5.適度なガス抜きが重要

「冷やし中華! こんなに具材の乗った麺が存在するとは」

「いや、割と具の多い麺類はあるからね」

 本当はスパゲッティもたくさん具材が入るはずなんだけども……。


「冷やし中華にマヨネーズ入れる人もいるらしいぞ?」

「ま、マヨネーズ!? そんな高級食材を食べたことが無いです」

「いや、そこまで高級でもないからね!? うちにもあるからね!」

 試しに冷蔵庫からマヨネーズを出してみる。

「その拝むの久しぶりに見たな!!」

 静香はマヨネーズを前に、平伏している。





 静香が居候初めて何日目だろうか、今日も今日とて、静香はベッドにごろごろしつつテレビを見ている。まあ、変わったところと言えば、

「静香、パンツ見えてるぞ」

 そう、いつしか俺が与えたハーフパンツを穿くのを止め、Tシャツとショーツのみと言う姿が通常となった。

「見せているのです。一宿一飯のお礼なのです」

「いや、一宿一飯で済まんだろうに……」

「むぅ、ならば、パンツ見放題です」

 静香はごろ寝したまま、Tシャツをやや引き上げ、パンツを露わにする。

「いや、ありがたみないわ!」

「うむむ、贅沢です。人間は贅沢に慣れる。一度贅沢を覚えてしまうと、それを止めることはできなくなってしまう、罪深い生き物なのです」

「まるで飽食に対する問題提起みたいな体になってるけど、そんな高尚な話じゃないよね!? むしろ今の静香の状態を反省した弁なんだよね!?」

「もしや、パンツに飽き足らず、パンツの中身まで要求を!?」

「いや、してないから! そこじゃないからな!」

「は! もしやこれは、下だけでなく上も!?」

「ちょっとその話題から離れようか?」



「まあ、その、あれだ。俺もいろいろと都合があってだな」

「……?」

「多少なりとも用事があったりするわけだ。もちろん二度と来るななんて言わないから、その、たまには一度帰って、また改めて来ないか?」

「もしかして、欲求不満ですか? たまにトイレで一人で"いたして"いるのは知っていますのでお構いなく」

「いやぁぁぁぁっ!! やめてぇぇぇぇ!!」

 くそぅ、くそぅ、そうだよ。欲求不満だよ。だって、曲りなりにも女子だよ? だって攻撃力特化だよ? パンツ姿だよ? そりゃ溜まるものも溜まるっつーの!! その上、最近食生活が多少なりとも改善したせいか、足回りとかお尻回りとかヤバイもの。前みたいに"細っ!!"って感じじゃなくなってきてるもの。眼福なんてとっくに突破して、もはや苦行だもの!


「シクシク」

「ふぅ、仕方ないです」

 静香は立ち上がり、俺の手を引きベッドの横に立たせると、急に突き飛ばしてきた。

「ちょ、なに!?」

「私でよければ、解消してあげます」

 静香は不敵な表情を浮かべ、俺の上に跨る。完全に肉食獣の目だ。なっ!? いつの間にかショーツも脱いでいる!?

「ちょ、おま!!!」

「大丈夫です、怖いのは最初だけです。すぐに良くなります」

 静香は自分のTシャツをまくり上げていく。

「それ、普通は立場逆!! こ、こういうの行為はだな、ちゃんと好きな人と……」


「私は零次のこと、してもいいって思う程度には好きです」

「え……」

「零次は、私のことは好きじゃないですか?」

 先ほどまでの表情とはうってかわり、急にしおらしい、実に女の子らしいと思える表情に変わる。

「お、俺も、静香を好きだ……」

「なら、いいです」

 静香のその笑顔は、眩しい程だった。そのまま、静香は俺の上に覆い被さってきて、俺の耳元で囁いた。

「養ってくれるなら愛してあげます」

「アッー!!」

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