第9話

『何だよ悪魔って! 宇宙人のがまだリアリティあるぞ!』

 はっと我に帰り、怒り半分に捲し立てる。

「悪魔は実在する。今回の一件とは無関係だが、宇宙人もまた実在する。何れも科学的にその存在が証明されているのだ」

 何とも胡散臭い話をするたかし。俺は疑いの目を向けながらも、とりあえず話を聞く。

「直正、貴様がワルワル星人を倒した力とは、天使の力だ」

「どっから天使出てきた!? 非科学的なことばっか言って、お前本当に科学者かよ!?」

「当然、天才の我輩が言うのだから天使の存在も科学的に証明されているのだ。天使の力に関する説明は親父さんからしてもらおう」

 たかしがやったり親父がやったり、説明者がコロコロ変わって鬱陶しい。

 親父は神妙な目つきで、俺に目線を合わせてきた。

「直正、驚かないで聞いて欲しい。お前に宿った天使の力の由来は……お前の母さんによるものだ」

『お袋が……天使……』

「そうだ直正。鈴木和美という名は地上で生きるための仮の名。お前の母親の本当の名は……†漆黒の堕天使カズミエル†」

『は?』

 素でそんな声が出た。

『漆黒の……堕天使? 何言ってんだお前。頭おかしくなったか? つか何だよその前後の記号は』

「†は天界において断罪のつるぎを意味する記号だ。天界では名前に記号が含まれるのはごく普通のことで、中でも†はメジャーな記号の一つだ」

 真顔で言う親父。あまりにも衝撃的なお袋の本名に、俺は開いた口が塞がらなかった。

「そもそも何故おもらしビームで悪魔を倒すことができるのか」

 また解説者がたかしに切り替わった。

「それは直正、貴様の尿が聖水だからだ」

『何の冗談だ』

「聖水、即ち聖なる力を含んだ水。天使の尿は聖水なのだ。故に天使の血を引く貴様の尿も聖水。聖なる力には悪魔を祓う力があり、それを浴びせることで悪魔に大きなダメージを与えることができるのだ」

 おもらしビームにそんな秘密があったとは。まあ普通に考えてただの小便で悪魔を倒せるわけがないので、聖水だということには納得できる。

 と、そこで俺はあることに気がついた。

『まさか親父、お前の部屋にあった小便入りのペットボトルは……』

「ああ、あれは和美のおしっこだ。聖水が有効な敵は悪魔以外にも吸血鬼やゾンビ等沢山いるからな、聖水入りのペットボトルは常備していたんだ。というかお前、私の部屋見たのか!?」

 また新たな衝撃的事実が明らかとなった。親父が自分で用を足していたのだとばかり思っていたペットボトルが、まさかヒーローの仕事に使う武器だったとは。

『つかお前平然と言ってるけど、自分の嫁の小便持ち歩いているってのも相当気持ち悪いからな!』

「な、何を言う! 確かに和美が私の前で恥ずかしがりながらおしっこをする姿にはとても興奮しその日の夜はとても捗ったものだが、決してやましい目的だけではなく正義と平和のために私は和美のおしっこを採取していたのだ!」

『いちいち詳細に説明してんじゃねーよ変態キモオヤジ! てめーは自分の情事を人に語りたい性癖でもあんのか!?』

 こんな気持ち悪い男が父親だと思うと死にたくなってくる。

『つか……てことはまさか俺、高校生の姿で小便を……』

「いや、貴様が悪魔を倒したのは別の方法だ。あくまで聖水は普通の人間が聖なる力を使って戦う手段に過ぎない。天使の血を引く貴様には別の方法もあるのだ。あの日貴様は、全身から聖なる力を放出させることによって悪魔を装甲もろとも直接消滅させたのだ」

『そんな手があるなら最初からそれ使わせろよ!』

 元も子もない話である。最初からその攻撃法を使わせてくれていれば、俺は小便で戦わされることもなかったのだ。しかも装甲を纏ったまま倒せる威力。何でこいつ天才の癖にその考えが浮かばなかったのか。

