児戯の庭
(ちくしょうあの餓鬼どもめ・・・・俺の触手片全部食いやがった)
結局彼は触手片をあの集団に明け渡すことになってしまい、今は新しい触手片を探すためにダンジョン内を徘徊していた。
(しかもオイ!オールジンベー!お前らだけなんで食ってんですかねぇ!)
自分は食べられなかった腹いせにオールとジンベーを責めるが、二匹はどこ吹く風といった様子で全く意に介さない。
しばらくは先ほどと同じくらいの大きさの触手片を探すためにソナーで探していった。
「よーしこいつでいいだろう」と目星をつけ終えた彼は、早速その触手片がいる場所へ向かうためにオールに指示を出した。
「ほんじゃたのんまっせ」「ホー!」
そうしてオールに標的の近くまで運ばせ、少し離れた場所で着地し、触手片をおびき寄せるために特定の音波を出し始めた。
音波を出すこと数分、一匹の触手片がもぞもぞと体を動かしながらある地点を行ったり来たりをしていた。
(うーむ・・・ミルクワームよりもはるかに気持ち悪いよな。やっぱり色が完全に肉の色だからか?)
と触手片の気味の悪さについての意味を考えていたがすぐにやめて、銃を構え急所を射抜いた。
急所を射抜かれた触手片は、しばらくの間バタバタとのたうち回っていたが、やがて力尽きピクリとも動かなくなった。
死んだことを確認した彼は、触手片に近づき手早く下処理を施し、棒を突き刺し焼き始めた。
ジュウジュウと肉汁を滴らせて焼けてゆく様を見ながら「あー焼けてく焼けてく・・・たまらねぇぜ!」と声をあげながら焼けてゆく様を見守った。
中までしっかり焼けたことを確認した彼は、ナイフで肉をケバブのように切り取り口の中に詰め込んだ。
口いっぱいに頬張った肉を幸せそうにモゴモゴと咀嚼する。牛に似た触感の肉を咀嚼しながら彼は思う。やはり肉というものは最高だ、と。
しかもとっても量が多い。だからたっぷり堪能できる!そうして彼はゆっくりと時間をかけて触手片をもぐもぐむしゃむしゃ口の中に放り込んでいった。
1時間ほど時間をかけて触手片を完食した彼は、今度は甘いものが食べたいなぁと思った。
肉で脂っこいというものもあるが、もともと触手片自体にも味がついていたのでそのせいじゃね?と彼は思った。
なんにせよ今度はミルクワームをおびき寄せるために、音波で近くにいるワームを誘導していった。
そして触手片と同じように急所を射抜き、火を焚いて鉄板を取りだしその上にミルクワームの薄皮を置き焼いていった。
ある程度暖めたら今度はワームの体液を皮に塗りたくり、スライスしたバナナをのせ、その上にチョコソースをかけさらにフレークをまぶしてくるくると巻いた。
「ははは・・・、ミルクワームの簡単クレープだ」
出来立てのクレープを掲げながらそんなことを呟き、ガブリとクレープにかぶり付いた。
「うん、うん。これだよ!初日にしたかったのは。それなのにあのガキ共ときたら・・・」と愚痴りながらパクパクと食べてゆく。
食べ終わったらまた薄皮を切り出し鉄板で焼き、今度は具材を別のものに変えて食べた。
「うめうめ」そう言って優人は一心不乱にクレープを作っては食い、作っては食った。
甘いものを食べたいとは言ったが、流石に全部一気食いは飽きが来るというもの。
三分の一程平らげた彼は残りを袋にしまい、また手頃な獲物を探しに飛び立った。
しばらく飛んでいると、大田と如月が口論している光景が見えた。
(何やってんだあいつら・・・)
何となく気になったので、空中で静止したまま事のなり行きを出歯亀することにした。
『お前なんかよりも俺の方が強いんだぞ!』『なんだと!だったら今ここでどっちが強いか勝負して決め-----』(あほくさ!バカじゃねコイツら)
会話の内容があまりにも稚拙でしょうもなく、もうどっか行ってしまおうかと考えていたら大田と如月が互いに距離をあけ、得物を構え合いにらみ合いだしたではないか。
(え?まじでやんの?嘘でしょ!沸点低すぎない?)と二人のあまりの幼稚さに驚愕していた。
(いや流石に周りが止めるよね?止め『大田さんそんなやつヤッちまえ!ヤッちまえ!』『大田さんに逆らうとか正気なんですか?はぁ~』『雄介~そんなやつぶちのめしちゃいなさい!』『頑張ってください~』(しまった!バカしかいない!)
あまりにも馬鹿馬鹿しすぎて、ついそんな感想を漏らしてしまった。
頭上のジンべーは飽きてきたらしく、優人の頭をひれでぺしぺしと叩いた。モグドンはしがみ付いて相変わらず微動だにしない。白玉は落ちつかない様子でもぞもぞしている。オールはそんな連中を呆れ顔で眺めながら、空中で静止していた。
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