第28話 盗賊団の動き

孫子曰わく(第十七篇)算多きは勝ち、算少なきは敗れる。

つまり開戦に先立ち、彼我の戦力の非転と作戦計画の立案検討が多く為された側が、とうぜん勝利するので有る。世の中の動き出来事を把握し的確な判断をして、それによる影響を考えそして今後どうなるか考えて、行動する事が大事なのです。

兆しが有るのです。ウイルスによる病気など、不可抗力なモノも有りますが、自分が延びようとする時覆おうにして有ります。邪魔する者が現れるのです。嫌な奴らです。

紀文は船室に、皆を集めて言った。

「今晩忍者崩れの盗賊が、襲って来るとの情報が入った。それに対応する為覚え書きを、渡すので町で用意してきて欲しい、以上」

「要った銭、後で貰えますでしょうか?」

「当然だ帰ったら高垣に貰ってくれ、時間がない急ぐので今すぐに動いて欲しい!」

 半分ずつ交代で町にでる、船内問屋の荷降ろしで混雑していた。

 堂島の問屋三人が、挨拶に来た淀屋・和泉屋・天満屋・の旦那衆代表で淀屋重当が礼を述べる。

「紀ノ国屋さん、このたび私共をお選び下され有りがとうござります、良い事御願いしますよ」

「淀屋さん丁寧な挨拶恐れ入ります、あなた様もお元気で気をつけて下さいましねぇ、特に金品有れば昨今は物騒です、悪者達多くあちこちから狙われますでぇ」

「はい私共はそれを見越して、特に腕の立つ用心棒を雇っていますので!」

三々拍子を打って別れる、皆も既に町より凡天丸に戻っていた。

「おおい、船を少し沖へ出そ」

 暗くなったので、衝突の危険から船をあまり大きく動かせない。

 周りに目を凝らすと、他所より来た船がひしめいている。

「此では船出せん、仕方ないな」

「若旦那、用意した品物どうします? 分かりませんのです」

「今から皆に説明しようと思う」

紀文は並べた品を手に取り、使い方や工作方法を教えて廻った。

「まず茶色の着物に、着替えてもらおう船の色と同化するのだ!」

「ごみ箱の木の葢、どうします」

「飛んで来る矢弾防ぐ盾だ、外側に一尺格鉄板六枚張り付けよ」

 (一尺)は約三十センチである。

「唐辛子と小麦粉はどうします」

「紙に包んで目潰しにする、尚まんだらけなどの薬草を混ぜて、頭を朦朧とさせる! まぁいわば幻術だなぁ」

文左衛門周りをせわしなく動き回る、多分動きながら考えていると思います、兎に角時間がない。

「菱の実は撒くと、足の裏に刺さるので敵の動き止めですね」

「竿竹は、加工しますか?」

「先ず竹槍、後矢弾除けにする」

皆の質問攻めに、応対する。

「あの小鍋は、被るのですね」

言って鍋に紐付けて、すでに被っている。

「あっ忘れていました、百姓から買った案山子(かかし)どうしますのですか?」

案山子を持って首を捻ってる。

「それは船のあちこちに、細い縄で吊り下げて置いてくれ、見せ掛けで注意を逸らす自らの身代わりにする、人少ないんでのう!」

皆の質問にてきぱきと答え、たまに手にとっては指図している。

「能面は解るな! 矢尻よけや」

「気つけろ、忍者は矢先に毒塗る当たらず触らずだ、心せよ!」

「へい分かりました今すぐに、皆に申し送り作業に掛かります!」

(くれ六つ)夕方六時になった。

 (敵を知り己を知れば百戦危うからず)と、心にいい含める紀文だ。

この度は甲賀と根来忍者の戦いだ。といっても文左衛門には忍者道具などはありません、全て市販品の間に合わせの道具です。

この日呑んでいた湯のみ茶碗に何気なく念を送ってみた、少し動いた気がした船が波で傾いて動いたのか? 印を結び雑念を払いもう一度試してみたら、おっ少しだがやっぱり動いた。