「そうもいかんのだ。確か貴様は今日、その時の戦いの跡を見に行っていたのだよな?」

『ああ、そうだが』

「ならばあの場所の大きく抉れた所を見ているな。あれは悪魔がやったものではない、貴様がやったのだ」

『な……』

「体から直接聖なる力を放出させての攻撃は、あまりにも強すぎて周囲の物を消滅させてしまうのだ」

『そ、そんな……』

「それだけではない。あの攻撃法は自分の血液を噴きかけて戦っているようなもの。自身の生命力を大きく消耗するもので、単なる自傷行為も同然なのだ。しかもあの日の貴様は死の危機に瀕したことで、無意識の内に暴走しその力を発している」

『何だよ、それ……』

 衝撃のあまり、俺は全身から汗が流れ出る。

「あの時の貴様は悪魔以上に危険な存在だった。あの場に居た綾香が無事だったのは奇跡のようなものだと言える」

『天使の力ってのは……そんなに危険なものなのか……?』

「いや、そうじゃない。普通の天使であればまず暴走することはないのだ。だが貴様の場合、天使とヒーロー以外にもう一つ……悪魔の血も流れている」

『な……あ、悪魔!? 悪魔ってあの……ワルワル星人のことだよな!?』

「いかにも」

 次から次へと衝撃の真実が襲ってきて、俺は頭がパンクしそうだった。俺にはあの化け物の血が流れている。いつか俺もあんな虫みたいな顔になったり装甲が生えてきたりするかもしれないと思うと、全身に鳥肌が立った。

「親父さん、直正の出生について、教えてやってくれないか」

「……ああ。このことは直正には教えないままにしておきたかったが……もう話すしかないな。これは和美から聞かされた話だ」

 親父はそう前置きをして、俺の出生に関する話を始める。

「かつて、美の女神すらも嫉妬する程の美貌を持つ天使の少女がいた。名を†疾風の熾天使シルフィエル†。お前の母方の祖母だ」

『うげぇ……そんな名前の婆ちゃんやだな……』

 せっかくのシリアスムードが台無しである。親父とたかしは不意にシリアスブレイクしてくるから困る。

「シルフィエルはある時、悪魔と恋に落ちた」

『いやおかしいだろ。あんな化け物のどこに惚れる要素がある!?』

「それはまあ……性癖は人それぞれだろう。私やお前が赤ちゃんプレイ好きであるように、ああいう無駄にデカくて虫みたいな顔した奴が好きな人もいるかもしれない」

『俺をお前と一緒にするな!』

 俺を赤ちゃんプレイ好きだと断定してくる親父の暴挙に、俺は怒りを禁じえない。

「本来ならば天使と悪魔は敵対する立場。この恋は許されるものではない。だが二人はそれでも構わないと、天界と魔界の狭間で逢引を繰り返していた。そしてやがて、シルフィエルは悪魔の子を妊娠する。彼女はその子の父親が悪魔であることを隠し、天界で普通の天使として育てることを決めた。だが彼女は知らなかったのだ。悪魔の血を引く天使は、翼の形状こそ天使のそれだが、本来純白であるべき翼が漆黒の色をしていること。そして親の階級を問わず堕天使という不名誉な肩書きを名乗らされ、差別の対象とされることを。お前の母である和美こと†漆黒の堕天使カズミエル†は、生まれついての被差別者だったのだ。そして和美のみならず母であるシルフィエルもまた、悪魔の子を産んだ女として迫害を受けていた。天界に軟禁され、愛する悪魔と会うことも禁じられた。それでも二人は強く生きてきたが……和美が十三歳の時、シルフィエルは心労が祟って病に倒れこの世を去った。一人残された和美は堕天使の排斥を掲げる勢力によって天界を追放され、地上に落とされた。そして……私と出会った」

 親父が語る、お袋の出生の顛末。いつも明るかったあのお袋が、天界でそんな辛い生活をしていただなんて。俺にはとても想像がつかなかった。お袋は俺の前ではそんな素振りを全く見せなかった。或いはこの地上での生活が、天界での苦しみを忘れさせるほどに幸せだったか。

