第26話 海賊とバトル大阪で大儲け

皆おろおろしている、この平和な時代に海賊は珍しく、九鬼水軍か熊野水軍の残党だと思った。

少し脱線して言うなれば 九鬼水軍とは信長の水軍と活躍した当時世界に、世界に先駆けて鉄張りの船を持っていたので有名です。

逸れを作ったのは第一次木津川沖海戦にて信長水軍は、毛利連合水軍と雑賀水軍に第二次会戦の二年前に、毛利連合水軍に完璧に負けたからだ。

ヨーロッパで鉄を造船に用いるようになるのは、十七世紀以降で造船の常識を乗り越えて世界初の鉄装甲軍艦を 信長の命令により作って持っていたのである、信長の頭は常識を越えた天才であったのだろう。

少しその事を詳しく言うなれば、一分(約三ミリ)の鉄板で覆われた装甲軍艦六隻と安宅大船一隻は、 天正六年六月二十六日九鬼嘉隆と滝川一益の指揮のもと熊野浦より出て七月上旬に紀州雑賀沖で、まずは信長に反抗的であった紀州の雑賀衆の船百隻を手始めに大砲や長めの鉄砲で叩きのめした。

次いで摂津の第二次木津川沖戦、天正六年(一五七八年)十一月毛利水軍六百隻を相手に難なく勝利した、此にて本願寺派毛利連合水軍は敗れた。

当時毛利水軍は九百隻の船を支配していたが、その内直属の三分の二が九鬼水軍の持つ大砲により、沈没させられ兵船の大方を失う残っているのは協力水軍の村上海賊などだ。

資源に乏しい日本の国で、なにぶん鉄は貴重品であったし薄い鉄板は、海水に極めて弱く朽ちるも早かったのです。

九鬼水軍は徳川の時代には、配置換えで陸が領土となり海より陸に上がったカッパ同然と成る、船も持てませんでした逸れで鉄船の技術も無くなり、船の技術も後退しましたここに云う九鬼水軍は残った残党である海賊は名残でありそれに正規の九鬼水軍の旗もないようですそして熊野の海賊と合併していた。

しかし言い伝えにより、その大砲の怖さは何代にも渡って伝承されていました。

各舟にはどくろの旗がひらめいている。

 一隻に二十人ほど乗っているようだ、総勢百人だろう。こちらはたったの十六人それは海賊達には解るまい。

 右の船が凡天丸に寄せ、縄梯子を掛けて乗り込もうとしている。

 逸れを見た文左は、波切り丸の鞘をはらって、甲板を駆ける。

 敵が矢射掛けてくる、けれど風が強いので矢尻があらぬ方向へと 飛んで行く敵の船が後少し近づいたら、危ないかも知れない。

敵もさるもの 火矢は、積み荷が燃えるのを警戒し放ってこない。

「ダダッダッダダン!」

一斉に火縄銃を撃ってきた。矢では効果無しと思ったのか。それでも見えない人は当たらない。凡天丸には乗っている船員が少ない。

「カッ、カッ、カッ、ガシャッ」

船の上部に、縄梯子が掛かる。

五・六人が登って来たが、紀文は敵を峰打ちで次々と海に落とす。

船に掛けられた縄梯子を切り落とし、それで敵の乗船を防いだ。

「ああこのままだと、防ぎ切れんやられる」

海賊はこれ見よがしに、拡声器で連絡を取り始めた。

「そうだ船沈めぬ程度にいたぶったろうか、あの船の梶を目指して此方の船突っ込んで遣ろうか!」

船の梶やられたら航行出来なくなり、お手上げ万事窮すです。

「では先頭の船突っ込ませますので、頭合図宜しく御願いします」

「おう心得た儂が様子見て、合図する皆はそれまで待機せよ!」

大きな声だ近いので拡声器無しでも、十分に聞こえて来ます、凡天丸方は気が気ではありませんそれに海賊の方が足が早いのです。

「ああ若旦那、どどうします?」

声が裏返って、もう大慌てだ。

「根来衆はいるか、あの江戸で買った花火使おう」

「はい分かりました、花火を大砲の代わりに打つのですね!」

その前に紀文は大弓で、打とうとしている船に鏑矢(カブラヤ)を放った、距離を測る為でもある。

(ピッピッヒユウゥゥン)

「若旦那どうですか、飛距離のほうは?」

海賊は変な音したので、首傾げてワイワイ騒いでいるようだ。

「よし花火打ち上げ木筒用意、そうだ急げ先ず左側の船を狙え!」

「この花火玉、以外と重たいな」

「文句言わず、早よやれよ!」

筒に花火玉入れ、二人掛かりでやっとこさ狙い定め火を入れた。

(どどどん)横殴りに火を噴く。

 近かいので、まともに当たる。

 (ばっばばん)花火で船燃えた。

「おぅ新型の大砲か、よく見ると葵の旗が有る徳川の軍船か?」

「お頭(かしら)やばいです、大砲です今すぐに逃げましょう!」

また残りの船めがけて、鏑矢(かぶらや)が飛んで来る。先ほどとは違ってもう、パニック状態です。

(ピッピッヒュゥゥン)恐怖の音。

「おお徳川の軍船相手では、とても儂らには勝ち目はないのう!」

「しかし頭あの奈良屋茂左衛門の野郎、素人で簡単とぬかしゃがって話がぜんぜん違ったよな!」

「三十六計、逃げるにしかずだ」

法螺貝鳴り響き燃え沈んだ船を残し、尻尾まいて逃げて行く。

「どこどこドン、ヨイサー、ホイサー、ドッコイサーノサー! 」

「おお助かった! 有り難い人数では此方が、完全に負けていた」

 遠乗り航法に戻し、凡天丸は帆をはらめ全走で沖へ出た。

「♪海はヨオー海はヨオー、どでっかい海はヨオー俺の好きな黒潮の海だ、沖で塩吹く鯨の群れがよー、ドドドンと逆巻く黒潮の流れがよー、海の男の俺を呼んでいるエンヤ-サアノセイ、ソオリア-よおいのよい♪」

