知らずに。


睡眠薬入りの飲み物で彼女は眠りに落ちた。

その隙に準備をする。






「なっ、何よこれっ!!」


手と足を拘束されたチーターは声を上げた。


「これどういうつもりよ!!愚民!!」


彼女は今、裸足だ。


僕がいじめられた彼女とコイツは、なんの関係もない。

だけど、その面影が。

僕のトラウマを呼び起こす。


過去のアイツに、復讐を...。


「僕を散々...、奴隷扱いしやがって...」


「何の話を...」


「苦しめっ!!」


僕は過去と現在が交錯していた。

僕の目の前に映る彼女は、キングチーターなんかじゃない。

僕をいじめてきた、アイツの姿だった。


裸足の右足に、熱したアイロンを当てつけた。


「いやぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ゛!!!!!!」


シュー、と音を立てる。

彼女の皮膚が溶ける音だ。


苦悶の表情、ワッと大粒の涙を流す。


数十秒で、それを離した。


「あついあついあついあついあついあついあつい!!!!!!!」


彼女は足を上下に動かす。陸に上がった魚のようだ。


「ん゛ぁあああああッ!!!こ、この!!愚か者ッ!!」


「お前が愚か者だ、この悪魔の女王!!」


彼女の服を乱暴に引きはがし、胸部を露にさせ怒りを込めて、

アイロンを押し当てた。


「ああああああああああああああああッ!!!!!!!!!」


彼女の憎たらしいデカい脂肪の塊が焼ける。

嬉しくてたまらなかった。

彼女の女としての尊厳も破壊できる。嬉しいことこの上ない。


俺がアイロンを顔に近づけようとすると、


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」


必死に、泣きながら命乞いしてきた。


「ははは...、そうですか。女王様、死にたくないんですか。

でもね、僕の目的は貴女を失脚させることだ」


「なんでっ....」


僕は一度離れて、アイロンを置き、代わりに別の物を持ち出す。


「女王...、これで終わりです」


「いやっ!!じ、じにたくないっ...!!」


ナイフで、彼女の首元を切った。


「あ゛あ゛っ.....」


沢山の血がベッドに飛散した。

彼女は目を見開き涙を浮かべながら死んだ。


「ああ...、なんと哀れなんだ、女王様。こんな見苦しいお姿で...」


僕はやっと、過去の苦い思い出から決別することが出来た。


罪の意識なんてない。

どうせ捕まっても動物愛護法なんとかかだろう。


僕は達成感で満たされた。

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