第21話 男だもの、仕方がない

 4月11日、午前5時48分。


 は突然やって来た。

 いつも目覚める午前6時よりも少しだけ早く目が覚める。

 朝方に見た夢の内容で「やばい!」と本能的に感じたのだが、目覚めた時には遅かった。

 恐る恐るパンツの中を確認すると、俺の出したによってベトベトの状態だった………。


「うわぁ………やっちまった………」


 この『兎毬トマリ王国』に来て11日。

 最後に『自分で出した』日からだと、約2週間と少し。

 今さらながら、俺も18歳の若い男なのだと実感した。

 今日が交番勤務の非番の日で良かった。

 俺はベトベトのパンツをビニール袋に入れ、着替え一式とタオルを持って大浴場へと向かった。

 普段は朝は自室のシャワーだけで済ませるのだが、大浴場の脱衣場には洗濯機もあるし、今日は非番なのだし朝風呂でも浴びてさっぱりリフレッシュしよう。




 大浴場の入口前で、このタイミングでは特に会いたくない連中に遭遇した。

 紗羽サワ杏奈アンナ寧音ネネの女子達だ。


「お、カケヤンやん!こんな時間に珍しいな」


「あ、ああ、おはよう。今日は非番だから、朝からのんびり湯に浸かろうと思ってな」


「そうなんですね、お疲れ様です。私達は毎朝これくらいの時間にここのお風呂を利用しているんです」


「そうか。じゃあそっちものんびりしてくるといい。じゃあまた後で」


 会話を早々に切り上げ、俺は男湯のほうへ入ってゆく。

 その背後に自然な流れで杏奈アンナも一緒に入って来る。


「こら。何でお前がついて来る?お前は女湯あっちだろうが!!」


「えー?別にええやん。ウチは気にせぇへんで?」


「俺が気にするんだよっ!!」


「それはそうと………なんやちょっと生臭い匂いがするな?」


 杏奈アンナの鼻がヒクヒクと反応する。


「あ、ああ、そうか?昨夜はちょっと寝汗をかいてな。汗臭かったかな」


「これ汗の匂いなん?カケヤン、食生活悪いんとちゃうか」


「余計なお世話だ!だからこれから汗を流してくるんだろうが!!お前はとっとと女湯へ行け!!」


「へーい」


 杏奈アンナが確実に女湯の暖簾の向こうへ消えるのを確認してから男湯の入口の鍵を閉める。

 持参したベトベトのパンツを洗濯機に放り込み、大浴場で体を洗うのだった。

 一通り体を洗い終え、湯船でゆったりしようとしたタイミングで、隣の女湯から杏奈アンナの声が聞こえてきた。


「おやぁ~?サワリンのおっぱい、少し大きなったんとちゃうかぁ~?ネネっちは元から大きいけど、相変わらず綺麗なピンク色やなぁ~」


「ちょっ、やめてよ!!」


杏奈アンナちゃん!!」


 今の杏奈アンナのセクハラ発言は間違いなく俺へ向けたものだ。

 わざわざ『誰の』『何が』『どうだ』という、説明っぽい言い方をしていたからな。

 そうとわかってはいるのに、悔しいが想像して俺の大事な部分が大きくなってしまった。

 だが、問題なのは今の杏奈アンナのイタズラだけじゃない事に気づく。

 ここにいる限り今後も女の子に囲まれている状況が続くわけで、つまりそれだけ『性的刺激』が強い環境という事だ。

 また2週間近くも禁欲などしていたら、また今日のように暴発してしまうかもしれないのだ。

 そうならないためにも、定期的に『処理』しておかないと。

 これじゃあ流乃ルノの事をどうこう言う資格は無いな………。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る