そうだ気だけでなく、エイと声掛けて気合いをかけてみよう気合いに力籠もるよう、腹の底から力出してやってみよう。

「ええいっ」

手もかざしてやってみた、すると湯のみ茶碗のお茶が振れ、外にこぼれる。そして茶碗がパカッと真っ二つに縦に割れた。

(おしっこれはいけるぞ、これで出来なかった太極神拳の真空切りに一歩近ずいた! )

後はこの念力をもっと強力にしなければならぬなぁ、逸れから幾度も幾度も精神を集中して、気の済むまで何度も練習をしました。

「そろそろ来るぞ、皆持ち場に付いて相手来るのを待ち構えよ!」

勿論敵と味方を区別するため合い言葉を決めています、例えば花と松のように関連の無い言葉ですが、重要で命に関わる事で、これも根来忍者の秘伝に有ります。勿論同士打ちを無くす為でもある。

 皆は息をころして待っていた。

湊には灯台の登楼に火が灯り、潮風が肌に冷たく感じる。皆は農機具の草刈りの鎌を、腰にぶら下げている、狭い場所に適してます。

「ウウ寒いなぁたまりません!」

空を見上げると曇ってきて、今にも雨が降って来そうだった、そのせいか濃い霧が立ちこめる。

「この霧のせいで、火縄銃は使えなくなったなあ有り難い!」

まあ常識的な、考えですよね。

「でも対戦相手も、見えにくくなりますよねぇ」

今回は不意に海賊に襲われた時よりも余裕があるし、対策や用意もしているが全くに面白くない。

「おおい皆提灯に火を付けよ、上がって来る者は皆敵だと思え!」

 船の内と外が明るくなり、不夜城のごとく浮かぶ。

 ヒュー、カツカツカと矢が刺さる。ダダタン火縄銃の音もする。

「おおい皆来たぞぉ! 身をかがめよ」

 集団の盾の内より、文左衛門の声する。

 暗闇に目を凝らすと、六隻の平舟が凡天丸を目指している。

「チイ感ずかれたたか、お頭このまま引き上げますか?」

「馬鹿言え、此処まで来て帰れるか相手はたかが、素人の船乗りやひ弱い商人衆だ!」

紀文は望遠鏡を取り出して、様子を見てみると一隻に五人が乗り込んで、皆黒ずくめで背に刀を差している。

 六隻ならば三十人である、凡天丸の十六人の倍近い甲賀者だ。

「それっ、者共心して掛かれ!」

「おおうっ、それっいくぞ!」

 先陣の三隻が漕ぎ手残し、寄せ手十二人で攻め掛かってきた。

 (カカツカツカ)縄梯子が左右舷に、掛けられる無気味に静かだ。

「おい野郎共、火は使うな燃えて沈むと、千両箱も海の底だ!」

「へい、がってん」

 忍びは見えぬから強いのだ、黒い衣装も明るいと逆に目立った。

 かえって野良着のような茶色っぽい方が目立たずに、良い場合がある。

忍者達は遂に凡天丸を小舟で取り巻いた、登ろうと縄ばしごかけた時上から何やら落ちて来る、目が刺すように痛んだ、唐辛子の粉が次々と頭上に落下したのだ。

 目が痛い頭がくらくらするそれにもめげず次々登る、けれど今度は何か頭上から、何か黒い物が落ちて来た。

「うわあぁっ!」

 それは四方に重りを付けた、あみである、被せられれば今度は海に落下する者は、そのまま浮かび上ってこれない者が多く出た。

「ううん何してる、相手はたかが素人の町人共だ皆で掛かれ!」

総攻めに挑んで来た、守りは人数が少なく大方は素人衆で、守っていたので今度は乗り込まれる。

(ヒュゥカッカッカ、ダダン!)

 再び矢弾が飛んで来る盾をかざし身を守るので、登る者押さえ込めずに、とうとう上がって来た。

「皆怪我無いか、いよいよ敵が登って来たぞ気をつけよ!」

 皆盾をかざし、緊張して身構えている。盾(タテ)は西洋では多く使われましたが、日本ではあまり使用されていなかったと思う。




















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