殻割り。

床から天井まで妙に白い部屋に鏡のような金属でできた椅子があるだけの薄暗い部屋に少女と医者は二人きり。


助けたい

助けたい助けたい助けたい


人生は地獄だ


生きる事は地獄だ


命は地獄だ


助けてあげたい


私は…


「君のことを助けてあげる」


少女はキラキラと輝く笑顔で喜ぶ。

「お母さんも、お父さんも?」

医者は少し考える素振りをみせ答える。


「あぁ、もちろん 」

娘が救われるんだ、ゴミのような親でなければ喜ぶに決まっている。


あぁ、は、は、はやくぅ救ってあげたいよぉ。

「ふっ…ふふぅ…ほらぁ、おいでぇ」

いい、いいよぉ


ほらほら


私が助けてあげるんだぁ、愉快だ気持ちいい


少女は金属製の椅子に座らせられ手足を縛られる。


地獄から

人生から

命から


私は助けるんだ

こんなにいい事をしていると脳が蕩けてしまいそうなほど清々しく気持ちいい。


カチャリ


カチャリ


カチャリ



ステンレス製の先が極薄なヘラを2枚が音を立てる。


カチャリ


嗚呼、この子、愛されている


愛されなかった私




この子、救われる


私、救われない



カチャリ



少女の頭をベルト固定する。

痛みに叫ぶ少女の声は耳には入らない。


感じるのは静寂の中に微かに響く革製のベルトが伸びる音。


ギチチチチ


静寂の中、私は少女の頭蓋骨の隙間にヘラを差し込む。


「こんなに狭い殻に閉じ込められて…」


人間の脳は植物の種の様だ


小さな殻に入れられた挙句、地獄にうまれ苦しみ死んでゆく


私1人では全員は助けられない


だから毎日幼い子を、助けている



植物との違いは、殻を破れないこと


人間なんてそんなものだ


カツン


カツン


前頭骨


カツン


嗚呼!!頭頂骨!!


カツン


こつこつこつずがいことぅ!!!


カツン


カツン


いい!!


気持ちいい!!


彼女の頭蓋骨を叩く木槌から伝わる衝撃が私の全身を駆け巡る度に、絶頂以上の快楽を感じる。


人助けなんてものじゃない、自らは地獄に留まりながら他人を地獄から救っている


本人だけでなく両親まで救う


これが快楽となり私の中で踊る


飛び散る赤い液は血ではないっ!

医学的に考えてもっ!

これはっ!

救われた人間の出すっ!


神!液!


救われたっ!

人間が喜びに満ち溢れた時に出すものっ!


嗚呼!!!

「すごいすごいすごい」


カツンカツン


ガツンガチュン


グチュン ギャチュン


………


「ふ、ぅぅぁぁぁふぅぅぅ……」


医者は最後で最高の絶頂を迎えた。


赤い駅にまみれた果実は割れ種子の本体が露出している。




医者は種子を丁寧に取り出し、薬液と一緒に瓶に入れ少女の家の前に置いた…




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白黒の美 R音 @rion731

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