第30話 帰り船、紀州の和歌浦へ

凡天丸は朝日浴びて皆の待つ紀州へと梶を切った。堺湊を過ぎるとだんじり祭りで有名な、岸和田に来た。

「若旦那、儂ら紀州に帰ったら一体どうなるのでしょうかの?」

 訓練した若者達十一人が、実に不安で情けない顔して聞いてきた。

「儂が江戸に行くと言ったので、心配して聞いているのか?」

文左衛門は、続けて言う。

「お前達は根来同心が面倒見てくれる、侍にして呉れるらしいぞ」

「それはほんまか、嬉しいのう」

「そのために、訓練して来た」

「あの時に皆に言ってたら、もっと残る者いたと思うがのう」

「あれで良いのや、今の武士は辛いことも多くあるでな」

「そしたらこの凡天丸も、紀州藩の船となるのかな?」

「うん船と船員は一体で、藩が面倒みてくれるだろう、だから紀ノ国屋の海運業務も終わりて事だ」

「そしたら和歌浦にある、紀文の魚屋はどうしますのですか?」

「長年務めてくれた残った従業員に、店名変えて後を任せようかと思う!」

「ほな若旦那はどうしますので?」

少し空を見上げてから、淡々と言った。

「紀ノ国屋文左衛門、その名どうりやな」

「合点いきません分かりまへんな、陸に上がったカッパやおまへんのか?」

「紀州は木の国陸に上がって、木を抑えに当面山元を歩き回ろうと思ってます!」

「材木商売の準備ですか、わかりました!」

皆が納得するように、考えていました。物事にこだわらない性格でしたので、それで皆は納得しました。

立つ鳥後を濁さずです、人に憎まれたら後が怖いですからね。信長ももう少し人の心を知り、気配りしていればあんな最後はなかったかも知れません、紀文は人について本で勉強していました。

 船は貝塚を過ぎ岬町だ、もう少しで紀州に着く懐かしい故郷に。

「あのう、船は何処へ着けます」

「うんそやなぁ和歌浦港に、着けてくれるかのう!」

「えっ出発した下津では、ないのですか?」

「本来の我が家は和歌浦にあるんだ、担保にした店も本屋敷もまだ人手に渡って無い!」

紀文心より良かったと、思っていました。

「へい、すみません分かりました」

「あっ和歌浦に着ける前に、友が島に寄ってくれるか?」

高垣亀十郎が、不思議そうな顔して文左衛門を見ている、紀文は大人のようでまだ子供のようなところがある。(友が島に今度の儲けの一部分を埋めて、秘密の宝島にしようと思ったのです)

「紀文の若旦那、友が島に着きましたよ!」

「根来衆よ、三人ほど来てくれ」

「はい若旦那、私共に何なりと」

「今から遊びに、友が島に上陸する少し手伝って欲しい事がある」

と言って友が島に上陸する、そして用事が終わったのか、ニコニコして凡天丸に帰って来た。子供の頃の 夢を叶えたようです。青春燃えるが如きである。

「若旦那お帰り、どうでした?」

「おう友が島の漁師に無理言うて釣り道具一式と、餌を貰うてきたでぇ!」

と言って早速船上から釣り糸を垂れる、ググッと引きがきて釣り上げたら、見事な真鯛が釣れた。

「おっこれは大きいぞ、今日の晩飯のおかずや!」

真鯛が、ピチピチ跳ねている。

「はい嬉しいですね、ご馳走になります今から料理しますよ!」

それを見ていた皆も笑顔で、本当に楽しそうでした。

これを読む皆さんと同じく紀文には、若さという大いなる財産があったのです、頑張って下さい。

もしあの時ああしていたら、こうしていたらと後で思うが、それは決断の結果そうなったのです。

人生より良くする為、結果残せるように良い勘を磨きましょう。

逆境必ずしも逆境に非ず、順境必ずしも順境に非ずですよね、世の中の目に見えぬ運の荒波を、渡る時手探りで勘を頼りで、渡らねばならない一歩間違えば、人生の落伍者になりますから、本当に怖いですよねぇ、人生一度やり直しはきかないのですifはないのだ。

「さぁ和歌浦に出発だ、錨を揚げよ帆をはれ!」

西洋の有名な海賊が、日本の島に宝を隠してその海賊が、捕まったのかどうかわからずに、日本の島のどこかに眠っているとの、伝説は残っている。よく店を建て替える為土地を掘ったら、小判が出てきたと言った話などもある。

「紀文の若旦那、今度は何ですかこの前は湯のみとにらめっこしてましたが、今日は台上でいろはカルタとにらめっこですか?」

三人ほどが椅子に坐る紀文を囲んでその様子をジッと見ている。

「うん今度は予知能力の研究をしている、何とか裏返したカルタの表を当てられないかと思ってね」

「若旦那それは無理ですよ、超能力でもない限りねぇ!」

「江戸へ行った時、商品相場の動きを予知しなければ、ならなくなるから超能力を得ようと思って」

紀文お茶をのみながら言った。

「カルタとにらめっこして、予知能力が得られますかね?」

「なるかならぬか、やってみなければ解らんからのうハハハッ」

あまりに熱心にしてるので、皆はそれ以上何も言えなかった。

この頃まだ紀文のような、冒険心の強い若者もいましたが、しだいにやる気ない無気力な者が増えて来ました。

景気の良い次の元禄バブル時代に突入しようとしてました時。

いったい何が原因でしょうか夢をみない探求心の無い若者が増えて、忍者の研究開発も低迷するのでございます。

いつの世も若者が、次の世を担うべき原動力となるのです。

若者と言っても順送りで、気がつけばすでに年寄りになってますが、まあ時の過ぎゆくのは早く何事も思った時がやる吉日でしよう先延ばしはしない事と同じ成り。

 貞享三年(霜月)十一月二十日に和歌浦漁港のふ頭に船は着いた。

 夕暮れ時花火を海側の空に向けて、派手に打ち上げた。

(ドドドン、バリバリ、ヒューン)

































































































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