ろくな事が無いぞ

 ナサリアが持ってきたのは、街外れの墓地に沸くというスケルトンの退治。

 夜になると、墓から出てきて徘徊するのだそうだ。

 スケルトン自体は生物の骨だということは誰でも知っている。

 まれに、生前の本人の残留思念や、自然界に浮遊する魔力の塊のようなものが動かす事もあるが、大抵は勝手に動き回るというのは誰かが操っているか、漂う霊魂が乗り移り勝手に動かしているかのいずれかだ。


 かく言う私も、悪魔らしく骨を操って遊んだ事がある。

 躍らせてみたり、雑用に使ったりと魔法の練習に意外と役立つのだ。

 我が家の近くにやってくる冒険者が邪魔で、ほれほれと動かして遊んで脅かしたこともある。脅かした程度で、怪我もさせておらんが。

 そうしたら、今度はスケルトン退治だ、と息巻いてやってきた。

 仕方が無いので、骨にボロ布着せ、拾ったティアラをかぶせ、鎌を持たせて歩かせてみたところ、連中は知識でしかその姿を知らんから「死者の王リッチだ!」と大騒ぎして逃げていった。

 ただのスケルトンなんじゃよ。てへ、って手を振って見送った。

 それっきり、その連中は来なくなったがの。


 話がそれた。

 私のようなイタズラであるならまだしも、強烈な悪意があった場合や、術者の魔力が強力であった場合は危険だ。

 霊魂が乗り移っていた場合でも、その怨念が強ければ強いほど厄介になる。

 まあ、この近辺でそんなモノに出会うとは思えない。

 ましてや、今のところ何の被害も出ていないというのだから、あまり深く考える必要もないかもしれない。

 ギルドの受付に依頼の手続きに行っていたナサリアが戻ってきた。

「こら!」

 胡坐をかいて床に座っていたら、ナサリアに見つかって怒られた。

「女の子がそんなお行儀の悪い格好しちゃ駄目でしょ!」

「待っとる間暇だったのだから、いいじゃろ。これくらい」

 私は口を尖らせて文句を言う。

「だめー!」

「ほんじゃあ、私専用の椅子でも持ってきてくれればいいんじゃ。こう……なんというか威厳のあるやつ。背もたれのあたりが、こうウネウネっとしてて…」

「なんじゃい、それ?」

 フィリアが呆れたような顔をする。

 分からんかのう、あの美的センスが……。

「それよりも、今日の夜に行くから、今のうちに休んでおきましょ」

 ナサリアが当然のように言うので、一同は固まった。

「いや、準備は?」

 フィリアの真面目ちゃんの虫が騒いだようだ。

「スケルトンだし、何とかなるでしょ」

 ヘラヘラと笑うナサリアを見て、フィリアと一緒に私もため息が出た。

 スケルトンと思って侮ると、ろくな事が無いぞ……と。


 ……と思っていた、嫌な予感が的中した。

「いーーーーーやーーーーーー!」

 その日の夜、フィリアとナサリアは絶叫していた。

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