第11話 棄児



本日は定休日!


たまには俺だって遊びたい・・・


・・・というわけで町中をブラブラしています。


「あっ、その肉串を一本ちょうだい」


「あいよ、鉄貨3枚ね」


財布から取り出し支払いを終える


そして歩きながらかぶりつく!


「美味し!このタレがいい!」


あっさりと一本完食・・・


目につく屋台で飲み物を買って飲みながら歩く・・・


ツレがいるわけじゃないからお土産を買う必要もない・・・


次の屋台でナンに細かい肉を挟んだもの、(現世的にはケバブのような感じ)を買う。


ソースはピリ辛・・・チリソース系だな・・・


個人的にはケバブはヨーグルトソースだと思うんだが・・・


それはそれとして


「うん、美味い!」


そんな時、視線を感じる・・・


軒下に座る女の子(だと思う)がじっとこっちを見てる・・・


目が合うとふっと目を逸らす・・・


年齢的には6歳前後か・・・身なりは、お世辞にも奇麗とは言えない


一緒にいるのは9歳くらいの男の子


目つきはあんまり良くない、身なりも小汚い 二人ともフードを頭からかぶってるから怪しさもある。


女の子が俺を指さして泣いている・・・


いや、俺はなんにもしてないぞ?


女の子を悲しそうに宥めている・・・


お兄ちゃんかな?すごく辛そう・・・


なんか、目に止まっちゃったんだよな・・・


こういうのって偽善っていうんだろうな・・・全員を助けられるわけじゃないのに、一人だけ助けるってどうよ・・・


そんな事を思いながらさっきの屋台でケバブもどきを2つ買う


今、俺の頭にあるのは、かわいそう・・・ではなく、労働力に使えるか?である


二人の所に歩いて行く・・・


さっき買ったケバブもどきを差し出し


「食べる?」


「・・・いい・・・の・・?」


困った表情の男の子


「君も食べな、空腹じゃ女の子は守れないよって女の子であってるよね」



軽くうなずき意を決したようにケバブもどきに手を伸ばす


「あ・・・ありがと・・・」


「すいません、俺、お代は必ず返します」


ん~別に返さなくてもいいんだが


「そだなぁ、飲み物も買って向こうの公園で食べようか」


二人を連れて公園に向かう、途中で飲み物も人数分買っていく


「俺の奢りだから気にすんな」


そう言って飲み物を押し付ける


「おいしいね、お兄ちゃん」


「うん、すげー美味い」


喜んで一生懸命食べている・・・食べ方も急いでがっつく感じだ・・・


・・・いつから食ってない?


俺もこの町に来て数か月、色々と見てきてるが・・・


孤児院の子供達ももう少し小奇麗な感じだった・・・


食い終わってほ~っと大きな息をつく


「「ごちそうさまでした」」


「お粗末さまだ、少し聞いてもいいか?」


兄の方が頷く


「いつから・・・だ?」


「3日前、かぁちゃんとこの町に来たんだけどいなくなっちまって・・・」


事件に巻き込まれた?それとも・・・


「そうか、3日間妹を守って頑張ったな・・・少し俺に付き合え」


「えっ?」


「ギルドでその手の事件が無かったか聞いてくる、その後は・・・まぁ悪いようにはしないから」


「いや・・・だって・・・」


「俺は引退したけど元Bランクハンターで勇者とも知り合いだ、安心しろ、売ったりはしない」


二人を連れてギルドに行く


「あれ?ハルさんって結婚してたの?」


「俺の子供じゃねーよ、俺の子だったらこんな小汚い恰好は絶対させん」


「だよねぇ、今日はどうしたの?」


「最近、人攫いとかの事件って起きてる?」


「ん~無いなぁ、その子達の親って事かな?」


「あぁ、3日前から帰ってこないそうだ」


「ん~、言いにくいけど事件じゃなきゃ2つかな?一つは奴隷落ち、借金とかがあったらそうなることも多いよ、もう一つは、言いにくいんだけど、自分の意志でこの子たちを置いていった」


