第2話 目線


でもこんなリア充でもない、モテない、彼女がいない俺にも1つだけ誇れることがある。


ピンポーン


「晴樹ー!遅い!早く出てきてよー!」

「わ、わかったからちょっと待てって!」


さっき用意した中身が入ったリュックを背負い、玄関に向かう。


ガチャ


「もう…ほんと遅いんだから…早くいこっ?」


目の前に立っている小柄で150cmもない身長、黒髪のボブ、淡いピンクの方が見えているワンピースを着ている女の子は俺の幼馴染、そして隣に住んでいる志田彩乃だ。


「悪い悪い、あ、鍵忘れたからちょっと待っててくれ。」


「もう!忘れんぼうなんだから!」


ガチャン


はぁぁぁ。幸せだ。

彩乃がいるから俺が存在する。こんな底辺な男と幼稚園から一緒でしかも毎朝迎えに来てくれるなんて幸せ以外の言葉はないのではないだろうか。今日もなんだあの服!変な奴に絡まれたらどうするつもりなんだよ!こうやって平然とするのも限界が近づいてんだよ!

付き合ったらどうかって?

無理に決まってんだろ!というかそれより最近彩乃の様子が…


コンコン

「晴樹?大丈夫?鍵見つからない?」


ガチャ

「見つかった見つかった!ごめんごめん!」

「…じゃあ行くよ?」


そう、最近彩乃は俺の顔を全くというほど見てこない。いや、言い方が悪いな。

見ないんじゃなくて、俺の横顔は見ている。


最初は話していても目線逸らすし、ついに俺の顔が無理になってしまったのか…と思ったけれどどうやら違うということに気づいた。

2人で歩いている時、俺がまっすぐ遠くを見ている時にうっすら横から視線を感じると言うことがすごく多くなった。

そう、彩乃は俺の"横顔"を見ているらしい。


最初は鼻毛が出てるのかなと思って鏡でチェックしたけれど鼻毛なんか出てなかったし、耳垢が見えていたんじゃ…!と思って耳掃除専門店に行ったけどこんな綺麗な耳見たことないですって言われて…


そこで俺はある記事を目にした。

"彼氏の横顔が好きな人の特徴とは?"

と言う記事。


☑︎横顔ばかり見てしまう

☑︎真正面の顔は好きじゃない


この項目だけ見ても当てはまるところが多かった。

だが、長谷川晴樹よ。自惚れてはならぬ。と心に決めている。

今のまま、今のままの幸せが1番じゃないか。


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俺の横顔が好きなキミは真正面の俺も好きでいてくれる コユキ @koyukidarumachan

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