何か

原文ママ

第1話

俺達の一家には霊感がある。これは俺の親父が見た話。じいさんが危篤になった。もう意識は戻らない。ちょっと前にばあさんもなくなった。病院の廊下で待っていると、ふと「俺もじいさんが死ぬ年になったのか」と感傷に浸っていた。子供のころにひい祖父さんがなくなり、俺も子供ができて、じいさんがなくなる。そのうち、俺にも孫ができて父さんがなくなり、ひ孫ができて・・・

その時、病室から物音が聞こえた。なかにはいると。意識がなくなっていたはずのじいさんが、目を見開いて真上に手を伸ばしていた。その数分後、じいさんは息を引き取った。その葬式で母さんが義父さんを、死んだ義母さんが迎えに来たのよと言っていた。俺はそれを無表情で聞いていた。わかっていたからだ、じいさんが手を伸ばしていたのはばあさんではないと。何故なら、あの時のじいさんの顔は恐怖にひきつっていた。しかし、その「何か」に向かって必死にてを伸ばしていた。その後父さんから「ひい祖父さんが死ぬときもああだった」と伝えられた。その「何か」が何だったのか今でもわからない。そう、俺の番が来るまで。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

何か 原文ママ @seinarukana

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る