出会い

 茉里は、まだ世の中のことも大して知らない箱入り娘だったが、その性格の謙虚さもあって、物事の吸収は早かった。黒い瞳に背中まで届くきれいな黒髪は、どこからか色気さえ感じさせる。体は華奢で、美人とはいえないが、気品が漂っているためか、底知れない魅力をたたえていた。

 茉里は、林を抜けて森に入り、誰かがいつも通っているのか、いつの間にか出来上がっていた獣道を通って湖岸に抜けた。初めての仕事はかなりきつかった。だから、気分転換に林の中を散策してきたら、そう言われて散歩に出た。

 すると、湖岸にひとつの石を見つけた。それは自己主張が非常に強く、茉里の意識を掴んで離さなかった。茉里は、吸い込まれるようにその石の近くまで行き、それを拾い上げた。しかし、茉里は、その石を手にしたとたん、急に襲いかかってきた焦りに押されてその場を離れた。何故なのかは分からないが、この石は他の人に見られてはいけない気がする。そんな考えが巡り、彼女はその手に握った翡翠のような美しい石を隠した。自分が泊まっている部屋に戻り、大きなリュックの中にあるコスメポーチのなかに、優しく入れる。すると、心が落ち着いてきて、茉里はそのまま夕食の仕込みの手伝いに戻っていった。

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