第12話 半妖精

店に戻った頃には夕方になっていた。


とりあえずカウンターに座らせて待ってるように指示を出す


俺は厨房に入って晩飯の支度だ


今日は、クリームシチューにしよう・・・


そう決めた俺はジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ、ブロッコリーの下処理を始める


今回はアマゾンで購入した市販のルーを使う 缶詰のコーンも多めに用意


鶏肉、牛乳も用意した


箱に書いてある作り方通りに作る・・・


量は・・・大喰らいがいるから大鍋でルーを3箱分・・・


量は多いが手早くいこう・・・



そうして作ってるうちに勇者御一行がやってくる


「ハルー、晩飯~」

「腹減った~」

「今日のメニューは?」


揃いも揃って・・・


「今日はクリームシチュー、完成までもうちょい時間がかかるわ」


後は煮込むだけ・・・


「ハル、この子らは?」


「拾った」


「元の場所に返してきなさい」


「お前は、おかんか・・・」


「わたくし、ハルヒト様に買っていただいた 奴隷のフィリアンです」


「従業員買ってきたのね・・・ん?・・まぁいいか・・・」


「そっちの二人は雑用のバイトだよ・・・そこで相談なんだが、食後に時間作ってくれ」


「あぁ、マジレス希望だな?」


「希望だ」


「そこはキボンヌって言ってほしかった・・・」


こっちにきて某匿名掲示板は見てないんだから・・・


「しかし、お子様二人に奴隷の女の子か、色々と大変じゃないのか?」


「衣食住さえ何とかなれば店の売り上げでどうにかなるよ、その辺りも含めて後で話すよ」


「そか、・・・で、ハルさんや、飯はまだかい?」


「カズキさん、さっき食べたばかりでしょ」


「いや、食ってねぇから!!」


「ちっ」


「舌打ちした?店長ともあろう方が、今舌打ちしたよね?」


「気のせいではございませんか?」


「いや・・・絶対聞こえた!」


「そろそろお鍋の方が・・・」


ダッシュで厨房に向かう・・・


いい感じに煮えてる、最後に缶詰のコーンを入れて軽くかき回し火を止める


みんなの分を器に入れる・・・俺はドンブリ・・・


「フィリアン運ぶの手伝って~」


「かしこまりました、ハルヒト様」


「どうしても様をつけたかったらハル様にしといて」


「かしこまりました・・・」


硬いなぁ~、まぁいいけど・・・


二人でシチューを運ぶ


パンはその場でバケットごと出す・・・


「サラダも持って来て~」


「はい、ハル様」


棚からグラスを出しピッチャーで飲み物も用意する


「後はお好きにどうぞ、フィリアンも遠慮しないで一緒に食べて、片付けるの面倒だから」


「かしこまりました」


「それじゃ~いただきま~す」


「「「「いただきま~す」」」」


「ハル、美味いぞ!」


どうせまともな食レポできないんだから黙って食え・・・


「ハルさんスゲェ!こんなうまいもん食った事ねぇ」


見習って落ち着いて食え・・・


まぁ、そのハンティも涙目で食ってるんだが・・・


「ハル様は驚くほど料理がお上手なのですね」


「そのうちフィリアンにも覚えてもらうから」


「誠心誠意努力します!」


やる気があるのはいい!


小一時間くらい食ってたわけでだが食事が終わった頃に話を切り出す


「実は、この裏手の土地も買っちゃって社員寮に使う長屋が欲しいと思ってるんだが・・・」


「いいんじゃね?カンパしろって事だろ?」


「俺の部屋の掃除を任せてもいいならカンパしますよ」


「それなら、洗濯も任せたい・・・」


ふむ、フェルとハンティに掃除洗濯をさせるか・・・


「基本的に大事な物はインベントリだから触られて困る物は無いぞ」


「それもそうか、食事はここでするだろうから本当に部屋とトイレくらいか」


「風呂の掃除ついでに自分達も入ればいいからいんじゃね?」


「商業ギルドには俺達で行ってやるよ、即金で払ってくる」


おまえら金持ってるなぁ・・・


「こないだ頼んだドワーフの大工でいいだろ」


どんどん話が進んでいく


「それとフェルのレベリングを頼みたいんだが」


「ん?冒険者にするのか?」


「まだ加入できる年じゃないから、薬草集めと食用動物の狩りができる程度で」


「俺が薬草をギルドに卸せばいいだけだから」


一応ギルド未加入でもこんな抜け道がある・・・


「それで生活資金を作らせるってとこか」


「後、長屋作成資金の補填だよ」


「なるほど!引き受けた!」


こんな感じで二人の事が決まっった所で賢者が口を開く


「ところで、フィリアンさんはどうして姿を偽装してるのかな?」


「俺も気になった、幻術系の魔法だと思うけど」


「正確には耳の辺りに魔力が集中してるよね」


フィリアンは魔法を解き渋々といった表情で話し始める


「・・・実は私、ハーフエルフです・・・」


ハーフエルフ・・・この世界では、純血主義のエルフ族からははじき出され、


人間族から見たら観賞用や愛玩用・・・なんてのはいい方で


性奴隷としてやり取りされることが多いという・・・主に貴族に・・・


権力で人権ごと奪うやり方ってわけだ・・・


「それで耳を隠してたのですね」


「・・・はい・・・ハルヒト様には申し訳なく・・・」


俯き謝罪の言葉を口にするフィリアン


「ん?ヒューマンですって言ったわけでもないし、謝る事無いだろ?」


「それを知ったからって奥手のハルは無体なことしねーよ」


「まぁ・・・そうだが・・・」


「見た目は合格だったんだろ?嫁候補じゃねーか」


「そんな!ハル様のお嫁さんだなんて・・・なれるならなりたいけど・・・いやいや、無理です、立場が違います」


後半はかなり小声だったが、顔を真っ赤にして否定する・・・


「程々にな・・・」


「あぁ、わかってるって」


「ご両親は健在なの?」


「母は私と引き離されてエルフの里に軟禁状態です。エルフの寿命からもまだ存命だと思います。」


「お父さんは?」


「父は4年前に冒険者ギルドの依頼を受けたまま帰らぬ人に・・・」


沈黙が流れる・・・


「耳を魔法で隠して働いていたのですが、そこの長男に問題があって・・・」


「逃げ出して路頭に迷って、それでここにきて食うに困って奴隷落ちか・・・」


「そんなところですが、幸いハル様に買っていただき、服も食事も寝る場所も与えてくださりました。」


「うん、多分それはラッキーだったね」


「そっちの二人もそうだけど、この国はまだまだ変える所がいっぱいあるよな」


糞真面目な事だが、俺は目についた所しか手を出さないぞ・・・


「ダンジョンピープルの方も何とかしたいって思ったが・・・」


ダンジョンピープルってのは、ダンジョンに向かう冒険者の荷物持ちなんかを手伝う人の事で


大体がスラムに住む貧民層、幼い子供も多い


危険なダンジョンに同行するわけだからケガも多い


非道な冒険者なんかは平然と囮に使う、まさに使い捨ての人材・・・


それでも食うに困ってる彼らにとってお金を得ることができるチャンスなのである


「あいつらかぁ・・・いい事思いついた!」


「本当にいい事なのか?」


「あぁ!任せとけ!明日が楽しみだな」


そう言って勇者一行は出て行った・・・


「何を考えているのやら・・・」




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る