第35話 Answer

前回の続き。


「女の子じゃないの!?」

「うん。」


ははあ、なるほどね。美戸みとは納得した。ボーイッシュなリンだが、実は可愛いモノが好きで自分の部屋にはいくつかぬいぐるみが置かれているのを美戸は知っている。だが、まさか男より女の子の方が好きだとは思わなかったのであった。


そして、渡辺有子わたなべ ゆうこなら美戸も知っている。学年一、いや学校一の呼び声も高い美少女として有名だ。入学してから一週間で5人の男子生徒に告白されたとか、必ず毎週一人には告白されるとか、そのもてっぷりは伝説に近いものがあった。


最も、有子自身は良く言えば至って大人しく内気、はっきり言うと陰気で根暗な性格で、自分がモテるのを決して喜んではいないというのも有名だった。実際、彼氏どころか同性の友人もいないという話なのである。


そんな有子に告白するのは、もはや度胸試しか賭けのネタ、罰ゲームに近いものがあった。


男勝りのリンがどんな男の子が好きなのか、興味があっただけで仲をとりもってあげようとか、応援しようとか、そういうことは全く考えていなかった美戸は解答を得たことに満足し、この一件にはもう関心はなくなった。


それにしても、幸太くんは私以外の女の子には全く関心がないような素振りをしているくせに、可愛い女の子はちゃんと把握しているんじゃん。


美戸の心に不快でめらめらした感情が湧き上がって、美戸は幸太とつないでいる手に力を込めた。幸太の手がメキメキと音を立てて変形していく。


「痛い、痛い! 美戸先輩、何をするんですか? 痛いです、止めて。。。」


幸太にしてみれば、女の子の顔が可愛いとかいうことにあまり関心はない。何より母のさちより綺麗な女性を見たことがないのだから、それ以外の女性は大体みな一緒なのである。有子のことは、たまたま顔と名前が一致する数少ないクラスメイトのリンがしつこくつきまとっている女の子だから覚えたというだけのことだ。とんだとばっちりの幸太少年なのでありました。

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