第31話 宝の入り船

「バババッ、バッバ-ン!」

みんな江戸の花火に見惚れている、文左としてはこれが船が着いた事を、知らせる合図だった。

 早速笑顔で高松河内がやってきました。

「おお紀文どの、でかしたようやったのう」

「はい皆さん方のおかげさまで、仕事をやり遂げました私は今とても嬉しいのです!」

 お由利の方三十五歳も来ていました、そしてその胸には源六若君を抱いていました。

 源六君はもう満三歳である、(後の八代将軍の徳川吉宗である)可愛い盛りですね。

「わぁい文左衛門、ご苦労チャマです !」

「ほんに賢い和子様で、ござりますねぇ」

 紀文は若君の頭を、そっと優しく撫でる。すると横から、お由利の方が言った。

「文左どの、そなたの申していた江戸行きの件ですが、藩主に言えば将軍に頼んでおくと言ってましたよ本当に良かったですね!」

 一呼吸置いてから、また続けて言った。

「江戸に行かれても、紀州藩は源六の事をお頼みしましたよ、あっそれとあなたは江戸に行っていったい何をなさるのですか?」

お紋の方(由利の方)は紀文の、よく見るとまだあどけない顔をじっと見て言った。

「はい頼り無いですがお任せを、それと私は江戸に行って金儲けをします、今は商売が面白くて面白くて仕方有りませんので!」

由利の方は 何故か紀文の事が、気になって仕方なかったので御座います。

「それで、あなたどんな御商売しますの?」

「へえ先ずは米屋、そして材木商ですかね熊野屋で習ったので」

「そうですか、でも金の亡者にはならないでね! 人の欲とは本当に 尽きませんよ思えばきりが有りませんから……」

「金の亡者にはなりませんよ、金儲けに飽きた時は即止めますよ! 」

「そうならば、良いのですがねぇ?」

「金は天下の回りもの、金の情報を掴んでどばっと儲けてまた使います、近江商人のごとく牛のよだれのごとく儲けるも、一手ですがとてもじゃ無いが私の性格には合いませんので御座います!」

「ほほほっでは江戸で、生来儲けて今以上頑張って下さいね」

はっぱをかけられた、やる気出て来ました。乗せるのが上手いお方さまですね。

「はい士魂商才にてまず私が江戸へ行き、きたる源六君のまず私が先駆けとなる所存に御座りまする!」

由利の方は それを聞き、安心したようだ。

「そうですか差し出がましい事言いましたねぇ、もう言うことは有りませんよあなたの此からの活躍ぶりが楽しみですねぇ!」

 言うと由利の方は、付き添い人である警護の役人に守られ立ち去る。

この頃二代藩主徳川光貞と、次の藩主たらんとする綱教の仲は険悪であったと噂されている、そして三男頼職は綱教と仲が良かったらしい、権力は特に複雑で御座いますね。

由利の方にとって、不安なのは藩主光貞はかなり年をとっているのと、まだ源六君は幼いということも一因ではあったのです。

根来衆は藩主光貞派であったのは、言うまでも有りません。この頃大方の武士は商人を見下していましたが、お由利の方は商人に一目置いていました逸れで紀文に目を掛けていたのです、矢張りただ者では有りません。

何を思ったのか文左衛門は、再び船に戻って女装して出て来ました。頭には大坂で買った女物のカツラを付けています。

そして何食わぬ顔で後ろからそっとかよに近ずき両手でかよに目隠しをしました。

「かよちゃん!」

その時かよは男の声に反応し無意識に、文左衛門を得意の合気で投げ飛ばしたのです。

「わあっいたったたったぁ!」

喚き声やっと気が付く。

「あっその声、文左衛門さん?」

「びっくりさそうと逆にこっちがビックリしましたアイタタッ!」

痛いのか文左衛門は手で腰を押さえています、油断大敵ですねぇ其れにしてもかよはあれから、合気技凄く上達していました。

「あらごめんねぇ文左衛門さん、痛かった

何その女のカッコは、変だわねえ?」

合点がいったようですそして改めて高松かよが、そっと紀文に寄り添い言いました。

「文左衛門どの、この度お勤めたいへんご苦労さまでございました!」

 かよが、文左衛門にねぎらいを言った。

「おっとそうだ、江戸土産の越後屋で買った反物だどうかな?」

「えっこのあたしに、本当にまあ嬉しい!」

何だ逸れくらいのことかと思われるかも知れない、 言うは易くするは難しいのである誰も後講釈は言えても、その時に果たして実行出来るであろうか逸れは疑問である、まして命掛かれば誰も事を成すことば難しい、まさにコロンブスの卵であると思います。

 男紀文の名が上がる、一代分限と今も尚その名を誇る、紀ノ国屋文左衛門の青春伝で御座いました下手な文章でごめんなさいね。

この時掴んだ金は、合わせて二十七万両で紀文江戸行きの夢膨らむ。(この頃の一両は現在令和元年の約十万円に相当するかな?)

 ちなみに越後屋三井高利一代で築いた財産は七万両を少し上と云われている。どうも長らくお疲れさんでした脱税ばかりでした。

時は流れ動く変化する、誰も時の流れには勝てない、誰も時を止める事など出来ないのである。

ならば時の流れを的確に読み掴み、その時の流れに乗るベし。

歴史を自国の都合のよいように改ざんする国もあるが、嘘の歴史を本当にあったがごとく言う、やがてその国は信用を無しそし国の歴史狂って来る、見て御座る宇宙の神は見て御座る、笑うがよい嘲るがよい然るに、宇宙の神は世の真実でもあるのです。

紀文は江戸時代を駆け抜けた、いたずれ令和時代を駆け抜ける者が続き出てくるだろうと思う。

時を掛ける少年が現れるのだ、逸れはあなたかもしれません 出でよ! 今日本はあなたを必要としている世界が待っている。

皆さんも紀文のように大成功して、あなたの人生(青春)を思うさまに突っ走ってください。あまり儲け過ぎると紀文のように金への執着心が消えますが……。

「紀文」を読んだ、だからといって紀文の活躍した時代ではない。

時代のニ-ズがあるのです。今何をしたら良いのか? 現在社会の人々のニーズを掴み自分の出来そうな事をやってると、不思議に協力者が現れて来ます。

出来ない言い訳を考えるのでなく、どうすれば出来るのかを考える此から何が必要に成るのかを考えて努力し大成功して下さい。

たとえば思いをめぐらし、これを大きくしたら小さくしたら、また違う素材で作ったら逆に不純物を入れたらと考え、失敗恐れずに何でもやってみることで発明出来ますよ。

運とは時のそれぞれ歴史でしょうか?

今後幾百年人々に、語り継がれるのであれば第二第三の、紀文が現れるだろう事を信じて筆を置く。

 快男児「紀ノ国屋文左衛門」青春伝。 これをもちまして劇終です。

 (追伸)

「後は、江戸にて米屋と材木商をやりますおいら江戸の町が大好きに成りました。皆さんどうも長らくありがとう御座いました」

付け加えると私(紀文)は元禄元年(一六八八年)の九月に、江戸八丁堀材木町三丁目で念願の材木問屋を開く予定で御座います。

「アッそれと江戸で結婚します、吉原の花魁お蝶を見受けした事になっていますが、色々事情ありましてかよが早く江戸に来るためにと、吉原に頼み込みまして形式上ではお蝶と改名し、早く江戸に来れた事情があります」


あとがき

この小説に於いて長々と、教訓じみた事を書いてしまったことをお詫びします。最後までお読みくださりアリガトウございました。






















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

快男児「紀ノ国屋文左衛門」青春伝 桜井正 @7289118

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