第3話

 涙の中で気付いた。

 誰かが、何かが自分を見ている。

 夜の闇に広がるのは、また闇に彩られた世界。

 朧げに浮かぶものは月明かりに浮かぶ輪郭。

 何だろうかと、目を凝らす。


 ゆらゆらと、青白い灯が浮かぶ。

 それは川の上で、ただじっとしている。

 それに気付いた時、自分は無数の灯に囲まれたいた。


 青白い輝きは、周囲を照らす事無く、ただゆらゆらと揺れる。

 ただ、己だけを灯す、現生うつよに在って無明の光。

 

 それが自分を見ている。

 何故自分を見る。

 同じだからか。

 太陽になれず、月になれず、星になれず。

 だからお前達と自分は同じと、そう思っているのか。


 俺は違う。

 いや、違わない。

 俺は、ああ何も無い、いや、まだ生きている。

 死のうとした。

 でも生きている、だから違う。

 問う、その違いに意味はあるか。

 ……

 ……

 無い。


 目の前に、そしておそらく左右後方の全てに。

 青白い灯が揺れている。

 

 どうだ。

 なんだ。

 もう少し、そう、もう少し。


 生きてみないか。


  

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老人への転生 ~余命一年からの成り上がり~ 大根入道 @gakuha

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