④サーバル

石の部屋

「うみゃあ?」


気がつくと、見知らぬ密室の中にいた。


「どこ...、ここ?」


四方を石の壁で囲われ出口らしきものは見当たらない。


暫く動き回ったりして、何か無いか探ったが何も見つからない。

完全なる密室に閉じ込められてしまった。


前後の記憶もあまり覚えておらず、

なぜ自分がこのような目にあっているのかでさえも不明だ。


一人の寂しさ、そして一人の不安、空腹から平常心を保てなくなってきた。


「う...、おなかすいたな...」


今が昼なのか夜なのかさえもわからない。

だけど、無性に空腹だった。


すると、その声を聞き付けたかのように、

奥の方の天井から糸が垂れ下がってきた。

糸の先にはじゃぱりまんがくくりつけられていた。


「あっ!!」


サーバルは真っ先に向かっていった。

少し自分の身長はより高いところにじゃぱりまんはあった。

だが、このくらいであれば、自慢のジャンプで

届く。


サーバルはじゃぱりまんの近くまで行くと、脚を曲げてジャンプした。


その時、じゃぱりまんの糸が上に上がったのだ。


「え」


困惑したのもつかの間、


ゴンッ!


「うみゃあああああああっ!!!!!」


硬い石の壁に頭を思いっきりぶつけ、地面に倒れた。


「うー....!!痛いよおーっ!!!」


涙を浮かべ、頭を撫でながら転げ回るという、外から見れば意味不明な行動をした。


ふと、天井を見るとまた糸が垂れ下がっている。


彼女はおなかがすいている。

何かを食べたい。


「こ、こんどこそ...」


もう一度、ジャンプした。

しかし。


ゴンッ!


「うみゃああああああぁぁぁぁ....!!!」


またしてもダメだった。


それから、たったひとつのじゃぱりまん得るために。


ゴンッ!

ゴンッ!

ゴンッ!


幾度となく、石の天井に頭を打ち続けた。


地面に垂れているのは、彼女の涙と、血液。

頭から流血してもなお、ジャンプを繰り返した。


「痛いよぉ...っ...なんか汗が赤いよぉ...」


いつもにこやかだった彼女の顔はどんどん悲しいモノに変わって行った。


ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!、という壁に頭を打ち付ける音が石の部屋に響き続けた。


結果。


「あ...、あかぃ...、あっ...、あはは...」


天井と、彼女の服と、床は真っ赤になり、血の匂いが充満していた。


サーバルは仰向けになり、天井を見つめた。

頭がいたい。


「いま、なんじ?いま、なんがつ?ま...?」


何を言ってるのかでさえもわからなくなった。

憎らしい、じゃぱりまんが宙にゆらゆら揺れている。


「.....」


虚ろな目でそれを見つめた。


「...おなか、すいたなあ...」


声だけ響く石の部屋。

サーバルの意識は、段々と薄れて行った。


しかし、その時。


サーバルの耳に、何かが落ちる音が聞こえた。

起き上がって見ると、じゃぱりまんが落ちているではないか。


「...やった!!」


飢え死には免れる。

歓喜した瞬間だった。


急いでじゃぱりまんに寄って、大口を開け、

それを頬張った。


「....ぐっ」


口の中に突如として鉄の味と痛みが広がった。

加えていたじゃぱりまんを吐き出した半分。


「がはっ...、がはっ...」


口からは、赤い血が吐き出された。

口内で何かが刺さっている。


「あだっ...」


じゃぱりまんの中に“クギ”が入っていてそれが喉の奥に突き刺さってしまった。


サーバルはそのまま倒れた。









その様子をモニターで見ていた研究員はパソコンの書類にこうタイピングした。


『サーバルはフレンズ化しても学習能力がない。また、極度の空腹状態になると見境なく視界にある食べ物を警戒することなく食べてしまう』






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