大丈夫か? 私……。

 目の前にあるばいんばいんが邪魔な私は、軽く叩いて払いのける。

 フィリアはそれを見て、ニヤリと笑い、手を差し伸べた。

「気に入らないけど、今回の依頼だけよ……」

 そういうとそっぽを向いた。

「仕方ないの、今回だけは手伝ってやる。アルデリーゼじゃ、よろしくの」

 私はフィリアの手を握った。ちょっと力を入れて、……な。

「フィリアよ、よろし……いたたたた! つるぺたのくせに何でこんなに力があるのよ。」

 ふむ。もっともな疑問だが、中身は悪魔だからの。

 そう答えてはやらんが。

 本来の姿の私だって成長中なのだ。すぐにばいんばいんのないすぼでーになる……と思う…もう少し先にはなっておるはずじゃ。

 この仮の姿も怪しまれぬよう、成長できるように補正せねばならんの。

 その為には金が要りそうだし、多少は手伝ってやるか。


「で、これであと一人か?」

「あと、おっさんが来る」

 嫌そうにフィリアが答えた。何か問題でも有る奴なのか?

 臭いとか、女癖が悪いとか、頭が悪いとか、フィリアの好みから大きく外れた見た目とか、あるいはその全部か。

「随分と嫌そうではないか」

「ずぼらなのよ。時間にはルーズだし」

 おっと、予想外の答えではないか。

「腕はいいんだけど、何せやる気が無い。冒険者にとっては命に関わる事だからね」

「案外、真面目な理由だな」

「そりゃそうよ。命があってこそでしょ? ねえ、ナサリア」

 ナサリアも深く頷く。

「いや、それならなぜそんな奴と組む?」

「んー、他にいい人がいなかったんだよね」

 うん、まともな相手に組んでもらえないという事は、お前らに問題が有るという事だ。それを分かれ。悪魔の私にでも分かる事だぞ。

 ちょっと待てよ……、そんな奴らと組むことになった私は、実に不運としか言い様が無いではないか。

 やはりここは一回出直すか。

 無言で食事代をテーブルに置き、そそくさと店を出ようとした私だったが、ナサリアにがっしりと腕を掴まれた。

「はい、逃げないように。せっかくちょうどいい人を見つけたんだから」

 ニヤリと笑う笑顔が怖い。思わず顔を背けた。

 を? こいつは悪魔か?

 私はカモなのか?

 まてまて、人間にカモにされる私って何なのだ?

 恐る恐るナサリアの顔を見ると、笑顔……に見えるな。多分。

 冷や汗がどどっと出た。

「保護者なんだよ、私」

 薄ら笑いを浮かべるナサリア。フィリアは……見ないフリしている。

 怖い、怖い。人間怖い!

「いーやーだーーーーーーー!」

「あきらめな……」

 絶叫する私に、フィリアがぼそりと呟いた。

 あ、ひょっとして、こいつも捕まったクチか?

 すると問題があるのはナサリアか。

 そんな奴、保護者にしてしまった私、大丈夫か?

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