「その時の和美は虚ろな目をし、大雨の振る街中で一人立ち竦んでいた。天界から何のフォローも無く地上に落とされた和美は、住む家も食べる物も無かったのだ。彼女を見た瞬間、私の身に電流が走った。気付いた時私は彼女にお金を渡し、自宅に連れて帰っていたのだ」

『ちょっと待て。それは援交じゃないのか』

 俺の尤もな指摘を聞いて、親父の体が硬直する。

「……出会いがどうであれ、最終的に純愛になったのだからいいじゃないか!」

『やっぱ援交のつもりで声かけたんじゃねーかこのクソ犯罪者! つか開き直るなよ! せめて否定しろよ! 常日頃からお前の息子に生まれたことを恥ずかしいと思っていたが、今日ほどそう思ったことは無えよ!! つかお前、そうやって常日頃から街で見かけた女子中高生に援交持ちかけたりしてたのか? してたんだよな、お前のことだからよ!』

「し、してない! 私は和美に一目惚れしたからついやっちゃっただけで、その時が初めてだったんだ!」

『信じられるか! ヤンキーの武勇伝じゃあるまいし、どや顔で犯罪自慢してんじゃねーよクソロリコン!』

「す、すまん……信用できない父親で……だがこう考えてはどうだろう。和美が地上に来て最初に声をかけたのが、清く正しい心を持つ正義のヒーローだったから彼女は救われたのだ。もしも醜く下劣な心の持ち主が声をかけていたら、彼女は心と身体に耐え難い傷を負っていただろう」

『俺にはお前がその醜く下劣な心の持ち主に見えるよ』

「私と和美は本当に純愛だったんだ。当時私は二十七歳。十三歳の和美は十四も年下だったが、それでも私達は心から愛し合っていたんだ」

 もうこの男が何を言っても俺の心には響かない。犯罪者の子となってしまった今の俺には、悪魔の子として迫害を受けたお袋の気持ちが痛いほどわかった。

「和美には帰る家が無かった。そこで一人暮らしだった私は、和美を私の家で住まわせてやることにしたんだ。初め不純な動機で彼女に声をかけたことは否定しないが、彼女の境遇を聞いてからは下心よりも親心が働いてしまったんだ」

 上手いこと言ったつもりかこの犯罪者。

「そう、その時から私は彼女のパパになると誓ったのだ」

 お前が言うと犯罪臭しかしない。

「だが気付いた時には……和美が私のママになっていた」

『何でだよ!!!』

 先程までは白けた態度で心の中でツッコんでいた俺だったが、突然の告白に思わず声に出してツッコんでしまった。ギャグ漫画みたいに目玉が飛び出るかと思った。

「正義の味方稼業というのはなかなかストレスが溜まるものでね、敵の卑劣な作戦には精神をすり減らされるし、助けた市民から理不尽に文句を言われることもあるし。でも和美はそうして疲れて帰ってきた俺を、優しく慰めてくれたんだ。小さな胸でぎゅっと抱きしめてくれて、膝枕で頭をなでなでしてくれて……その度に私は和美に母性を感じ、まるで赤ちゃんに戻ったような気になれたんだ」

『気持ち悪いないい歳したオッサンが』

「そして和美が十六の時、私達の間にとても可愛らしい珠のような子供が生まれた。それがお前だ」

『お前に褒められるとむしろ殺意が沸くんだが』

「直正、さっきから実の父親に向かって汚い言葉を使いすぎじゃないか? 私はそんな子に育てた覚えはないぞ」

『俺はお前に育てられた覚えが無えよ』

「……確かに私はあまり育児に関与しなかったかもしれない。だが今も昔も、お前は私の稼ぎで生活しているではないか」

 金の話をされると、俺は何も言えなかった。

 というかしれっと流したが、お袋はそんな若い歳で俺を産んでたのか。確かにたかしの母親を始め他の同級生の母親と比べても見た目若いなとは思っていたが、まさかそこまでとは。俺より一つ下の歳で子供を産んでいたなんて、想像できない世界だ。

