四十四曲目:Prince『Gold』

 お久しぶりです。

 最近、Twitterの洋楽界隈で『#90年代洋楽ベストソング100』というランキング企画がおこなわれておりまして、この手の催しが大好物な私は例にもれずこれにも参加せんとずっと投票内容を吟味しておりました。

 90年代と言えば、アンダーグラウンドな音楽が一気に花開いた大オルタナ時代。80年代の煌びやかさとは正反対な泥臭くてノイジーなロックがそこかしこから出ていて、そのどれもが鬼気迫る力強さを見せてくれました。それに並行してヒップホップも伸びに伸び、いわゆる名盤とされるものもたくさん輩出されておりました。

 私個人としては70年代こそポピュラー音楽の黄金期と思っているのですが、90年代も侮れません。ランキングに入れたい曲を絞り出していたら、1度目の選出では投票可能な30曲をはるかに超える200曲に……(笑)絞るにしてもみな素晴らしい楽曲ばかりでとても苦労しましたね。

 さて、そんな珠玉のナンバーが集う90年代洋楽シーンですが、1位だけは最初から決まっていました。それが今回ご紹介するPrinceの『Gold』です。

 NirvanaやOasisを差し置いてなぜ……と思う方は騙されたと思って一度聴いてみてください。絶対にこれが1位だとわかってくれるはずです。わからなかった方はわかるまで繰り返し聴いてください。

 私がこの曲を選んだ理由は主に2つ。ひとつ目は『曲単体としての完成度の高さ』、ふたつ目は『アルバム内での立ち位置』です。

 この楽曲、かの殿下の作品の中でも群を抜いて荘厳で煌びやかなサウンドをしています。90年代と言う荒んだ音が好まれた時代に逆行するような、神々しさすら感じられるキーボードの音、どしりとかまえたミドルテンポ、のびやかに歌う殿下の声……どれをとっても一級品。ポジティブ一辺倒にならず、時代の空気も反映させた殿下らしい歌詞もひかるものがあります。

 そして、この曲は殿下の17作目『The Gold Experience』のラスト──大トリにあたる楽曲になります。NPGオペレーターに案内され様々な体験を積んだリスナー。時には恋愛に明け暮れ、時には激しい憎悪を抱き……そうしてたどり着いた終着点。この曲はその立ち位置を完璧に演じています。それどころか、前の楽曲がすべてこの1曲を引き立てるために存在すると言い切ってしまえるほど、イントロが始まった瞬間の幸福は計り知れないものがあります。

 殿下の代表作は『Purple Rain』や『Sign O The Times』などが取り上げられるばかりであまり話題になりません。幻の名盤などという2つ名こそついているものの、殿下の作品で真っ先に名前を挙げる人はおそらくごく少数でしょう。

 しかし、そんな状況に甘んじていて良い作品ではありません。このアルバムひいては『Gold』こそ、90年代に燦然と君臨する音楽なのですから。

 今なお絶大な支持を受ける殿下が残した至高の芸術品。是非一度聴いてみてください。







 ちなみに、最近ようやく再発されたので、CDを買いたいという方は今がチャンスですよ。

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にわか音楽オタクが語る私的名曲選 22世紀の精神異常者 @seag01500319

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