あぁ、捨て子の線か・・・それは盲点だった


兄の腕にしがみつく妹


「とりあえず、奴隷商の方に行ってみたら?この町の奴隷商は一軒だけだから」


「わかった、情報サンキュ」


「貸し1ね、今度依頼でも受けてもらおうかな」


高い貸しだな・・・だが断る


「店に来な、一杯奢るよ」


この辺が妥当だ


「わかった、いい奴飲ませて~」


「了解・・・」


そう言ってからギルドを出る


「最悪の結果が出ても悪く思わないでくれ」


「いや、ハルさんは、かぁちゃんを本気で探してくれただけだし」


「それを理解してるならいい、行くぞ」


奴隷商の所に向かう


暗い雰囲気の怪しい店構え、ここが奴隷商の店・・・


「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用向きで?」


「聞きたい事がある、ここ数日でこの子たちの母親を入荷してないか?」


「ん~、そうですねぇ、女奴隷の入荷はございませんでしたが」


「そうか、ならいいんだが・・・」


「ミスルトウのハルヒト様でいらっしゃいますよね、お店の方も動き始めて奴隷でもいかがでしょうか?」


ん~、確かに日中のご婦人方が地味に来るようになったからバイトは欲しいと思ってた・・・


「女の子、接客ができる12歳~18歳」


「ほっほっほ、何人かおります、ご覧になられますか?」


「その前にこの子達を適当に別室に」


「かしこまりました」


そう言って手を叩くと下働きの者が来て小声で指示を出すと連れていかれる


「ここからが女奴隷になります」


順番に見て回る・・・顔を目だけ見て、奴隷商の説明は聞き流している


その中で1人だけ・・・なにか感じるものがある・・・


14才前後、あと数年したらいい女になるんじゃね?って見た目


冒険者の勘が告げている・・・多分・・・偽装してる・・・


「あれは15才の生娘で、隣国サイザルカの出身、親の借金の代金として奴隷落ちして当店が買い付けました」


「あの子と少し話がしたい」


「ほっほっほ、お目が高いですな、旦那様がお前と話がしたいとの事だ」


「・・・はい・・・」


「ここを出たいか?」


目に光が戻り頷く彼女


「そうか、俺はミルストウって酒場で店長をしている、そこで働くことになるが大丈夫か?」


「・・・大丈夫・・・です」


「わかった、買おう」


「ありがとうございます。」


「代金は?」


「はい、白金貨で5枚となっておりますです」


結構高い・・・が、勇者たちのおかげで懐に余裕はある


そりゃ、トンカツ定食が白金貨とかで払われたらそこそこ貯まる・・・


即金で支払う俺


「身なりを奇麗にして連れてきてくれ」


「かしこまりました」


連れていかれた後


飲み物を出してもらったりお菓子が出たりと


30分くらいしてからそれなりの普通の服を着せられて連れてこられる


「奴隷紋と隷属の首輪どちらがよろしいでしょうか?」


「首輪は嫌だな、接客に支障が出る」


「では目立たない場所に入れさせていただきましょう」


そう言って背中から右上の肩甲骨の辺りに奴隷紋を入れる


苦痛とかは無いようだ・・・


「これでこの者はハルヒト様の物です。」


「わかった、世話になった」


「また上物を仕入れておきますのでよろしくご愛顧のほどを」


「機会があったらな・・・」


そう言い残して店を出る


「まず、名前を聞こうか」


「はい、フィリアンと申します」


「命令は4つ、逃げるな、盗むな、嘘をつくな、俺と客に危害を加えるな・・・だけだ」


「かしこまりました」


「んじゃ一旦店に帰るか、お前らもついてこい」


兄弟に声をかけ店に向かう





「ここが俺の店ミスルトウだ、日中は喫茶店、夜は酒場だ」


珍しい物を見るかのようにきょろきょろと見まわす


「結構大きなお屋敷ですね」


「あぁ、勇者剣聖賢者も住んでるからな」


「なるほど」


そんなわけで4LDK+店舗の我が家も余ってる部屋は無いわけだ


「とりあえず、事件性も無し奴隷落ちでもなかったが二人はどうする?」


少し考えこんで言葉を探してるのか?


「・・・下働きでも何でもするから・・・助けてほしい・・・」


「ふむ・・・」


「俺達、かぁちゃんに捨てられたんだな・・・」


「今はそう思ってた方がいいかもしれん、万一迎えに来てくれたら嬉しいって思っておく方が楽だぞ」


「そうかもしれないな・・・」




少し考える


フィリアンがいるから店舗の手は足りてる・・・


掃除と食器下げくらいしか仕事がないな・・・


何をさせる?


妹の方は・・・それでいいとして・・・


そだ!


「まずはフードを取って顔を見せて、名前と年齢、特技があれば」


二人ともフードを外す・・・と


ん?ぴょこっと生える獣耳?


「白狼族のフェル 10才です」


「はくろうぞくのハンティです 7さいです」


「ん、採用、だが、フェルは冒険者にまだなれないから・・・アイディアはある、後で話すな。

そしてハンティはお店の方で掃除とお客様の使い終わった食器を下げる係をやってもらう。」


「ありがとうございます・・・って俺は何をさせられるのか不安なんですが・・・」


「大丈夫、悪いようにはしない、衣食住の問題だよな・・・社員寮でも作るか・・・勇者に相談だな・・・とりあえず俺の部屋と店かな、寝れる場所を作らなきゃ・・・」


「養い子である二人はともかく、奴隷の私なんて倉庫で雑魚寝でも十分なのですが」


「そんな劣悪な環境俺が許さん!」


まず、俺がベッドを使うだろ・・・リビングに兄弟二人ならスペースとれるか・・・、フィリアンは俺の部屋の床に寝床を作ればなんとかってとこだな、


さすがに初日から同衾とか無いわ


寝る時だけリビングを占領する件だけ勇者御一行に伝えなきゃだな・・・


というわけで・・・よし、寝具を買いに行こう!


「んじゃ、これから買い物に出かけるよ、みんなついてきて」


「「は~い」」

「かしこまりました」


商業ギルドに向かう、途中にある服屋に立ち寄る


「ども~、この子達に合わせた普段着を3着と店の給仕用の服を彼女に3着、動きやすくて丈夫な服を男の子に、ひらひらの少ない可愛い服を仕事用で3着、あっ、この子用ね」

ハンティの頭に手を載せる


「ありがとうございます。計るから一人づつ来てもらえるかな」


「いいのかよ・・・新品の服なんて・・・」


「そうです、私なぞ中古の安物で十分」


わかってないなぁ・・・君達・・・


「あのな・・・今後はお使いとかで外に出る機会が増える、その時に俺の関係者がみすぼらしかったら俺の品位に関わるんだ」


「それと動きやすくそれなりに見える靴も3足ずつ」


「フェルは後で冒険者用のブーツも買うからな」


「俺ってどんな事をさせられんの?」


「楽しみにしてなされ」


ニヤニヤしながら言ってやった


そんな感じで服を買い、商業ギルドへ


「まいど~」


「ハルさん、いらっしゃい!」


「今日は適当な寝具を3人分、お持ち帰りで」


「布団と毛布と枕でいいかしら?」


「うん、それでいいよ支払いはギルカで」


ギルドカードを合わせて清算する


職員が布団を持って来たので、そのままインベントリに


おっし帰るぞ~


そう声をかけて店に向かって歩き出した・・・

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