こやつ、阿呆だ

「それで、まさか二人で行くとは言うまい」

「あと二人居るよ!」

 どうだ、と言わんばかりに指を二本立ててみせた。

「本当は四人なんだけど、今回は事情があって…」

「集落が有るかもしれんというのに、四人では少なくないか?」

「一度に全部と戦う訳じゃないし、いっぱい居たら調査だけで済ませて、討伐は後の人に任せるって手もあるよ」

「ふむ」

 まあ、建設的な意見だ。

「で、あと二人というのは?」

「ああ、ギルドの掲示板にここに居るって書いてきたから、もうすぐ来るんじゃないかな」


 待つ間、食事が進む。

 ようやく私の空腹が収まってきた頃、店の扉を開けてエルフの女が入ってきた。

 そしてそのまま、ナサリアの横に歩み寄る。

「ああ、フィリア。早かったね」

「見つかったの?」

「うん」

 質問に即答するナサリア。

「で、どこに居る?」

 エルフの女、フィリアは周囲を見回している。それらしい人物でも探しているのだろう。

「あの、……私の目の前に」

「いやいや、冗談は止してくれ。こんなちびっ子が魔法使いとして役に立つ訳が無いだろう?」

 いきり立つフィリア。まあ、疑問はもっともだが、言われる側としては腹が立つ。もとより温厚な性格のはずが無い私にとっては、喧嘩を売られたも同然である。

「やって来るなり、いきなりちびっ子呼ばわりは失礼ではないか? それに役立たずとは聞き捨てならんの!」

「……ナサリア、この娘、怪しいぞ」

 フィリアは私をいきなり睨み付けると、そう言ってのけた。

(さすがはエルフ…。独自の嗅覚で私が悪魔だと勘づいたか?)

 私は警戒した。

 ここでバレては元も子もない。

「この娘、何でこんな喋り方が変なんだ? それに偉そうだし、もしかして……」

「もしかして?」

 ナサリアが首を傾げる。今までナサリアは私の言葉について何も言っていなかったが、変なのか?

「もしかしてこいつ、魔法使いのくせに『馬鹿』なんじゃないか?」

(こやつ、只の阿呆だ……)

 カチンときた。言うに事欠き上級悪魔の私に馬鹿などと。

「馬鹿とはなんじゃ、この貧乳棒切れエルフが」

「なにおぅ? あんたみたいなツルペタが何言ってるのよ」

「私は将来、ばいんばいんのないすぼでーになるのじゃ!お主みたいにお粗末な完成形にはならんわ」

「おそま……」

 言いかけて、フィリアは絶句した。

 怒りで頭に血が上ったのだろう。

「ナサリア、このガキ捨ててきて!」

「いや、ちょっとまって…」

「何じゃと? 元はと言えばお前が悪いのじゃ。だが、要らんと言うなら好きにさせてもらう」

「いや、依頼がこなせなく…」

「勝手にすればいい」

「いや、待ってってば!」

 ナサリアが制止に割って入る。

 勢いで私の顔にナサリアの胸が当たった。

「貧乳エルフよ、お主の事は気に入らんが、目の前にあるこのばいんばいんがもっと気に入らん…」

一瞬、フィリアの動きが止まる。

「ぬ、奇遇だな、そこは同意だ……」

二人でナサリアの胸を睨む。

「なんでよー!」

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