第2話 母の希望

「説明したはずです。このロボットはあなたの娘さんの全記憶を移植していると……」

「……」

「娘さんが昏睡状態でいる間、この子が変わりとなって学校生活を過ごす。

 それを、意識を取り戻した娘さんにフィードバックする。

 そうすれば、あの事故のことも記憶から消えて、何もなかったように今後の人生を歩むであろうと……」

「……」

昨日さくじつ、旦那さんが、亡くなられたことはお悔やみ申し上げます。

 ですが、あなたのお望み通り、娘さんと平凡な生活を続けていれば……」

「――必ず娘が意識を取り戻すというのですか……」

「えッ?」

「あなた達は、娘を利用して実験をしているだけじゃないですか!

 娘の脳に妙な機械を差し込んで!

 あのロボットがわたしの娘? 言葉通りに動いて停止するのが、私の娘ですか!」

「……」

「――もう持って帰ってください。そんなロボットガラクタは、私の娘ではありません!」

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