第25話 江戸より大坂へ行く

冷や汗ものであった、馬庭念流の兜割りの迎撃をよく止められたものである、思い浮かべるといつもとかっての違う感覚だった、あれは本当に止まったのだ、そして受けられたのは合気と超能力(念動力)の重ね技だったのかも、知れないという思い至ったのである。

紀文はこの時自覚して無かったが、とっさに合気術最高峰の技である合気不動金縛りの術を相手に掛けていたのだ、それが気合いなのかどうかは解らないのだが、能力は本人が気付かず思ってもいない内に出ている能力も有るのです、逸れは偶然ではなく必然的。

超能力と云うと、子供騙しのように思われるが、親に異変があった時に、むしの知らせや夢枕に立つなどの経験があったなど、よく聞きますがあれも一種の、テレパスのようなものでないでしょうかすると普通の人であっても、多少能力が有るのかも知れませんね逸れは全く気ずかないだけです?……。

自分の折れた木刀を手にとって見たら重さが相手の使用した物より軽かった、木刀の材質が違っていたのだ例えば樫の木と栗の木のように、儂の持っていたのは栗のやわい木刀に塗料を塗った物だったのか……。

(ウウム謀られたな、いったい誰が今日の事を仕組んだのか?)

事のしだいを知らない文左衛門は相手が名前知ってたので不思議に思う、いったいこれは何であったのかと幾度も首をかしげた。

世の中には、いろんな人がいる人と自分は違うのである。それぞれ考え方も信じる正義も違う、悪には悪の論理があるのです。

自分が正しいと言ったところで、通じないのです。思いにそぐわない人もいるのでそれを認めて対処しなければならない、でなければ正義であるはずの者がやられるのです。

後に紀文が江戸に行った時に紀ノ国屋文左衛門と、奈良屋茂左衛門が何かにつけて反目して対抗バトルをしますが、この時期のこういった経緯があったからで御座います。

奈良屋茂左衛門は若い頃に、車力(大八車引いて運送屋)などして泣かず飛ばずで、金には相当苦労したらしく異常に執着心があったので御座います、金とは怖いですねぇ特に親子や親戚に金貸したらやったと思って下さい、その金は一生手元に戻って来ません。

とにかく相手が悪かった腐れ縁ですかね此より以降華やかな元禄時代になりますが、紀ノ国屋文左衛門と奈良屋茂左衛門は、江戸に於いて宿命的なライバル関係となります。兎に角凡天丸の船止めの間に、嵐で痛んだ所を江戸の船大工に修理させていました。凡天丸はもとは西洋船なので、かなり丈夫に出来ていたので少し手を加えただけで治りました。

十一月十日、帰り船だ江戸佃島湊からゆっくりと船出す、太陽光がまぶしい風は北西へ吹いている波は少し高めである。皆の顔も行くときと違って明るく笑顔である。

空は青く海も青いその海原を眺めていると何故か船が空を飛んでいるような妙な、感覚になるのだ塩風が肌にまとわりとても気持ちが良い。カモメたちが空に舞っている。

「オオイみんな、張り切って行こうぜ!」

「オオオッ!!」

近場乗りで景色眺め進む、途中品川の船番所で役人が荷を改めるが、紀州藩御用達船と云う事、で簡単な手続きで許可がおりた。

「富士は日本一、いつ見ても絵に描いたような美しい山やな!」

船の舳先が波を蹴って、悠然と進む。

「おお日本一高い山、いつかみんなで登ってみたいものやなぁまたいつか来れるかな?」

「うっ寒いのう其れにしても今日はえらい冷えるな、特に潮風が冷たいのう」

「ハイでもこの寒さで魚が傷まないのが、何より助かってます」

どうも天の理が、味方しているようでありますなぁ。大仕事時には、運も一つの才能と言えますかねぇ。紀文が景気付けに和太鼓出して来て叩き出した。腹にずしんとしみる。

「そりゃぁドドントッドン!」

「紀文の若旦那は、和太鼓好きやねんなぁ」

「♪ああのるか反るかの、イチロク勝負♪」

(ドドント、ドンドン ドコドコドン!)

  そうこうしているうちに船は遠州灘過ぎ伊勢の大王埼辺りで、夕日沈み海は真っ赤に染まる。息を呑むほど綺麗で見惚れていた。

紀文を見ると今度は洋式のテエブルの上に湯のみを置いて、にらめっこをしている息を止めているのか顔が真っ赤である、念力の練習のようだが皆逸れを知らないので、皆不思議な顔して様子を見ていた。

「若旦那! 大丈夫ですかい?」

「何ともないそろそろ沖へ船廻そう、危ないから近場から遠乗りで行くで」

突然に物見櫓の一人が、大声で叫ぶ。

「島陰から変な船が、こちらに向かって来てますで! 三隻です」

(グワァン、ドンドコドンドコドコドンドン!)

船は五百石船ぐらいと少し小ぶりだが、海賊らしく赤と黄色のスマートで派手な装いである、ドラや太鼓や鐘を鳴らし、オールで漕ぎながら此方に向かって来る。

兎に角船足が早いこれはくろうとのオール漕ぎである、手が揃っている声も揃っている並みの漕ぎ手では無い、物見役が足にきて震えながらおどおどしている。

(ヨイショ、ヨイショ、ヨイショ)

まず此方の戦う気力を削ぐ戦略だ、追い込み漁のつもりかも知れない、兎に角服装行動ともにど派手であった。

紀文は望遠鏡を取り出し、その様子を冷静に見ていました。

「若旦那百足船です、あれはこの辺の海賊ですかね?」

「はて今時この辺に、海賊おったかなぁ?」

凡天丸進行方向に先ず一隻、後は左右に一隻ずつ張り付かれた。

あっという間出来事だった近いので行動も見て取れる、何やら幅の広い青竜刀をに振り回しこれ見よがしに、鐘や太鼓に合わせ踊っているように見える幸いにして向こうからは、こちら方は見えないようだ船の高さがあるからだ勿論こちら方が高いのである。

「わああっ、三方囲まれました!」























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