第3話 当初の目的

「主任。そのご家族はどうなったのですか?」

「ああ……結局、娘さんは昏睡状態から回復しなかった」

「――今でも植物人間?」

「いや、冷凍保存に回ったよ。未来の医療に任せると……」

「――未来の医療……。そんな安直なことを選んだんですか……」

「未来の医療は、結局、研究者や科学者我々が頑張ることなのになぁ……

 我々はこの子達に昏睡状態の患者の記憶をそっくり移植して、代理として家族に提供する。

 家族はもちろん、患者本人も何ごともなく過ごせるんだ。

 それで昏睡状態から回復したら、この子が蓄積した記憶を本人に戻す。

 苦しい思いもしない素晴らしい計画なのに、なかなか理解されないモノだ」

「――それで、今回のロボットは……」

「奇跡的に破壊等もなくデータ回収に成功したよ。感情の起伏もあったようだ。

 ただ、もう少し搭載人工知能AIには人間的な感情がほしいね。

 たとえば、年頃の少女が意を決して告白したんだよ。それで振られたんだ。涙のひとつぐらい流せないと……」

「主任も詩的ですね」

「君はきっと気づかないだろうが、我々はこの子達の神にもなるかもしれないんだよ」

「神……そんな大それたものになるんですかね」

「この子達で蓄積したデータを元に、新しい人類AIを造り出そうとしているんだ。

 そう言ってもおかしくはないだろう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

天才になった私⁉ (旧題:私が変わった理由は?) 大月クマ @smurakam1978

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