「だが天使、悪魔、そしてヒーロー、三つの特殊な遺伝子を持って生まれたお前は、あまりにも強すぎる力を持っていた。一つだけでも強い力が三つ。それがどれほど凄まじいものか、想像はつくはずだ。しかもお前が命の危機に瀕した時その力は暴走し、周囲に危害を加える可能性があった」

「そこで我輩の出番だ」

 突然たかしがしゃしゃり出てきた。

「貴様にとって、我輩という天才が隣の家に住んでいたのが何よりの幸運だった。我輩は親父さんからその話を聞かされ、幼い頃より貴様を救うための研究を繰り返してきたのだ」

『そうだったのか!? 全然知らなかった……』

「このことを知れば貴様は酷くショックを受ける。故にこのことは貴様には話さず、我輩と親父さん、それと親父さんの奥さんの三人での秘密にしていたのだ。飛び級で大学に進学したのもそのため。貴様と共に中学高校を過ごしたいという思いもあったが、貴様を救うにはより早くより高度な知識と技術を学ぶべきだと考えそうしたのだ」

『たかし……』

 たかしが初めて語る、自身の心情。俺はずっと、あいつは俺との友情を裏切って出て行ったのだとばかり思っていた。だが本当は、俺のためにそうしたのだった。

「貴様を救うための研究には資金が必要だ。だから我輩は世界中の企業や団体から依頼を受けて製品開発を行い、研究資金を集めていた。その分本来の目的の進行は遅れていったが、どうにかギリギリで間に合ったのは幸運だった」

 天才のたかしですら、それだけの金と時間をかけて完成させたのがこの改造人間スーパーベイビー。そこに至るまでにたかしはどれほどの努力をしたのだろうかと、俺は思いを馳せた。

「そろそろ私の話に戻していいか? 無論、和美が天使であることや私がヒーローであることもお前には秘密にしておいた。私は部屋に篭ったふりをしてこっそり抜け出し、街でヒーロー活動をしていたんだ」

『それが親父が職業を隠していた理由……』

「これは和美の願いでもあったんだ。自分自身が悪魔の血を引き黒い翼を持っていたが故に、周りの人達から差別を受けていた。その経験があったからこそ、自分の子供に同じ思いをさせたくなかったんだ。だから和美は、お前に自分は普通の人間だと思わせるようにしたんだ」

『……お袋の願い、か……』

 そう言われると、どこか納得できてしまう気もする。これまで理不尽に俺だけが悲しい目に遭っていたのだとばかり思っていたのが、それらは全て俺を救うための行動だったのだ。これまでの大前提が崩されたような気がして、ショックなのか喜ぶべきなのか。

「途中までは順調だった。だがお前が小一の時、和美が地上にいることが魔界に知られてしまった。魔界からの刺客として幾多の悪魔が、和美の命を狙って地上にやってきたのだ。私は和美を守るため必死に戦った。だがある時非常に狡猾な悪魔によって罠に嵌められ、遂に和美の命は奪われてしまった……和美は最期までお前の存在を隠し通した。和美に子供がいると知れば、当然悪魔達はその命を狙うはずだからだ」

『俺は……お袋に守られていたのか……』

 親父が語るお袋の死の真相。ずっと事故で死んだとしか聞かされていなかったが、まさかそんな理由だっただなんて。

「そうして悪魔達は地上から手を引いた。和美の命と引き換えに、この世界に平和が戻ってきた……はずだった。だがあれから十年経った今となって、どういう経緯でかは知らんが遂にお前の存在が悪魔達に知られてしまった」

『そ、それじゃあ……』

 俺の額に汗が流れ、鼓動が激しくなった。

「悪魔達の狙いは直正、お前の命だ」

 果たして今日何度目だろうか。俺はまたしても雷に打たれたような衝撃を受けた。

 確かに悪魔はこの街にしか現れていない。しかも現れた場所といえば俺の通学路に俺の学校、そして俺の家。悪魔が明確に俺を狙っているというのは、言われてみれば確かなものだった。