「若旦那鼻歌ですか、本調子が出て来ましたねぇ!」

「おおさなぁ当面の、危機が去ったんでなぁワッハッハッハ!」

船を走らせながらも、文左衛門は考えた(思った)あの花火に、念力の解決策が有りそうだな外に放つ力か、合気は内攻の力が主だから念力と繋がらない、とすれば拳法(カンフゥ)は攻撃力だから念力と会うかも知れないな、特に太極神拳の真空切りの極意が的を得ているかな。

文左衛門は、皆の飯の支度をしながら念力の事に思い巡らせていた、考えるより思えという師匠の言葉をかみしめながら。

「おーい皆握り飯出来たぞ、おかずは塩鮭や旨いぞ早よ食べよ!」

紀文が盆に載せ運んで来た。

「すみません若旦那、何しても上手いすね」

「おお長いこと、自炊してたんでな」

本当はこのところ寒く冷えるので、船内にある温かい釜どで御飯焚きながら、暖をとっていたというところでした。冬の寒さで積荷の魚も傷まずに助かっています。

 食事も済んで文左衛門は、望遠鏡であちこちと覗き見していました。

「白浜の眼鏡岩が見える、そろそろ右に舵きり大坂へ行くで!」

 船は日ノ御碕過ぎ、紀伊水道を進みでて摂津湊へと急いだ。

 十一月十四日、船は大坂の堂島川河口に着く、此処で錨降ろす。

近くの安治川河口堰の船番所で、入津手続きして利用金払った。

 此処でも紀州藩御用達船と云うことで、上陸許可おりるのも早く紀州御三家船の、特別優遇措置を受けました。

「若旦那、私は街の様子を観て来ます」

「そうならば高垣よ、根来衆を連れて行け」

「はい逸れは心強い、是非御願いします」

 一行は早速に堂島や、雑候場魚市の方に偵察に向かう(一刻)二時間、ほどして連れ立って帰って来ました。

文左衛門は凡天丸の船上で身体が鈍らぬようにと、太極拳(カンフゥ)の型稽古をしていました、勿論念力の研究も兼ねていました。

「どうだった? 市場の状況は」

「若旦那、あんたの目は高こうおました」

「それで大坂の人々は、どうやった?」

「時化が長引き町では大水溢れ、はやり病流行し生物はまったく売れてませんね」

そう大坂の町はやり病で、パニックに近かったそれに巷の町医者はおおはやりで有りました。

「そしたら塩物や、干物は売れるな!」

「もちろん市場・問屋には品切れ状態で在庫全く無しで御座います」

「では儂も顔だそか、根来の衆は此から凡天丸の噂流してくれ!」

「へい、分かりました今すぐに行動します」

 それぞれが町に、散らばった。

 十一月十五日、朝から江戸越後屋で仕立てた羽織りを着て、高垣亀十郎と根来衆一人を連れて、雑候場魚市に出向いた。

瑞賢覚え書きを見る (商いは踏み出し大事成り、悪いと手違いになるなり)かよっしゃほたら気を引き締めて商いにあたろうかな。

 行くと予め噂を流した、効果も有り皆の注目を集めた。

「私四代目・淀屋の岡本重当ですが、紀伊国屋さんですか?」

 当時淀屋は、大坂米市場を作った、日本一の大商人だった。

「へい紀ノ国屋で、ございます」

「そうでございますか、私共待ってましたんや、あちらにお席ご用意していますのでどうぞ!」

「丁寧に恐れ入ります、ほな行こか!」

市場の離れに部屋が有り、旦那衆が三人にこやかに座っている。

「紀ノ国屋さん私共に江戸からの積荷、売って貰えませんやろか」

「それは値段次第ですね、いくら出して貰えますかねえ?」

 みんなめいめい顔見合わす。

「品物見せて貰わんと何とも」

「松前藩は上物の、鮭と干物です

気に要らないなら兵庫にでも」

「いくらなら、売って頂けますのか? 値段を言ってくだされ」

「二十万両です、此から見に行って決めて下さいますかね、ほんに船は近くに止めていますから!」

「ほな今から、行きましょうか」

紀文は凡天丸に案内し、、旦那衆に聞くと納得即決で決まる、実はこの時文左衛門は、慣れぬ読心術を使ったのであった。

「大坂は主に銀使い、私は金の小判が欲しい、宜しいですか?」

「はい品物と引き換えで、取引は今日からでも、よろしおますな」

「へい、待ってますよってに」

 堂島川河口凡天丸は、各自問屋の平舟や人足で、ごった返した。

紀文は大儲けしましたが何故かピンと来ませんでした、少し金の感覚が麻痺していたのかも知れませんねぇ。使いなれぬ金はどうもしっくりこなくて馴染みにくいものです。

「高垣どの、ちょっと来てくれ」

「若旦那何か、何かご用命ですか」

「紀州で、両替商知らんか?」

「私は蜜柑方しか、知りません」

紀州は大坂や江戸に比べると金融は全く発展していません、のでそういった事は皆紀州藩の役所に頼っていました。

「困った、千両箱山積で不安や」

「あのう若旦那ちょっと、気になる事が有りまして……」



 




























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