第22話 楽しむ時は妥協しちゃいけない
風呂から上がり、俺はそのまま屋敷の1階にある『売店』へとやって来た。
そこは屋敷内の一部屋をコンビニのような造りに改装されており、売られている商品も様々だが、コンビニと違う点は、弁当や菓子パンなどの食料品が置いていない代わりに電化製品や日用雑貨が充実しているところだ。
そしていかにも
いつもの俺なら溜め息混じりに
俺の買い物カゴの中には既にボックスティッシュが入っている。
これだけならまだ「日用品を買いに来た」で通るが、流石にアダルトDVDまで買い物カゴに入れたら言い訳のしようが無い。
そんな物を買ってナニをするのかと言われれば、『使用用途』など一つしか無いからだ。
そんな物など無くてもティッシュさえあれば目的は果たせるのではあるが、目的達成に至るまでの満足度が違う。
「どうしたものか………」
「どうするの?買わないの?」
「うわぁっ!?」
突然背後から声をかけられ、思わず飛び退く。
声の正体は
マズイ、一番見られたくない奴に見られてしまった。
「あ~いいから、いいから、落ち着いて。別に変な勘繰りしないから」
「いや、俺は別に何も………」
「ストップ。あのね、
「こういう事ってね、どうしてもイケない事のようなイメージがあるけど、生きている以上必要な行為なのよ。だからと言って大っぴらにやるものでも無いけど、逆に全くやらないのも不健康なの。別に誰にも言いふらしたりしないから、早いとこ好きなの選んで買ってっちゃいなさい。なんなら他の
意外にも今の
どうやらこの『性欲処理』の件に関しては本当に真剣に考えてくれているようだ。
「そ、そうか………わかった。それじゃあ」
俺はDVDを一本選び、カゴの中に入れてレジへ持って行こうとする。
すると………
「………
「え?」
「下手だなぁ
急に
「性欲って奴はね、出す時には思いっきり出さなきゃダメなんだ。変に我慢なんてしようとすると、すぐにまた不満と一緒に蓄積される。ただでさえ君は自制心が強すぎるんだ、数日に一度の解放の時まで自分を押さえつけてちゃ体に良くないわよ」
「そ、そうかな」
「そんな適当に選んだDVDなんかで満足できるはずがないわ。そうねぇ………私のオススメはこれかな」
そう言って
「そして極上の一本を観るのに、いつも通りの自分の右手じゃあ味気無いでしょ。コレに付属のローションをたっぷりかけて、思いっきり溜まってるモノを吐き出してあげなさい。コレは私のオゴリよ」
オススメDVDに続き、『まるで本物のような感触』と書かれたシリコン製のホールを手渡してきた。
こういう道具が世の中に存在する事は知っていたが、今まで使った事は一度も無い。
「あ、ありがとう………」
「いいのよ。これで
俺は
売店を出る時にもう一度
それにしても今日の
俺と一つしか歳が違わないはずなのに、まるでたくさんの人生経験を積んできた40過ぎのオッサンのような貫禄を感じた。
そして部屋に戻った俺は、中が透けて見えない黒いビニール袋から購入した
「今朝、出したばかりだからな………しばらくは大丈夫か」
いずれ使う日が来る時のため、クローゼットの中にしまった。
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