「我輩が集めたこれまでのデータを見るに、まだ敵はバブちゃんと直正を同一人物とは認識していない可能性が高い。あくまで『鈴木直正』を探し出して抹殺するのが目的であり、バブちゃんはその邪魔をする存在という程度の認識だと思われる」

『……俺のせいで、街や学校の人達が被害を……』

「お前のせいじゃない。悪いのは悪魔だ。そうやって悩ませたくなかったから、私は話したくなかったんだ。和美も同じことを悩んでいた。そして和美を殺した悪魔の罠は、それを利用してのものだった。直正、あまり悩むな。お前には私と同じヒーローの血も流れている。自分は正義なんだと思え」

 そう言われても、なかなかそう割り切ることはできなかった。

『それに俺がまた暴走すれば、悪魔以上の被害が出るかもしれないんだろ!?』

「その点に関しては問題ない。我輩は貴様を救うための研究をしていたと言っただろう。貴様に施した人体改造こそがそれなのだ。赤子の身体にすることで三つの強大な力を適度な強さに封じ込め、尚且つ戦いを経験させることで適切な力の使い方を学ばせてゆく……そういうコンセプトで作られたのがスーパーベイビーバブちゃんなのだ」

『それが、俺が赤ん坊になった理由……』

「いかにも。それに今の貴様には綾香ママもいる。あの日暴走していた貴様は、悪魔を消滅させた後近くに倒れている綾香の存在に気付いた。その瞬間に暴走は収まり、貴様は気を失ったのだ。その隙に我輩は貴様を回収し研究所に運んだというわけだ」

『綾香には何か特別な力があるのか!?』

「それは違うな。我輩が人智を超えた天才といえど種族的にはごく普通の人間であるように、その妹である綾香もごく普通の人間なのだ。綾香には特別な力は無い。だが特別な力を持つ貴様にとって、綾香は特別な存在である」

『ばっ……何言ってんだ! 俺は犯罪クソオヤジと違ってロリコンじゃねえ!』

「幼くして母親を亡くした貴様は、母親のような女性を求めていた」

 たかしに言われ、俺ははっとした。俺はただ漠然と理想の女性のタイプとして「世話焼きな幼馴染」を挙げていた。だが実際はその幼馴染という属性に「母親」を求めていたからだったのだ。

「まさに綾香はそれに合致する人物だった。貴様は口では否定しているが、心の奥底では綾香のことを意識していた。丁度綾香も貴様に惚れていることだし、妹の恋心を応援するついでに我輩はそれを利用させてもらうことにしたのだ。綾香を貴様のママにすることで、綾香の母性愛が貴様に力を与えるシステムを作り上げたのだ」

『くそっ、納得できるのかできないのかわかんねえ』

「ヒーローの力の源とは愛だ。貴様の中のヒーローの血が、綾香の愛に反応しているのだ」

『そんなこと言われても……』

 凄く恥ずかしい話をされているような気がして、俺は顔を俯かせる。顔が熱いのは気のせいだと信じたい。

「綾香の愛情を受けて少しずつ力を解放しながら、貴様の能力は成長している。体は赤子のまま成長しないがな。貴様が力を完全に制御できるようになった時、貴様は高校生の体に戻れるのだ」

『本当か!?』

 ようやく明かされた、俺が高校生に戻る方法。

『どうすれば完全に制御できるようになるんだ!?』

「まずはとにかく綾香に可愛がってもらえ」

『お、おう……』

 結局それである。

「そろそろ戻るか。綾香も待ちわびていることだろうしな」

「そうだ直正、お前に渡したいものがあるんだ。今は壊れた家の瓦礫の下だろうが……まあ壊れているということはないだろう」

『わかった。瓦礫はどうするんだ?』

「あの程度なら壊れかけのスーツでも十分持ち上げられる。お前や博士の手を煩わせるまでもないさ」

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