2章:次の仕事に出発なのじゃ、といいたいところだが

プレートは貰ったものの

 まずは私の最初の仕事をこなして一泊した後、ギルドに戻ってきた一行。

 戻ってくるなり出迎えたギルド職員は、事務的な対応だった。

「『はい、了解しました。討伐証明は奥のカウンターで。依頼者の完了承認書類はこちらで預かります』じゃと! お疲れ様でした、とか言えんのか!」

 私はナサリアに怒りをぶちまけた。

 下級悪魔の事務的対応だってもう少しマシじゃぞ。

 おつかれーっす。みたいな?

 それはそれで、下級悪魔どもが何でそんなにフランクなのか知らんが。

 ギルドの職員は、冒険者を見下しておるのか? 余程、冒険者というのは地位が低いのだな。

「いつもあんなもんだよー」

 私が怒り狂っているのを見ても、フィリアは案外冷静だった。

「おぬしは腹が立たんのか?」

「立たないわけないでしょ。でも言っても無駄なんだからしょうがないじゃない」

 諦めている様子。

「そういう時にはだな」

「そういう時には?」

「こうやって手をギュっと握って…」

「握って?」

 私の真似をするフィリア。

「こう……、前に突き出す」

「あっはっは、殴っちゃうじゃん、それ」

「殴ればいいんじゃ! ああいうお高くとまった奴らには目にモノ見せてやらんと…」

「やってやりたいけどね~」

 堪えてたら、悪魔としてやっていけんぞ。

 こう、思ったことはズバーンと実力行使でだな……。それが悪魔というものじゃ。

 言う事を聞かねば殺す、くらいの威厳と、行動力が必要なの……。

 ブンブンと拳を突き出していたら、ナサリアの視線が痛かった。

「オ・ト・ナの対応ってやつよ」

「私がオトナじゃないと言うのか?」

 何だか腹が立ったので、反論してみる。普段だったら手や足が出て吹っ飛ばしておるところなんじゃがの。

「いや、オトナもなにも、つるぺたズドーンじゃないの」

「な………」

 一瞬固まってしもうた。

 隣で棒切れエルフが爆笑しておるが、お前も人のこと言えんのじゃぞ。

 しかしまあ、胸に無駄肉くっつけているだけで、偉そうな物言いをする女は許せんの。

 あとでちょいとお仕置きをしてやらねばならん。カエルにでもしてやるか。

 それとも私以下の年齢にしてやるか。


 ぶつぶつ文句を言いながらも、結局無愛想なギルド職員から認識プレートを受け取った。

「ほれ、これで私は自由の身じゃぞ」

 プレートをこれ見よがしに掲げる。

「いやいや、まだだよ。保護者としてそれは許可できないなぁ」

「胸に無駄肉つけてるだけで保護者とは、よく言ったもんじゃの」

 なぜか知らんが、棒切れも頷いておる。

「言っちゃえ言っちゃえ!」

 さらに煽っておる。

「誰のおかげで今回の任務、楽に終わったと思って居るのじゃ」

「クロちゃん?」

「違うじゃろ、クロを呼んだのは私じゃ!」

「そのアルデリーゼちゃんを冒険者にしたのは私」

 ナルホド。筋道は通っておる。

 って……。

「違うじゃろ!」

 ホントにこいつ人間か? かなり悪魔の素質あるぞ。

「さあ、次の依頼でも探そうか!」

 楽しそうに鼻歌を歌いながらナサリアは歩いて行った。

 はぁ……。やっぱり先行き不安じゃ。私、悪魔なんだがなぁ…。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る