だから言ったじゃろ

 悲鳴を上げ逃げ回るフィリア。

 後を追うスケルトン。

 傍観するだけなら随分面白い喜劇のようだ。

「見てないで助けろー!」

 フィリアが絶叫する。

「えー」

 だって、めんどくさいんじゃもん。


 もとはと言えば、ナサリアが悪い。

 夜、現地に着くなり、私の制止も聞かずに、徘徊していた一体のスケルトンを何の躊躇も無く破壊した。

「一体くらい楽勝でしょ?」

 そう言って胸を張ったが……。

 偉そうな顔と、揺れるバインバインも腹が立つ。あとで殴る。が、それは置いておく。

 何故動いているのか、原因は何なのかそれを何の調査もせずに、バキッと骨だけ破壊してナサリアは終わった気になっていた。

 だが、破壊された骨をランタンで照らすと、何やらモヤモヤとしたものがそこに漂っていた。

「何じゃ、これ」

 よく見ると思念体のようなもの。

 気付くと周囲にもいくつも漂っている。

「あー、これ、まずいやつじゃ……」

 私は急いで距離を取ったが、状況の飲み込めない三人はそこに取り残された。

「なに? どうしたの?」

 フィリアが叫んだ。

 私は遠くから宙を指差す。

「あー、それは悪霊の一種じゃ。本体はそれ、そのモヤっとしたやつじゃ。スケルトンはそいつが動かしておるだけ……」

 私が言い終わるか終わらぬかというあたりで、地面から数体のスケルトンが現れた。

「あー」

 呆れ顔をする私。

 三人とも背後に寄って来るスケルトンに気付いていない。

「ほれ、うしろ……」

 振り返るフィリアとナサリア。

「いーーーーーやーーーーーー!」

 二人は絶叫した。

 気持ち悪いのが一体混じっていた。

 ああ、まだ微妙に肉が残ってるな。ゾンビとの中間点くらいか。

 それと視線が合ったものだから、たまらんだろう。

 二人は戦う事も忘れて逃げ始めた。


 お前ら、何しに来たんじゃ。


 おっさんは…。

 まあ、戦っておるな。

 何とかなるじゃろ。


 と、見ているだけで今に至る。だから言ったじゃろ。

 まあ、本体は悪霊だから、スケルトンを倒したところで根本的な解決にはならない。

 別の物を墓から出して動かせば良いのだから。

「どうしようかのう……」

 腕を組んで首を傾げる。

「見てないで何とかしろー!」

 また吼える、へっぽこエルフ。

「考えとるんじゃよ。叫んでばかりおらずに、自分達で何とかすればええじゃろ」

「何とかって……ナサリア、任せた」

 何かを思いついたように、フィリアはナサリアの前に出ると、思い切り横にステップを踏んだ。

 エルフ特有の軽い身のこなしと言えば聞こえはいいが、単に敵をナサリアに押し付けて逃げただけだった。

「ひどいやつじゃのう」

 全ての骨がナサリアを追う。

「え、なに? フィリア……って、いやーーーーーーーーーー」

 ナサリアの絶叫。

 うるさいのう。

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